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地面を掘る罠も木の枝を使った罠も無理…
道具なんて持ってないから簡単な罠も不可能。
身体能力を全開にしたところで、能力を使ったところで…俺にメリットが全く無いっつーか逆にデメリットになるので、この案も却下。
…身体強化をしているマキナに勝つにはカウンター関節技とツボ押し拳を除いた戦い方では…
せいぜい合気道とか柔道とかのカウンター投擲技ぐらいだけど…
地面に、木にぶつけたとしても直ぐに体勢を立て直されて結構危ない気が。
剣だってこんな戦いで手甲も填めてない素手の女の子を相手に抜くワケにもいかんしなぁ…
残る策は不意打ちの一撃必殺だけども、今のマキナ相手に出来るかどうか…
しかもアイツは焦れたら雷魔術でレーダー探索を始めるだろうから、いつまでも同じ場所には留まって居られん。
くっそ…罠もだめ、戦い方は制限される、武器は使えない…この滲み出る八方塞がり感。
…これは…負けたな、この状況で俺に勝ちは無い。
後はどんな負け方をするか…かね。
一か八かの真っ向勝負を挑んで負けるか、逃げ回った挙句に捕まって惨めに負けるか…
逃げ回って追い詰められた挙句…!的な感じで場外負けをするか、往生際悪く負けるか。
一番楽なのは場外負けだけども、一番早いのは真っ向勝負を挑んでの負け。
地面に『八方塞がり』か『打つ手無し』って書いて、ソレをマキナやみんなに見せての降参も良いかも…
なんなら罠を仕掛けてる最中に見つかりました、からの逃げ回り場外負けも良さそうだ。
万が一、罠を仕掛け終わるまでバレなければソレはソレで勝てる可能性が出てくるワケだし。
とにもかくにも、俺の直勘が結論を急げと告げている。
…おそらくあと一分ほどでマキナがレーダー探索を始めようとしてるっぽいな。
…とりあえずマキナの動向を見て罠を仕掛けるタイプの負けパターンか、逃げ回り場外負けパターンかを決めるとしよう。
「程人くーん!どこに居るのー?」
来た道を戻るように木から木へと移りながら移動してると…
マキナが叫びながら小走りで俺を探していた。
敵に自分の居場所を伝えながら移動するなんてバカだなぁ…と思うかもしれんが、アレもマキナの作戦の内。
アイツはワザと隙を作ったり、居場所を知らせる事によって俺を炙り出そうとしている。
俺が罠を仕掛けられない事を知っていて、行動するのを待ってる…囮作戦。
自分を囮にするなんてバカだろ…とほとんどの人が思うと思う。
が、今のアイツは身体強化をしている状態。
…つまり不意を突かれても対応出来る…俺を返り討ちに出来るという自信があるんだろうな。
残念ながら俺らは全員百戦錬磨の猛者共よ。
こんな作戦に引っかかったりはせぬ!
…まあアイツも思惑がバレてるって分かってると思うから、ただの時間稼ぎなんだろうけど。
「っ!?」
「…てーいーと…くーん!」
「ぶねっ…!」
俺の直勘が反応し、反射行動的に枝からジャンプしてその場から離れると木が飛んで来た。
4mほどの丸々一本の木はさっきまで俺のいた木にぶつかり、ズズン…!と音を立てて倒れる。
くそっ!居場所がバレてたか!
レーダーかと思ったら…地面に電気を蜘蛛の巣のように網目状に張り巡らせてやがった!
…いや、俺がソレに引っかからなかったらレーダーで索敵してたハズ…
…くっそー、結局行動に移す間も無く強制的に逃げ回り場外負けパターンになるんかい!
「惜しかったなぁ…まさか避けられる…とはっ!」
「ちょ、おま…!」
マキナはそう呟くとまたそこいらの木を引っこ抜き、槍でも投げるように俺に向かって投げる。
流石にさっきのような山なりの軌道ではなく直線的な軌道で投げられると飛んでくる速さが全然違う。
いくらなんでも木を丸々一本投げつけるのはやり過ぎだろう…と思いつつもダッシュで逃げて避けた。
「程人君みーつけたっ!」
「ぬおっ…」
おそらく木を投げたと同時に距離を詰めたんであろうマキナのパンチを、俺は咄嗟に横に転がって回避する。
なんてこったい…近づいて来るまでが速すぎるぜ…
一旦距離を取らねば捕まってしまう!
とりあえず俺は体勢を整えるようにして立ち上がりマキナの方を向いて構えた。
カウンター関節技もツボ押し拳も使えないが、まだカウンター投擲技がある…
アイツの攻撃をいなして掴んで崩して斜め上に投げて、後はダッシュで逃げるのみ!
「いっくよー」
マキナはやる気無さげな掛け声とは裏腹に素早く距離を詰め、飛び後ろ回し蹴りを放って来た。
「おっと」
「えいや!」
「甘い!」
「うわっ!」
俺がヒョイっと上半身を仰け反らせて避けたら着地と同時に後ろ回し蹴りの追撃をしてきたので、しゃがんで避けながら軸足を手で払う。
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