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ドラゴンの肉とかの仕込みをする事早6時間。



日は傾き空が夕暮れの色に染まっている。



俺はそこらの木を削り素材と合わせて作った台車に、材料と食材を乗せてリザリー達の所へ向かう。



台車は20分ぐらいで出来たとは言え…仕込みに時間かかり過ぎた。



やっぱり燻製にしたのが原因か…?



でも燻製にしたのは1/10ぐらいだし、つーことは十種類の肉に切り分けたのが原因か。



こんだけ時間経ったんだからさっさと行かないと心配されてそう。



…つーか雪道で台車って引っ張りづらい…ミスったな~、くそっ。



雪道をブツブツと愚痴を言いながら歩く。



台車を引っ張りながら歩く事約一時間半、やっとプレハブが見えてくる。



ただ走るだけなら20分もかからない道なのに、台車が追加される事で6倍の時間がかかった。



なんせドラゴンの食材と材料が重いのなんのって…ほぼ1トン近くあるんだぜ?



坂道とか上りも下りもヤバかった。



因みに台車の幅は横2m縦4m、高さ1mだ。




「誰だ!!」



プレハブの回りを見張ってたのか学生達が俺に気づいて剣に手をかける。



「ここから先は一般人立ち入り禁止区域です」


「行商人の方は迂回路を通って下さい」



行商人…もう辺りも暗いから俺の顔が見えないのか?それとも覚えてないだけか?



「リザリー達は中か?」


「機密のため教えられません」


「俺の名前…ジュールって言えば分かるか?」


「ジュール…?………あっ!し、失礼しました!」



剣から手を離し、焦ったようにプレハブの入口の窓に案内した。



「今は二階の右側で会議中のようです」


「あそ、警戒ごくろうさん」



このプレハブ、寝るだけなら50人は収容できる大きさだけど…一階も二階も真ん中に仕切りがあって、4つの部屋に分かれている。



カンカンカン…とワザと音を立てて階段を上り、カーテンの閉まっている窓を叩く。



「どうした?……ってテイトか」



緊張した面持ちのエルー出てきて俺を認識した瞬間に緊張を解いた。



「あら、生きてたの?」


「遅いよ~!心配してたんだからね!」



中に入るとすぐさまマキナが飛びついて来た。



手を掴んで横に受け流し、その場に座る。



「う~、感動の再会のハグが受け流された…」


「恥ずかしいから人前でやんなよ」


「二人きりならいいの?」



俺の言葉を聞いたリザリーが冷たい目で見た。



「え?抱きしめてくれんの?」



そうね、やろうかしら…と剣山を両手に掴んで立ち上がりこっちに近づいてくる。



「冗談にきまってんじゃん、ってかなんで剣山があるんだよ」


「生け花をする為に決まってるじゃない」


「そんな上品な趣味がお前らにあったんだ…」


「「意外なの(かしら)?」」



二人の声がちょうど重なる…まさか二人の趣味!?



今まで知らなかった意外な事実が今明かされた…ってかエルーもびっくりしてるし。



「冗談はさておき…ドラゴンは倒したのか?」


「いんや?そんな勿体無い事しないだろ…逃がしたよ」



戦利品は下にあるぜ?と俺が言うと、聞くや否やエルー達は部屋を飛び出した。



遅れて俺が外に出て階段を下りる。



「やった~!今日はパーティだぁ!」


「ちゃんと食材は調達してたのね…」


「いや待て…おかしくないか?」



喜ぶ二人を尻目にエルーが台車の積荷を見て顎に手を当てて考え始めた。



マキナとリザリーは意味不明そうに首を傾げている。



「この積荷の部位を見る限り無いのは首と頭だけだ、テイトはさっき『逃がした』と言っていたが…」


「確かに…おかしいわね、そんな状態では既に死んでいるハズ」


「程人君の事だからどうせ治したんでしょ?」



二人はマキナの発言にああ~。と納得したように考えるのを止めた。



「コレで夕飯の心配は無くなったわ…程人」


「へいへい、分かりましたよ」



急に名前を呼ばれた俺はやる気なさげに返事をした。



どうせ、私達は作戦を考えないといけないから暇してるあんたは夕飯を作りなさい。とかだろ?



「何を分かったって言うの?」



リザリーは威圧感を出しつつ笑顔で聞いてきた。



いくら俺でも、その威圧感のある笑顔は怖いからあんまり見たくないんだけど…



「これから作戦練る、暇してるんだから夕飯作れ。だろ?」


「話が早くて助かるわ」


「長い付き合いだったからな…出来たら呼んでやるよ」


「調理器具は二階の倉庫の所にあるからね」



はぁ…こんなに疲れてるのに夕飯まで作らされるんかい。



まあそれが分かってたから仕込みに時間かけたんだけど。



倉庫?から鍋やフライパン、まな板に包丁、皿と調味料を取る。



そしてプレハブより少し離れた所に雪がかき分けられて地面が見えてる場所…広場?に移動した。



まずはカマド的なモノを作らないと料理ができん。



そこらの木を斬り倒し、板みたいにカットしてからドラゴンの体液を塗る。



このドラゴンの発炎器官の周りに分泌されてた液体は火に強く、かなりの高温でもない限り燃えない。



そして4つほど調理できるカマドを作って調理する事一時間。



本日のメニュー。



ドラゴンの肉のシチュー。

ドラゴン肉のステーキ。

ドラゴン肉のロースト。

ドラゴンの燻製肉。

ドラゴン肉の野菜炒め。



※ローストと燻製は似て非なる料理です。



野菜はさっきの場所からの移動中に探して採取した物を使用。

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