39 冬の嘆きは誰に届くか
雪が溶ける。キラキラと朝日を反射して輝く景色に、僕の気持ちは沈んでいった。
僕は間もなく、ここを去らなければならない。
春が待ちきれない。
寒さなんて早くどこかへいけばいいのに。
そこらじゅうから、そんな囁き声がひそひそと聞こえてくる。
「いきたく、ないなあ」
誰にも聴こえないように呟く。僕は去らなければならない。こんなつぶやき、誰にも聴こえてはいけない。
「なんで、僕だけ」
僕が去れば、春が来る。誰もが望んで迎える春が。
木々は青々と芽吹き、動物たちは眠りから覚めて、暖かな春の空気に喜ぶのだ。
僕は、そこにはいられない。
僕の居場所は、冷たく、静かで、誰もいない、誰からも望まれないところ。
たった一人。
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