14

「死ね!」


「うおお!?待て!シャレにならんぞ!」



俺の渾身の後ろ回し蹴りをスレッスレで避ける。



「知るか!一回死ね!」


「話を!うわっ!聞けっ…ぐっ!」



後ろ回し蹴りの勢いを使って腹にエルボー!と思わしの…わき腹に裏拳。



フェイントが効いたのか避けるタイミングを外してモロに食らう。



「この野郎!一人だけ!良い思いしやがって!」


「ぐっ!がっ!ごぶっ!!」



態勢を崩したエルーの腹に何発もボディブローを決める。



「天誅じゃあ!おらあ!」


「がふっ!?」



最後にエルーのわき腹に回し蹴りをモロに食らわせて吹っ飛ばす。



「立てやこらぁ!!」


「ふ…ふふ…ふふふふふ…もうブチ切れた!」


「こっちのセリフじゃボケぇ!」



プッツンして炎の魔術を使うエルー

vs

さっきからプッツンきてる俺



の戦いは更に激しさを増した。




そして二時間後、部屋を8割方破壊するという激闘の末にリザリーとマキナが強制的に俺らを止めた。



なんでもこれ以上やったら研究所が壊れる。との事。



一応どっちも素手。



部屋を壊した原因はエルーの魔術。



「止めるな!あいつはまだピンピンしてるぞ!」


「あんた少しは落ち着きなさいよ、程人は魔物なんだから当たり前でしょ」


「マキナ離せ!天誅はまだ終わってねえ!」


「程人君落ち着いて、これ以上やったら女子研究員達からイメージダウンされちゃうよ?」



ぐ…!イメージダウンはマズイ………くそっ、落ち着くか。



俺は深呼吸して心を無理やり落ち着かせ、エルーの方を見る。



……リザリーがエルーのガードしてる腕ごと腹を思いっきり殴っていた。



今、エルーの体が少し浮いたぞ…?あいつ何を言ったんだろうか…



「誰が色気の無い唐変木ですって?もう一度言ってみなさいよ」



…あいつバカ過ぎる、唐変木とか思ってても言うか?普通。



「リザリー落ち着け!」



俺は膝を着いてるエルーにもう一撃食らわせようとしてるリザリーを、後ろから羽交い締めにする。



「離しなさい、ほら、もう一度言ってみなさいよ」


「り、リザリー…落ち着いて、ね?」


「ちょっ…暴れんな…って何を言われたんだよ」


「『こんな色気の無い唐変木の胸を揉むか!?さっきから誤解だと言ってんだろうが!』って言ったのよ」



ああ…そんなん言われたら今の行動も仕方ないね。



「落ち着け、そういうのは…口からでまかせって言うんだよ」


「でまかせ?そんなわけないでしょ、絶対こいつの本音よ」


「絶対違ぇ!エルーだってお前の事好きなんだから、きっと売り言葉に買い言葉的なアレだよ」



俺は羽交い締めにしながら必死にリザリーを宥める。



因みにマキナは倒れたエルーを担いでたった今この部屋を出た。



「どうせあんただってそう思ってるんでしょ?」


「…まあ唐変木の部分はな、でも色気はあると思うぜ?だって何回襲おうと思ったことか…」



でも返り討ち必死だからなぁ…なけなしの理性で頑張って踏みとどまったんだよ。



「やっぱり唐変木だと思ってたのね…」


「自覚してるんなら直せよ」



つーか今どういう状況よ?



…ちょっと整理しよう。



エルーと俺が争う

マキナとリザリーが止めに入る

リザリーがエルーを攻撃

俺とマキナが止めに入る



……色々とカオスだな、おい。



「落ち着いたか?」


「ええ、取り乱してごめんなさい」



やっとおとなしくなったので聞いてみるともう大丈夫そうだ。



羽交い締めを解いてリザリーから一、二歩離れる。



「なんてね!」


「うおう!」



急に振り向いたと思ったら飛び込んできた。



咄嗟に右ステップでなんとか避ける。



「あんたも私を唐変木と思ってるって言ったわよね?」


「少しだけな」


「私のどこが唐変木なのよ」


「少しだけ偏屈な所」



リザリーがジリジリと俺との距離を詰めてきた。



俺はその分だけ後ろに地味に下がる。



…あー、マキナが早く来てくれねえかな?

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