26
「た、たた大変です!」
祭りから一夜明けた翌朝。
村長が物凄い慌てっぷりで俺の泊まっている部屋に飛び込んで来た。
「んあ?どした?」
寝起きで全く頭が働かないため現状がうまく理解できない。
でも、もし敵が攻めて来たんなら寝てようが何してようがすぐに反応するから…多分違う事だろう。
とりあえず村長が落ち着くのを待ってから話を聞いてみる事にした。
深呼吸する村長の前で、俺はベッドの上であぐらをかきながらうつらうつらと船を漕いでいる。
「あの…ですね…」
「うん」
「昨日大急ぎで隣の国から鑑定の人達を呼んだのですが…」
「うん」
「それでさっき鑑定してもらって…ですね…結果が…」
村長はなんとも歯切れの悪い言い方をしているが俺は眠くてそんなのを気にする余裕など無い。
「全部で10兆…ほどで買い取っていただけるそう…なんですが…」
「よかったじゃん」
もう俺の物じゃないんだから勝手にすれば?
それより眠いんだけど…
「その…本当にいただいても、よろしいのでしょうか…?」
「いいよー…ふあ~……一応村人達とも相談してみたら?」
「…!ありがとうございます!すぐに集会を開き話し合いの場を設けます!」
村長は頭を下げるとダッシュで部屋から出て行った。
その後に外で叫び声が聞こえたのは多分、村長が村のみんなを呼んでるんだろう。
さて…俺はもう一眠りするかな…。
次に俺が目を覚ましたのは太陽が真上に上がる頃だった。
宿の外に出ると村の中は俺の部下以外は見当たらない。
「どこに行ったのか…まあいいや」
俺の呟きを聞いてか近くにいた部下がデカイ建物を指した。
なるほど、一箇所に集まってるって事ね。
ちょっとしたストレッチで身体の筋肉を解してると、デカイ建物から一斉に村人達が出てきた。
「おお、これはお目覚めですか!」
またもや村長は俺を見かけると近寄ってくる。
こいつ…なんかだんだん気味悪くなってくるな。
「実は集会で、宝の山の半分は隣の国に売り1/4はこの国に条件付きで返す事にしました」
「へえ」
そんなん俺に報告してどうすんの?全く持って興味がわかないんだけど。
「半分を売ったお金をこの村の財政にあて、畑や学校を増やし、より良い『街』にしたいと思います!」
「あっそ、頑張ってね」
どんなマニフェストを掲げようが俺にはどうでもいい事だ。
あ、そうだ。この村って一応魔王軍の植民地?なんだよな?
「なあ村長、この村って魔王軍の傘下に入ったんだよな?」
「はい!当然です!私達を見捨てるような…あんな国なんかクソ食らえです」
「じゃあ頼みがあるんだけど」
「はい!なんでも!」
俺は村長に地図を渡して赤丸が書かれた所に避難者がいっぱいいる事を伝え、この村で受け入れられないかを聞いてみた。
「お安い御用です!財政は潤い過ぎてるぐらいですからね、この国丸々でも大丈夫なぐらいですよ」
「そっか、じゃあ避難者は全部この村で預かれるわけね」
「はい、問題はありません」
棚ぼたみたいではあるが、これで避難者の受け入れ先は確保完了。
俺は持ってる地図の赤丸を全てこの村の場所に書き直した。
「じゃあ避難者を迎えに行ってくれる?結構な数いるけど、食糧はかなり置いて来たから大丈夫だと思う」
「分かりました、今すぐにでも手配します」
村長が足早にどこかへ行ったのを見て、俺は部下共に集合をかけた。
「さーて、てめえら行くぞ!」
俺の号令と共に部下共は吼える。
どうやら村の子供達も俺の部下達の隣で何か叫んでいた。
魔物の真似をしているのだろうか?
昨日の昼までは見ただけで泣いていたのに…たった半日でえらい変わりようだな。
それほど俺の部下共は子供に好かれ易いのか?
まあとりあえず、俺たちは村を出て次の場所へ向かった。
子供達が一生懸命手を振っていたけど、俺以外は見てないだろうな。
きっと部下共からしたらペットと遊んでる気分だったと思うし。
俺は地図を片手に今回も裏道の方を進んだ。
ふむ、どうやら今回は待ち伏せはされてないらしいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます