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「…魔界の魔族達ってそんな事が出来るの?」
「そういえば…魔界の話は聞いてても、魔族の話は聞いた事無いわね…」
マキナが関心したように聞いてきて、リザリーは顎に手を当てて何かを考えるように呟く。
「魔界で生き残ってるぐらいだからな…魔力とかに関する技術はお前らなんて足元にも及ばねぇよ」
「「…ソレってどういう意味?」」
馬鹿にする気も蔑む気も、貶める気も全く込めずにただ本当の事を言っただけなのに…
何故か二人揃ってカチンときたような、ちょっと怒ってる雰囲気で首を傾げながら問う。
「どういう意味も何も言葉の通りだ、他に意味などないわ」
「私達よりも技術が上って例えば?」
「当然私達より凄い事が出来るのよね?」
適当に流そうとしたらマキナもリザリーも怖い笑顔でソファから立ち上がり、俺に近づいてくる。
「例えば、ねぇ…パッと思いつく事は少ししかないが…」
「それでもいいから」
「その技術とやらが私達にもできるようなら認識を改めなさいよ」
俺が思い出すように言い淀むとマキナが急かし、リザリーは自信家のような事を言う。
「まず、剣に魔力を通してコレと似たような状態にできる」
「…剣に魔力を通すぐらいなら楽勝よ」
「さっき見せた風にオーラ状にして剣を大きくしたり長くしたり出来るか?」
「…それは…」
言葉の途中で自信たっぷりの発言をしたリザリーだったが、俺の問いに言い淀む。
「魔族の剣技の基本は剣と魔法の複合技だ、本当にゲームのような不思議な属性技をバンバン使う」
お前らでもせいぜい剣に属性を付与出来る程度だろう?と、馬鹿にするわけでもなく普通に聞く。
「…複合技って、火の鳥を出したり?」
「そうだな、剣を振るって炎の龍を出したりもするぞ」
俺はマキナの質問に頷いて別の例も教えた。
「…ソレはエルーがやるみたいな剣に炎を纏わせるようなものかしら?」
「近いではあるがソレよりも高度な技術だ」
無詠唱や詠唱破棄で発動出来る魔術は基本的に現象しか発現できないと言われている。
炎なら燃える、氷なら凍る、雷なら発電する…といったように。
ソレを別の形に変えて、飛ばし、 操る…というのはほぼ不可能。
…エルーぐらいになれば剣に炎を纏わせ、球体にして飛ばせるかもしれないが…
それでも一直線にしか飛んでいかない。
…詠唱した場合なら火球でも相手に当たるまで追尾する事も可能らしいね。
つまりはそういう事だ。
この世界の凄腕の魔法剣士でも詠唱しないと出来ないような事を、魔界の魔族は基礎として無詠唱で簡単にやってしまう。
…そもそも魔族が使っているのは魔術じゃなくて魔法だから、技術が全く違うのは当然なんだけど。
魔法の下位互換である魔術を使ってる限りこの世界の人間は魔族の足元にも及ばないのが当たり前なんだろうな。
「……他には?」
何かを言おうとしたらしいけど、結局口を閉じたマキナが少し考えて話題を微妙に逸らした。
「クレインの武器に似た武器を使ってる」
「ナターシャのに似た武器?」
「魔力を矢に変換して射ち出すボウガンに…魔力を推進力に変えるブースター付きの斧だったり」
「「…ブースター付きの斧?」」
例を挙げるとまたしても二人の疑問の声が被る。
「振り下ろしの威力を高めるために刃の反対側に突起が付いてて、魔力を込めれば魔力がジェット噴射する」
意外と便利だけど扱いが非常に難しいから多分お前らでも無理だな…と、俺は説明の後に率直な感想を述べた。
「??どういう感じなの?」
「俺が作った金属の脛当てみたいな感じ、アレは風魔術で進むけど」
「…なるほどね…確かにそんな得体の知れない武器を扱う気にはならないわ」
俺の言い方が悪いのかリザリーは不機嫌そうに素っ気なく返す。
「あとは…まあ俺が作った金属の脛当てみたいな移動方を生身で出来る…が、流石にアレほど自由自在じゃないけどな」
せいぜい逃げる時や距離を詰めたり、間合いを取ったりする際の一時的な推進力に過ぎない。
「…一時的とは言え、生身でそんな事が出来るなんて…」
「悔しいけど、本当に魔力を自由自在に扱ってるね…私達とは確かに技術が違う」
流石にここまで話せば魔族の凄さを悟ったのかリザリーもマキナも俺のさっきの評価を認めたらしい。
「…でも、裏を返せばあんたの開発した道具を使えば私達でもその魔族に近づけるって事よね?」
「は?」
リザリーの突然の質問に俺は何言ってんだコイツ…?みたいな感じで返す。
「そっか、アレを使えるようになれば私達も魔界に行けるようになるかも!」
「はあー!?」
…マジで何言ってんだこいつら?アレが使えたからといって魔界で生き延びれるワケねぇじゃん。
マキナがリザリーの意図を理解したように声を上げたので、俺は驚きの声を上げる。
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