次の日、朝から街は、大騒ぎだった。

「百合がいないの」

 百合さんのお母さんが、一生懸命聞き込みをしている。

「どうしたのですか? 何かあったのですか?」

「百合が逃げたの」

「もしかして、私たちのせいかな? 百合さんに本音を言わせてしまったから……」

「そうかもしれない」

「魚屋の男性と密会しているのかもしれないよ、この村で密会をするのなら、神社の裏とかかな?」

「そうね、行きましょう」

花ちゃんとお宮様と神社の裏へ行った。

「百合さんいた?」

「いないよ~」

 うろうろしていると。

「私たちは、やっぱりだめよ」

 百合さんの声がした。

「いたっ」

 草陰に隠れて、百合さんを見る。隣には、美しい硬派系の美少年がいた。

「百合、だって、俺にはお前しかいないんだ」

「でも、あなたは、金使いが荒いし、すぐお金を使い切るじゃない、そう言う人にお金を渡したくないわ」

「気を付ける、だから、戻ってきてくれ」

「いやよ」

 百合さんは大声を上げた。

「私は、あなたの金ずるじゃない、私は、自分の人生を歩むのよ」

「そう言って、俺の事好きなんだろう」

 魚屋の男性は、百合さんを抱きしめてそう言う。

「……」

 百合さんが迷う。

「これからも、一緒にいようぜ、だから、十文でいい、貸してくれ」

「はっ、やっぱり、あなたは、お金だけなのね、口を開けば、お金お金って、私は、お金持ちと結婚して、あなたと縁を切ります」

 二人は、けんかして、別れた。

「ああ、百合さんの好きな人って、ああいう人だったんだ」

 三人で拍子抜けしまった。

「あんな人のどこがよかったんだろう?」

「ああいう人を好きっていう人は、多いのよ」

「うそ~」

「なんか、母性とか言うのをくすぐられるらしいわ」

「変なの」

 花ちゃんと私は、なんとなく腑に落ちなかった。


  ☆ ● ☆


 そして、百合さんは、家に帰って行き、一騒動は、型が付いた。

「百合は、見つかりました」

 百合さんのお母さんは、一人一人にあいさつしていた。

「結婚おめでとう」

「おめでとう」

 みんなそう言う。


  ☆ ● ☆


 そして、結婚式の日、会場に呼ばれた私は、見てしまったのだ。魚屋の男性が、こっそり百合さんに会いに来るのを。

「百合、好きだ。戻ってきてくれ」

「いやよ、能無し、金なし」

 百合さんは、そうののしって外に出してしまった。

(やっぱり、お金って大事なんだ)

 私は、強くそう思った。

 祝言で、百合さんの隣に座ったのは、平凡そうな男の人だった。かっこよくはないが、優しそうな人ではあった。

(これは、これでいいのかも、優しそうだし)

 魚屋さんよりも、経済的にも安心できそうだと思ったし、百合さんもニコニコしていて、幸せになれそうだと思った。結局楽しい祝言だった。

「やっぱり、百合さんにふさわしいのは、魚屋さんじゃないよ」

 花ちゃんは、そう言っていた。

「同感ね」

 お宮様もそう言う。

「やっぱり、お金が一番大事なんだね」

「まあ、お金持ちがってことかな?」

「だって、あの男性は、不真面目そうだったじゃない」

「そうよ」

 花ちゃんとお宮様が燃え上がっていた。

「それは、いいけど、恋物語はどんなのにする? まだ、決まらないよね?」

「運命の人を探す女の人の話とかは?」

 花ちゃんがそう言う。

「いいね、そうしよう」

 お宮様もいいと言った。

「明日から書き始めましょう」

「おう」

「うん」

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