61 告げぬ思いも


私のことを、彼女はその頃から好いていたようでした。


ただ、彼女は考えていなかったのです。


私もまた、彼女のことを…などとは、夢にも。


実際、私も人より臆病なところがありますから、その熱さえ孕んだ思いは、しばらくの間は胸の内に秘められているままでありました。


君は勿体無いと言うかもしれません。


しかし、どうにも交わることのできないそのもどかしさすら、そのときの私には尊いもののように思われたのでした。

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