13
「ありがとうございますー」
先に降りて反対側のドアを開け愛梨をエスコートするようにして車から降ろす。
「あ、チップ渡したいけど現金がねぇ」
「え?チップ?それは要らないんじゃないかな…?」
そっか…そういえばこの国ではチップあげる習慣とか無いんだよな。
「んじゃ行くか」
「そういえば聞いてなかったけど…何のパーティなの?」
「ん~?まあ親睦会みたいなモンだよ」
俺は後ろから愛梨の両肩を押しながら防衛省とされるビルに入った。
「遅い、35分までに来てって言ったハズだけど?」
「たった3分じゃねえか…ソレに運転手だって頑張って飛ばしてたんだから大目にみろよ」
ロビーで柱に凭れかかってた藍架が俺を見て眉間にシワを寄せながら近づいて来た。
「運転手を責めてるんじゃなくてあんたを責めてんの」
「んな理不尽な…後部座席に座ってるだけの俺にどうしろっつーんだよ」
睨んでくる藍架に、どうしようもないだろ…とため息を吐く。
「とりあえず先にパーティ会場に案内しとく」
「何階だ?」
「8階よ」
「俺は階段登るわ」
エレベーターが開いたと同時に俺は階段の方に向かう。
「着いたらエレベーターの前から動かないで」
「はいよ」
藍架達に手を振って階段を駆け上がる。
「~~!~~ぁ!」
8階に着くとなにやら上の踊り場の方で声が聞こえた。
なんだ?誰かいんのか?…一応確認してみよ。
「…何してるの?」
階段を一段登ると先に着いていたらしい藍架が近づいてくる。
「いや、上から声が聞こえるから」
「声?」
藍架は怪訝な顔をしながらも後ろからついてきた。
「あっ、んっ、ソコ…!あっ…!」
「…っ…!?」
「え、どうしたの?」
階段の踊り場での濡れ場を見た俺は速攻で後ろに下がり、藍架の目を手で覆った。
「藍架、マズイ…戻るぞ」
「?何を見たの…?」
嬌声が聞こえてきて察したのか俺の手を剥がそうとせずに首を傾げる。
「お前は見ない方がいい…幸いまだあっちには気付かれてないようだから直ぐ戻ろう」
小声で言いながら一歩ずつ階段を下りた。
「あっ!」
「うぇ!?」
焦ってたのか藍架が足を滑らして階段を転げ落ちる。
俺は咄嗟に藍架の手を掴んだため一緒に転げ落ちた…なんとか下敷きになれたらしい。
俺がクッションになったとはいえ…藍架に怪我が無ければいいが。
「痛た…」
「誰かいるのか!?」
…やっぱりというべきか、踊り場で行為に励んでいた奴に見つかった。
「くっそ、見つかったか」
「誰?」
藍架を立たせて頭を掻くと見覚えが無いのか不思議そうに聞いてくる。
「この国に4人しか居ないと言われてる式神使いの一人だよ」
「え!うそ!?」
小声で耳打ちすると驚いたように声を上げた。
こいつは俺が知ってる変態共の中でも結構ランクが高かったから見た瞬間に思い出せたぜ。
容姿や性格はそこまで悪くないが…性質が悪い。
なぜなら、コイツはセ○クス依存症と言っても過言ではないぐらいの…
いや、もはや中毒だな。
しかも…ヤってるのが生身の女じゃなくて式神っていう。
マジで暇さえあればどこだろうと女の姿を模した式神とヤってるほどの変態。
だが実力は折り紙つき、かなりの実力者だ。
…精神衛生上非常に良くない男なので藍架や愛梨にだけは絶対近づかせたくなかったのに…
そんなどうしようもない変態がなぜこんな所に…?
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