21

「あの人達は?」


「ん?あんた余所者か?あの人達は騎士団の見回りの人達だよ」


「騎士団?国の?それとも街の?」


「国の騎士団さ。色んな街に異変が無いか定期的に見て回ってるんだ」



ほら、あの人がリーダーだよ。とおっさんが指差した人を見る。



確かに鎧を着てても分かるガタイの良さだ。



それに周りに人が集まってる所を見ると人望もあるんだろう。





なかなか強そうな集団を見て、俺が偵察をしたのは間違いじゃなかった、と思った。



そして邪魔者を排除すべく俺は動く。



「リーダー!リーダー!握手してー!」



俺は国の騎士団に集まる人ごみをかき分けて近づきながら叫ぶ。



「リーダー!握手!」


「ん?君は見ない顔だね…どこから来たんだ?」


「この街にかっこいい騎士団がくるって聞いたから、王都から来たんだ!」


「そうか!握手なら大歓迎だよ」



馬の上から手を差し出され俺はその手を掴んだ。



「うわぁ!よかったです!来た甲斐がありました!」



俺は興奮した様子を装ってリーダーの手をブンブン振った。



「そう言われると照れるな…」



馬の上に居るのに全くバランスを崩さないリーダー。



…ちっ、こいつは少しばかり厄介だな。



「実は…騎士団のフォーメーションも見たいんですけど!」


「フォーメーション?」


「並んでる感じでいいんです!それがものすごくかっこいいって聞いたんで!」



俺はキャーキャー言わんばかりのキャラでリーダーにお願いした。



「リーダー…これ以上は業務に差し支えます」


「そうだったな…」



サブリーダーみたいな奴がリーダーを止めようとする。



「お願いします!少しでいいんで!」



俺は拝むように頭の上で手を合わせ強くお願いし、一歩も引き下がらないぞ、と言う姿勢を見せた。



「仕方ない…少しだけだぞ?」



周りの評判を気にしてか案外あっさり折れた。



騎士団のメンバー全員が馬から降り、少し開けた場所まで歩いて行く。



そして騎士団全員がトライアングルのように並びリーダーが一番前に立つ。



まるでボウリングを連想させるような陣形だった。




…てか女が二人もいるんかい。




「これでいいか?」


「もうホントに感激です!」



俺はリーダーの所へ走りだし、わざと地面につまづいた振りをした。



「おっと…大丈夫か?」



前のめりに倒れそうになった俺をリーダーが途中で受け止める。



チャーンス。



ここからの俺の行動は素早かった。



リーダーの腰から逆手で剣を抜き、抜きざまにリーダーの首を刎ねた。



そしてすぐさまリーダーの後ろの奴等の首を次々と刎ねる。




「「な…!!」」



騎士団の奴等が動いたのは10人中6人の首が刎ねられた後。



いまさら剣を抜いてももう遅い。



リーダーの体が地面に倒れた頃には騎士団ももう女二人のみ。



街の人達の絶叫が響く中、騎士団の女二人は俺から距離を取り剣を抜いた。



俺はポーチから閃光弾を取り出しピンを抜いて地面に放り投げる。



あ、このポーチは魔王城から着替えと一緒に影移動で持ってきた物ね。



辺りが光に包まれ、俺は目を閉じながら女二人との距離を詰めた。



そして光が収まると同時に目を開ける。



まず片方の女の腕を捻って地面に倒し、ポケットから紐を取り出して腕を縛った。



当然縄抜けを警戒した縛り方で。



片方の女を縛るとすぐにもう片方の女に突撃する。



「舐めるなよ!」



真正面から攻めてくる俺に対して剣を振って来たがリーダーから奪った剣で受け止め、絡めるようにして女の剣を上に飛ばす。




残念ながら俺と彼女らとでは圧倒的に経験差がありすぎた。



やはり昔居た養成学校での成果だろう、国のだろうが騎士団ごときが俺の相手になるわけがない。



俺は女の手を掴み捻って地面に倒す。



「くっ…!」



そしてそのまま手を縛りそこらへんに転がしておく。



周りを見渡すと大通りにいた人はみんな逃げていた。



遠くで叫び声がちらほら聞こえるから逃げた奴らのほとんどは俺の部下達に食われてる事だろう。



「貴様…!何が目的だ…!?」



騎士団の女は腕を縛られているにも関わらず立ち上がり俺を睨みつける。



「目的?この街を侵略する事だよ」


「侵略だと!?」


「おう」


「ははっ!お前一人で何が出来る!」


「俺一人じゃねえぜ?ほら」



ちょうど俺の部下が俺の隣まで来ていた。



「魔物…!?」


「なぜ魔物が…!?」


「おーい、こいつら適当に逃げてる人達の所に放り投げて来て?」



近くにいる部下にお願いすると女二人を抱えてどこかへ走り去って行く。



「食べないといいんだけど…」



俺の心配はさておき、夕方になる頃には街の侵略は終わった。





「さーて…掃除して休むか」



部下共に命令し、水をぶちまける。



「あー…そういや報告忘れてたな…おーい!」



俺は水をぶちまけてる途中に思い出して使い魔を呼んだ。



「御用で?」


「侵略部長宛てで『国の約1/6は侵略完了』って伝えておいて?」



シンプルイズベスト。



もうめんどくさい事は報告しない事にしよう。

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