21 道案内

「もし」


俯いていた顔を少しだけ持ち上げる。背の曲がった老人が、すぐそばに立っていた。


「駅はどちらで」


「この道を真っ直ぐに。すぐに着きますよ」


「ほうですか。ありがとう」


彼は朗らかに礼をし、ゆっくりと僕の指が示した方へと進んでいった。


僕も、少しだけ顔を上げる。


背筋を伸ばせばすぐそこに、彼の目指す駅は見えるのだ。


彼にも、見えるといいが。

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