②
次の日、朝から街は、大騒ぎだった。
「百合がいないの」
百合さんのお母さんが、一生懸命聞き込みをしている。
「どうしたのですか? 何かあったのですか?」
「百合が逃げたの」
「もしかして、私たちのせいかな? 百合さんに本音を言わせてしまったから……」
「そうかもしれない」
「魚屋の男性と密会しているのかもしれないよ、この村で密会をするのなら、神社の裏とかかな?」
「そうね、行きましょう」
花ちゃんとお宮様と神社の裏へ行った。
「百合さんいた?」
「いないよ~」
うろうろしていると。
「私たちは、やっぱりだめよ」
百合さんの声がした。
「いたっ」
草陰に隠れて、百合さんを見る。隣には、美しい硬派系の美少年がいた。
「百合、だって、俺にはお前しかいないんだ」
「でも、あなたは、金使いが荒いし、すぐお金を使い切るじゃない、そう言う人にお金を渡したくないわ」
「気を付ける、だから、戻ってきてくれ」
「いやよ」
百合さんは大声を上げた。
「私は、あなたの金ずるじゃない、私は、自分の人生を歩むのよ」
「そう言って、俺の事好きなんだろう」
魚屋の男性は、百合さんを抱きしめてそう言う。
「……」
百合さんが迷う。
「これからも、一緒にいようぜ、だから、十文でいい、貸してくれ」
「はっ、やっぱり、あなたは、お金だけなのね、口を開けば、お金お金って、私は、お金持ちと結婚して、あなたと縁を切ります」
二人は、けんかして、別れた。
「ああ、百合さんの好きな人って、ああいう人だったんだ」
三人で拍子抜けしまった。
「あんな人のどこがよかったんだろう?」
「ああいう人を好きっていう人は、多いのよ」
「うそ~」
「なんか、母性とか言うのをくすぐられるらしいわ」
「変なの」
花ちゃんと私は、なんとなく腑に落ちなかった。
☆ ● ☆
そして、百合さんは、家に帰って行き、一騒動は、型が付いた。
「百合は、見つかりました」
百合さんのお母さんは、一人一人にあいさつしていた。
「結婚おめでとう」
「おめでとう」
みんなそう言う。
☆ ● ☆
そして、結婚式の日、会場に呼ばれた私は、見てしまったのだ。魚屋の男性が、こっそり百合さんに会いに来るのを。
「百合、好きだ。戻ってきてくれ」
「いやよ、能無し、金なし」
百合さんは、そうののしって外に出してしまった。
(やっぱり、お金って大事なんだ)
私は、強くそう思った。
祝言で、百合さんの隣に座ったのは、平凡そうな男の人だった。かっこよくはないが、優しそうな人ではあった。
(これは、これでいいのかも、優しそうだし)
魚屋さんよりも、経済的にも安心できそうだと思ったし、百合さんもニコニコしていて、幸せになれそうだと思った。結局楽しい祝言だった。
「やっぱり、百合さんにふさわしいのは、魚屋さんじゃないよ」
花ちゃんは、そう言っていた。
「同感ね」
お宮様もそう言う。
「やっぱり、お金が一番大事なんだね」
「まあ、お金持ちがってことかな?」
「だって、あの男性は、不真面目そうだったじゃない」
「そうよ」
花ちゃんとお宮様が燃え上がっていた。
「それは、いいけど、恋物語はどんなのにする? まだ、決まらないよね?」
「運命の人を探す女の人の話とかは?」
花ちゃんがそう言う。
「いいね、そうしよう」
お宮様もいいと言った。
「明日から書き始めましょう」
「おう」
「うん」
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