『人間、辞めましたシリーズ』

23

「次、私だよね！早く！」

「…そう急かすなって…ほらよ、危ねー事すんなよ」

またしても急かしてくるショコラに金属の小手や脛当てを外したそばから渡して注意した。

「大丈夫大丈夫！」

「本当か？…魔力切れたら魔術が強制解除されて落ちるんだぞ？」

楽天的に笑うショコラに心配しつつ危険性を告げる。

某漫画のアレと違ってコレは魔力の消費で飛んでるからなぁ…

アレは気のコントロールだっけ？

…良くもまあ気を消費せずに飛べるよね。

一体どういう原理だから気をコントロールするだけで消費せずに飛べるんだか…

「無くなる前に降りてこれば良いんでしょ？スラスター、オン！」

「あ、おい！」

ショコラは可愛い笑顔で首を傾げるや否や鎧を着けて詠唱破棄で魔術を発動させると、いきなり少し屈みジャンプするように凄い勢いで空に向かって飛んでいく。

おいおい…本当に大丈夫かよ。

空に向かってロケットスタートで飛んで行ったショコラを見て、俺は呆れたようにため息を吐いた。

「あはははは！空飛ぶのってすっごい楽しい！」

ショコラはかなりのスピードで空を飛びながら笑い声を上げる。

…ジェットコースターみたいなめちゃくちゃな動きだな、おい。

横回転のきりもみ状態の動きに背面飛行、ループ状の動きに…なんだあれ？

俺はショコラの動きを内心解説するも良く分からない動きに口元がヒクヒクと動いてしまう。

…アイツ、鳥よりもめちゃくちゃな動きしてんぞ。

流石に鳥のように地面スレスレの超低空飛行は危ないからやらないにしても、動きがめちゃくちゃ過ぎて表現出来ない。

…アレで剣持って戦えたら魔力無しの対人戦では無敵だと思うが…

腕のパーツを無くしてもバランスって取れるものなのか？

魔術が発動して風魔術で動かしてる以上、剣を持った状態で腕を自由に動かす事は出来るのかね？

俺が胴無しの発動状態でバランスを崩した時は脚とか自由に動かなかったが…

そのせいで受け身が取れずにモロに頭から落ちたワケだけど。

…戦闘面での機動力は考えてなかったからどうだろ…？

脚のパーツだけならば体勢を崩しても強制ムーンウォークで後ろに下がれるし、ほぼ確実に相手の攻撃を避けられるから戦闘面でも有利に働くと思う。

けど、空を飛ぶ時みたいに全体をパーツで固めた場合は…？

戦闘面で及ぼす影響ってのはどの程度なんだろうか？

…エルーとかに協力してもらってそこらへんのデータも取らねぇと。

実用化する気はサラサラ無いけど、データはあって困らねぇし。

…うーむ…戦闘面でのデータを取るなら腕だけ、脚だけ、全体…の三パターンだな。

「おーい、ショコラー！もう満足しただろ！戻ってこい！」

「えー！？もう！？…しょーがないなー……スラスター、オフ…きゃっ…！」

俺の呼び方にショコラは不満そうな反応を示すが素直に戻ってきた。

が、着地前に魔術を解除したので落ちるように俺に向かって突っ込んできている。

「ちょっ…！ぐふぅ！！」

エルーの時みたく避けようかとも考えたけども、流石に女の子に怪我させるワケには行かないので受け止める事にした。

というか、盛大に巻き込まれた。

「あいたたたた…ありゃ、ていと大丈夫？」

結構なスピードで突っ込まれたので地面をゴロンゴロン転がり、ようやく止まったところで俺の上に乗っかってるショコラが頭を押さえながら尋ねる。

「大丈夫なワケあるか！あれほど危ない事をするなと注意しただろうが！」

「あはは、めんごめんご」

「…お前、本当に悪いと思ってんのか？」

「んーん、全然」

あはは！と全く悪びれもせずに笑うショコラに俺はため息しか出てこない。