34

街道を進む事およそ2時間。



「…きゃー!」



街道から逸れた場所にある丘の方から女の悲鳴が。



「…なんだ…?」


「悲鳴…?」


「行ってみよう!」



俺と女の子が首を傾げてると少年はすぐに声がした方に走る。



「だ、だれか…!」



なぜこんな所にいるのか分からないような格好の女性が大量の魔獣に囲まれていた。



…あの格好からするとどっかのお嬢様、って感じだが…その手に持ってる細剣は飾りなのか?



「お前らの相手はこっちだ!」



女性を見ながら少し考えるも少年が声を上げて挑発しながら魔獣に斬りかかったので、とりあえずサポートする。



「…大丈夫か?」



魔獣の数が数なので俺は魔術で少年達をちょこっとサポートしながら女性に近づく。



「は、はい…」


「ガア!」


「ぐっ…!」



女性が返事をすると少年が苦戦するかのように魔獣の攻撃を食らった。



…まあ国の中心部に近づけば近づくほど魔獣のレベルは上がっていくからなぁ。



少年からしたら雑魚ではないぐらいの魔獣が十数体もいると、流石に状況は厳しい。



俺も魔術でサポートしてるとはいえ、女性を守りながらでは少年や女の子も戦い辛いだろう。



…とは言えあの女の子からしたらこの魔獣なんてまだ雑魚の部類に入ってると思うが。



なんせコロシアムに参加してたらしいからねぇ…



そこそこの実力者である事に間違いは無いハズ。



…うーむ…そろそろアレか?低級だけじゃなくて初級とか中級の魔術も使わないといけない系か?



とか考えつつも魔術で魔獣を攻撃する。



…それから約20分ほどで魔獣を全て倒し終わった。



「…ふぅ、大丈夫?」


「あ、はい、ありがとうございます!」



中々のダメージを負った少年が息を吐きながら問うと女性はお礼を言って頭を下げる。



「…こんな所でなにを…?」


「…街道から離れると、危ない…」



俺がワザと不思議そうに尋ねると女の子も乗せてきた。



「や、薬草になる花を摘もうと思ったんですけど…まさかあんなにいっぱい魔物が出てくるなんて…」



女性は恐ろしい体験をした、と言わんばかりに自分の身体を抱くようにして返す。



「薬草?良ければ手伝おうか?」



流石は主人公属性ともいうべきか…どんな頭をしてるのかしらないが、少年は初対面の女性に手伝いを申し出る。



「え!?いえ、そんな…」



女性も少年のまさかの申し出に驚き、遠慮するように言いながら手を振った。



「でも一人じゃまた危ない目に会うかもしれないよ?」


「それは……ではすみませんが、お願いしてもいいですか?」



少年の言葉に女性は少し考えてから手伝いを頼む。



「もちろん、いいよね?」



少年は頷いて俺たちに了承を得ようと聞いてくる。



「…俺は、構わない…」


「…私も」



このタイミングで聞くんかい、と俺は内心呆れながらも外面には出さずに頷くと女の子も頷いた。



「で、どういう花を探せばいいの?」


「あ…コレと同じ花を…」



少年が女性に尋ねるとバスケットのようなカバンから黄色の花を取り出す。



「…サンビカか…」


「…すり潰すと、火傷や凍傷に…効果がある…」



花を見て俺が名称を呟くと女の子が乗っかるように効能を説明する。



「へぇ、そうなんだ…」



女の子の説明に少年は意外そうに呟くとさっそく花を探し始めた。



「…どれくらいの量だ…?」


「えーと…だいたい3~4本ぐらいですね」



俺が女性に聞くとポケットから小さなメモ帳のようなものを取り出し、見ながら答える。



「…ちょうど、人数分?」


「…そうだな…とりあえず、手分けして探そう…」


「…ん、分かった…」



女の子は俺の提案に頷くと少年と女性を残してどこかに歩いて行った。



「…手分けして探そう…」


「え?あ…うん、分かった…あれ?メルトは?」



一応俺が少年の肩を叩いて告げると了承した後に女の子を探して辺りをキョロキョロする。



「…ああ、先に行った…」


「えっ!?…大丈夫かな…?とりあえず俺はこの人と?」


「?私がどうかしましたか?」



少年が驚いて少し考えた後に女性を指差すと、指を差された本人は不思議そうな顔で聞いてきた。

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