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…今までの呪いの中でもトップ5に入るぐらいの強力さだった。
俺が引き受けずにあのままだったらあのマーリンの称号を持つ美女は近い内に…
って、お。
噂をすればなんとやら?
…噂はしてないけども。
「…調子はどう?」
「ああ、おかげでスッカリ良くなったよ」
ドアを開けて入って来たのはお姉さんで俺を心配するかのように尋ねてくる。
…ドアの向こうには円卓の騎士の気配…おそらく妖艶な美女だろう、とあと一人。
「…まさか円卓の騎士を後ろから奇襲する愚か者がいるとはな…」
この国の王様が意外そうに呟きながら入ってきた。
「もう大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫」
「何故あんな事をした?」
シカトしてお姉さんと話してると王様が近づいてきて俺に問いかける。
「なぜって…」
「幸いな事に怪我は無かったが、円卓の騎士を刺したんだ…それ相応の処罰を覚悟するんだな」
「別に処罰なんてしなくても良いんじゃない?」
王様の言葉に俺がイラっとすると妖艶な美女が入って来た。
「…は?」
「…なら処罰は無しで…じゃあ私は先に戻ってるね」
王様が間抜けな声を出すとお姉さんは可愛い笑顔で手を振って地下牢から出て行く。
「…君、私に何をしたの?」
「何って…」
「…質問を変える?君、何者?」
妖艶な美女の質問にどう答えようか迷ってると更に困る質問が。
「ギルドに所属してるメンバーですよ?」
「嘘。…ああ、別に怒ってるワケじゃないのよ?ただ私は知りたいだけ」
私の中を蝕んでいたナニカがどうして無くなったのかを、と妖艶な美女は鉄格子に顔を近づける。
「…呪われてたから引き受けた、ソレだけです」
「…呪い?」
俺の言葉に妖艶な美女の表情が変わった。
胡散臭いモノを相手にしてるような…怪訝そうな顔で俺を見る。
「…ええ、辛そうにしてたから…」
「…なるほど、アレの正体は呪いだったワケね…」
俺が頷くと妖艶な美女は顎に手を当てて呟く。
「…一つ目の疑問は解けたとして…それで?二つ目の疑問だけど、君は何者なの?」
「…何者だと言われても…」
「…私が気づいて無いとでも思ってるの?君…女の格好をしてるけど、女じゃないよね?」
…え、マジか…俺の女装が見破られてた系?
言い渋る俺に妖艶な美女が仕方ないと言わんばかりに指摘した。
「…え?なぜ…」
「…君の女装は完璧だった…仕草も喋り方も全てが女性そのもので、私じゃないと分からなかったと思うわ」
仕草も喋り方も、って…喜ぶには微妙なポイントだな…
「…バレてましたか、でも…身体が男なだけで女装扱いするのは止めてくれません?」
「…なぜ?」
「僕は確かに男です、ですが…能力を扱えるのは女性だけ…一族のしきたりとして生まれた時から僕は女性として扱われ、過ごして来ました」
俺はこの場をごまかすため、適当に今思いついた嘘を説明する。
「…なるほど、だから…」
「お、お前…本当は男なのか…!?」
嘘にも関わらず妖艶な美女は納得したように呟き、王様は驚愕した。
…あー、嘘吐くのも面倒になってきちまったぜ…
「…というのは嘘だ」
「「えっ!?」」
重ねるのを考えるのが面倒なのでアッサリとバラすと二人同時に虚を突かれたかのように驚く。
「嘘…?なぜ?」
「なぜって?ソレは俺が嘘吐きだからだよ」
困惑したような妖艶な美女の問いかけに俺は普通に答える。
「嘘吐き…」
「そう、嘘…本当の事を言うと呪いを取ってやったのはアンタが良い女だったからだ」
美女が早死にするのは世界の損失だろ?と俺は可愛いらしく笑いかけた。
「君…いえ、あなたは一体何者なの…?」
急に俺の喋り方が変わったからか妖艶な美女は警戒したように聞く。
…どうせこの美女を殺す気なんて皆無だし、多少ぐらいならバラしても大丈夫か。
「ただのしがない村人Bさ」
「なっ…!?む、村人B…だと…!?お前…いや、君が…!?」
俺の正体を半分バラすと王様が驚愕のあまり二、三歩後ろに下がる。
「村人B…って正体不明で神出鬼没と言われているあの…?」
「おお、知ってたんだ」
「そ、そういえば、シェリー将軍が親しげに…!」
妖艶な美女が思い出すように確認すると王様は何故か慌てたように早口で呟いた。
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