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「その前に…そろそろ新しい装備を揃えたら?」
ボロくなってきた軽鎧と背中に背負っている剣を見た受付嬢がそう提案する。
「あ、そうだった…ウル姉の言う通り装備を整えてから行くよ」
少年は自分の軽鎧を見たと思えば急いで建物を出て行った。
…あの野郎…俺の存在を忘れてんじゃねえの?
「ミルディをよろしくね」
ダルそうに立ち上がってのんびりと歩いてドアに手をかけると後ろから受付嬢に声をかけられる。
「…出来る限りはサポートしよう…」
後ろ手でヒラヒラ振りながら答えて建物を出た。
さて…武器防具を扱う鍛冶屋的な感じの工房はどこだったかな…
キョロキョロと周りを見渡しながら工房の看板を探す。
「…あった…あそこか…」
面倒くせぇ…と思いながら工房の中に向かう。
「いらっしゃーい…ってあんたか」
中に入ると店主のおっさんがやる気無さげにカウンターにヒジを着いていて、後ろで少年が新しい軽鎧を試着している。
「あんたも装備を整えに来たのかい?」
「いや…俺のは自分で手入れするさ」
「武器じゃないなら防具かい?まああまり品揃えが良いとは言えないがゆっくり選びな」
ふあ~…とやる気のないあくびをした後に椅子に座って腕を組んだ。
…防具なんて戦いの初心者か立場の高いお偉いさんぐらいしか着けないだろ。
あ、あと兵士とかの軍人も着けるか。
どっちにしろ俺がんなモン着けるワケあるめぇ。
俺レベルの剣士?的な奴らだと鎧や防具ごと真っ二つに斬るから意味無ぇし。
「おじさん、コレに決めた!」
「おう、ソレだけか?」
「あっと…剣もだった…」
「はっはっ!せっかちな所は昔から変わらんなぁ」
いかにも村ぐるみの仲良いですよ~…なやりとりを見せられつつも壁際に凭れかかる。
「レニアの奴もせっかちでいけねぇ」
「レニアはまだシヤージャに?」
少年は壁にかけられてる剣の値段を見て、財布に入ってる所持金を確認しながら選んでいた。
「ああ、お前みたいに『一流の鍛冶職人になるために修行に出る!』と家出同然に家を飛び出して行ってからもう丸二年だ…そろそろ帰って来る頃だろうが…」
「俺はそんな家出同然じゃ…」
「『この村のギルドに入るのがダメなら他の街に行く!』とゴネてた奴が何を…」
「う…」
思い出したくない事を言われたのか気まずい顔をしながら剣を手に取りカウンターへ持っていく。
「まあなんだ…もしシヤージャに行く事があったらたまには顔を見せに帰って来い、と伝えてくれ」
「分かった、もし行く用事があったら伝えとくよ」
無駄に長い買い物を終えてやっとこさ依頼の標的であるさっきの魔物の下へ。
…まあ戦闘シーンは雑魚と戦う時と変わらないので省略するとして…
「はぁ…はぁ…!」
なんとかギリギリで賞金首的な魔物に勝利。
…賞金首ってか手配魔獣って言った方がいいか?
ん~…魔獣の時は手配魔獣で良いとして魔物の場合は賞金首でいっか。
とりあえず中々なダメージを受けて体力を大幅に減らした少年の回復を待ってから近くの林に向かう。
…にしても少年の戦い方はアレだねぇ…
ゲームや漫画のような戦い方だ。
分かりやすく言うならば、攻撃を避けない。
いや…一応避けてはいるんだけど…なんてーの?
申し訳程度に危ない攻撃だけ避けてます、的な?
ガード以外の防御は装備に任せてるような感じ。
つまりは物凄く非効率的な戦い方だ。
ゲームでは痛みが消え、体力が回復するっつー回復アイテムが容易く手に入るからあの戦い方でも良いかもしれんが…
この世界では回復アイテムなんて極稀にしか手に入らないし(俺や知り合い除く)、治癒魔術を使える人も極少数。
こんな現実でそんな非効率的な戦い方をされたんじゃあ…寿命が限られてる人間は時間がいくらあっても足りないと思うんだが。
と、無傷で全く動いてない暇人な俺が思ってみる。
だって少年のレベルを上げるための戦いだから俺が出しゃばるワケにはいかないじゃん?
ちょこっと手を出して後は観戦ってすっげー暇なワケよ。
少年が戦ってる最中に暇してて、戦い終わった後にも回復待ちで暇するんだぜ?
時間の無駄過ぎてあんなん思うのも仕方のない事だと思わない?
………なにか言われる前に話を進めるか。
そんなこんなで俺と少年は近くの林の中を10分ほど探索して依頼の材料を集めギルドにリターン。
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