第十七幕:夏の街に弾む虹
七夏ちゃん、天美さん、高月さんの三人と一緒に商店街へ向かう。
天美さんのストレートな気遣いで、少しずつだが、高月さんと自然に話せるようになれそうだと思う。天美さんは、七夏ちゃん、高月さん、そして俺の方にも満遍なく話をしてくれる。七夏ちゃんと高月さんが話し込むと、俺の方に話しかけてくれるし、俺と七夏ちゃんが話し込むと、高月さんと話をしている。その振る舞い方がとても自然でこれは、なかなか簡単にはできない事だと思う。
七夏「えっと、到着ですっ☆ 柚樹さん♪」
時崎「ありがとう、七夏ちゃん!」
笹夜「ファーストフード店・・・」
心桜「そ。寄ってりあ☆ つっちゃー!」
七夏「どしたの? ここちゃー?」
心桜「速い食べ物・・・じゃないよ!」
七夏「もう・・・分かってます!」
時崎「???」
ファーストフード店「寄ってりあ☆」は、学生さんがお茶する場として人気がある。今は夏休み期間だからか、私服姿の人が多い。七夏ちゃんたちは、普段よく利用しているのだろうか。
心桜「あたし、テリヤキセット!! つっちゃーは!?」
七夏「えっと、お魚さんの・・・」
心桜「フィレオフィッシュのセット!?」
七夏「はい☆ 笹夜先輩は、何にしますか?」
笹夜「わたしも、七夏ちゃんと同じので♪」
七夏「はい☆ えっと・・・」
七夏ちゃんの瞳の色が翠碧色になる。
時崎「俺も、七夏ちゃんと同じので」
七夏「はい☆」
心桜「え!? ・・・って事は、あたしだけテリヤキセット!?」
時崎「みたいだね・・・一人だけ違うと何かあるの!?」
心桜「いや、みんな同じの頼んだら同時に来るから、揃って『いただきます』出来るかなーって」
時崎「まあ、ファーストフード店だから気にしなくても・・・じゃ、俺、頼んで来るから」
七夏「え!?」
心桜「おっ! お兄さんありがとー!」
七夏「こ、ここちゃー!!!」
時崎「七夏ちゃん、構わないから」
七夏「ありがとうございます。柚樹さん」
笹夜「時崎さん、ありがとうございます」
注文の為、カウンターへ向かう。
主「テリヤキセットひとつと、フィレオフィッシュセットをみっつ、お願いします」
店員「フィレオフィッシュセットをみっつですか!?」
何故か店員さんが聞き返してきた。
時崎「はい、みっつお願いします」
七夏「わたしたちの分も一緒です」
時崎「え!?」
後ろを振り返ると、七夏ちゃんが居た。
店員「はい! ありがとうございます!」
時崎「七夏ちゃん!?」
七夏「柚樹さん、四人分持つのは危ないです」
七夏ちゃんに言われて気づく。
時崎「た、確かに・・・」
七夏「くすっ☆」
天美さんと高月さんは、場所を確保してくれているようだ。恐らく、天美さんが高月さんを一人にさせないように気をつかっているのだろう。三人の時はどうしているのだろうか。
店員「テリヤキセットになります!」
時崎「あ、はい!」
俺はテリヤキセットを受け取る。
七夏「お支払いは、私がまとめます」
店員「ありがとうございます!」
時崎「ありがとう、七夏ちゃん。後で払うから」
俺は、テリヤキセットを天美さんの所に持ってゆく。天美さんは俺に気づくと、その場を立ち、俺の方・・・を通り越してしまう。
主「あれ!?」
振り返ると、天美さんはフィレオフィッシュのセットを両手に二つ持っていた。
心桜「お兄さん、早く座りなよ!」
主「あ、ああ」
天美さんに言われるがまま、四人掛けの窓際の席につく。正面には高月さんなので、少し緊張する。天美さんは高月さんの隣に座った。
心桜「よっと、はい! 笹夜先輩!」
笹夜「ありがとう、心桜さん。あら!? 心桜さん!?」
心桜「なんですか?」
笹夜「心桜さん、フィレオフィッシュだったかしら!?」
心桜「それは、こうすればっ!」
そう言いながら天美さんは、俺の前にあるハンバーガー「だけ」交換した。
笹夜「まあ!」
時崎「おっ!」
心桜「ねっ☆」
まだまだ、天美さんの行動が読めない。
笹夜「心桜さん!」
心桜「なんですか?」
笹夜「時崎さん、すみません」
時崎「え!? あ、いえ、天美さん面白くて」
心桜「楽しいって、言ってよねっ!」
笹夜「もう、心桜さん・・・」
時崎「高月さん、ありがとう」
笹夜「いえ」
七夏「ここちゃーは、いつも楽しいです☆」
時崎「七夏ちゃん!」
七夏「お待たせしました☆」
七夏ちゃんが俺の隣に座ってきた。それが自然に見えた事が嬉しい。
心桜「んじゃ、み~んな揃って『ご挨拶!』」
笹夜「ご挨拶って!?」
七夏「ここちゃー、顔、ちょっと怖いです」
心桜「あははっ!」
天美さんは、割と駄洒落好きなのかも知れない。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
心桜「あー、美味しかった~! ごちうさ~!」
七夏「ごちそうさまです☆」
笹夜「ごちそうさまでした♪」
心桜「テリヤキ美味しいんだけど、かぶりついた時に、中身飛び出すから、気をつかっちゃうよ」
七夏「くすっ☆」
笹夜「心桜さん、他の事にも・・・」
心桜「分かってます!」
天美さんは、心配りは出来ていると思う。七夏ちゃんとはその表現の仕方が違うだけ。それだけは確実だと思う。
時崎「三人は、この後どうするの?」
七夏「えっと、雑貨屋さんと、本屋さんかな? ここちゃーは?」
心桜「あたしはスポーツ店!」
時崎「なるほど」
七夏「柚樹さんは、どこか寄りたい所ありますか?」
時崎「いや、特には・・・三人に合わせるよ」
心桜「お兄さんも、遠慮しなくていいよ」
時崎「いや、別に・・・」
心桜「写真屋さんとか、用事な---」
笹夜「こ、心桜さん!!!」
七夏「ひゃっ!」
心桜「わっ!」
時崎「!?」
笹夜「あっ、す、すみません・・・」
時崎「あ、いや・・・」
高月さんの少し力強い声に驚いた。理由は何となく分かる。三人の中で「写真」と言う言葉は御法度なのだろう。それは高月さんが、七夏ちゃんを思っての事だと思う。いづれにしても、あまり写真の話題はしない方が良さそうだ。
心桜「笹夜先輩!」
笹夜「はい、何かしら?」
心桜「つっちゃーなら、もう大丈夫だよ!」
笹夜「え!? 大丈夫?」
七夏「はい☆」
心桜「少なくとも、お兄さんの写真なら・・・ねっ!」
七夏「えっと・・・」
笹夜「そう・・・なの? ・・・七夏ちゃん!?」
七夏「その・・・」
高月さんは七夏ちゃんの表情から、何かを感じ取った様子で、その表情も穏やかになった。
笹夜「すみません。大きな声を出してしまって」
時崎「いや・・・気にしなくていいよ」
心桜「んじゃ、次、行きますか!」
七夏「はい☆」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
三人と一緒にスポーツ店の前に来た。
心桜「それじゃ、パパッと見てくるね!」
七夏「はい☆」
笹夜「心桜さん、ゆっくりでいいですよ♪」
心桜「ありがとうございます!」
天美さんはスポーツ店の中へ・・・バドミントン部って話してたから、その関係かな・・・。
時崎「ところで、二人は入らないの!?」
七夏「え!?」
笹夜「はい。私が入っても、場違いな気がしますから・・・」
時崎「そんな事はないと思うよ」
笹夜「ありがとうございます。でも、全く買うつもりもないお店に入るのは・・・」
時崎「天美さんと一緒に入って、天美さんが何か買えば・・・」
笹夜「そうなのですけど・・・」
七夏「ここちゃー、見るだけで何も買わない事が多いから・・・」
時崎「そ、そう・・・それは確かに・・・」
人の出入りがそれ程多くなさそうなお店(失礼かな?)で、女の子三人組の冷やかしは問題かも知れない。
心桜「お待たせっ!」
天美さんは何か筒のようなものを手にしていた。
時崎「ん? ポテトチップス!?」
心桜「お兄さん、シャトルだよ!?」
時崎「シャトル・・・羽!?」
心桜「そ。さすがに、スポーツ店でポテトチップスは無いわ~!」
時崎「そ、そうか・・・」
心桜「次は、雑貨屋だったかな?」
七夏「はい」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
三人と一緒に雑貨屋の前に来た。
雑貨屋へは三人とも入ってゆく・・・。それぞれ、何か、買うものがあるのだろうか!?
俺は特に何か買う物はないが、三人に同行する。それぞれの好みが分かるかも知れない。特に高月さんの好みが分かるように、目を光らせてみる。少しでも高月さんの心が見えるように・・・。
三人は、小物・・・アクセサリーの所で話し込んでいる。
七夏「あっ、これ可愛いな☆」
心桜「ん? 絵葉書!?」
七夏「はい☆」
心桜「出す相手いるの!?」
七夏「えっと、いない・・・です」
笹夜「絵葉書は、まず『絵を楽しむこと』かしら?」
七夏「笹夜先輩! ありがとうございます!」
心桜「そう言いう考え方か~。確かに!!」
絵葉書か・・・七夏ちゃんに絵葉書を送ると、きっと喜んでくれると思う。俺は七夏ちゃんの好きそうな商品がないか辺りを見回す。セブンリーフは確実だろうけど、それ以外で何か無いかな?
主「これは・・・」
七夏ちゃんの好きそうな物・・・では無く、俺の関心を惹く物があった。それは、七色に輝く小さな石のペンダントトップだった。
主「ラブラドライド・・・か・・・」
見る角度によって光り方や色が変わるこの石は「ラブラドライド」と記されていた。ペンダントならちょっと買いにくいが、ペンダントトップなら石みたいな感覚で買えそうだ。このラブラドライド、七夏ちゃんの瞳のイメージにぴったりだけど、七夏ちゃんにはどのように見えるのか分からない。俺は、三人に気付かれないように、このラブラドライドのペンダントトップを購入しておいた。
心桜「つっちゃー! 花火あったよ! 皆で花火しない?」
七夏「はい☆ 私も、これ買っておきますね☆」
心桜「線香花火! いいね!」
七夏「笹夜先輩! それは!?」
笹夜「本のカバーですね♪」
七夏「はい☆ 本屋さんでもあります☆」
笹夜「ええ♪」
心桜「本を買ったら『カバーお付けしますか?』って聞かれるよね?」
七夏「はい☆」
心桜「だから、ちゃんとしたブックカバーを買う事って無いかな~」
笹夜「心桜さん、ひとつ買ってみては如何かしら!?」
心桜「え!? あたしはいいです! こんな綺麗なカバー付けてて、その中身が漫画だったりしたら・・・ちょっとハズカシイ~!」
七夏「私は漫画でもいいと思います☆」
心桜「なんで?」
七夏「えっと、本が大切にされている事が伝わってきますから♪」
心桜「つっちゃーや笹夜先輩の場合は、そうなるよね・・・イメージ的に・・・本と言えば、この後、本屋さんにも寄るよね」
七夏「はい☆」
笹夜「では、本屋さんへ参りましょう♪」
心桜「で、お兄さんは?」
七夏「えっと・・・あっ!」
他に、ラブラドライドのような石が無いか見て回ったが、購入したペンダントトップだけのようだ。これは、いい買い物が出来たかも知れない。
七夏「柚樹さん!」
時崎「七夏ちゃん! お買い物は済んだ?」
七夏「はい☆ 花火を買いました☆」
時崎「花火か・・・買うものがあってよかったね!」
スポーツ店の事があったからか、七夏ちゃんは少し苦笑いをしている。
七夏「後は本屋さんに寄りますけど・・・」
時崎「分かったよ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
前にも来た事がある書店・・・そう言えば、ここで「空」と「虹」をテーマにした写真集を見かけた・・・まだ置いてあるかな。
書店で三人はそれぞれ別の方向に向かったようだ。七夏ちゃんは小説のコーナー、天美さんは・・・漫画のコーナーで、高月さんは・・・音楽のコーナー・・・手にしたのは楽譜かな? 高月さんは楽器の演奏でもするのだろうか? あまり詮索するのも良くないかな・・・とりあえず、あの「空」と「虹」の写真集があった所に向かう事にした。
時崎「あれ!? ・・・売れてしまったのかな・・・」
なんだか急に寒気がした。「虹はいつか消えてしまう」・・・そんな事は分かっている。だから見えている間に、出来る限りの事をするべきだ。恐らく、「空」と「虹」の写真集は、注文すれば手に入れる事ができるだろう。たけど、それはあの時、俺が手にしていた写真集・・・
<<七夏「くすっ☆ とても夢中になってたみたいですね」>>
七夏ちゃんとの思い出となっている写真集ではない・・・失ってしまってからでは、どうする事も出来ないという事だ。本当にあの時の写真集が無いか、くまなく探してみる・・・あの時一冊しか無かったからやはり・・・。念の為、店員さんに聞いてみようかとレジの方へ向かうと、書店の外で見覚えのある人の姿が・・・高月さんだ。何やら男の人に話しかけられているみたいだが・・・。
高月さんの隣に見知らぬ男・・・。俺は高月さんの様子からナンパされていると気付いたので足を急がせる。
笹夜「は、離してください!」
男 「だから、話してるんじゃ・・・」
笹夜「そういう事ではなくて、手を・・・」
時崎「高月さん!!」
高月さんは、俺の存在に気付き、こちらに来ようとしたが、ナンパ男に手を掴まれてしまっていた。状況はあまりよろしくないと思ったその時!
男 「アイタタッ!」
ナンパ男は声を出して高月さんの手を離す。俺は何が起こったのか分からない。ナンパ男の大きな声で天美さんも、この事に気付いたようで、一気に高月さんの元へ駆け寄る・・・流石足が速い! 天美さんは高月さんのそばに駆け寄り、ナンパ男を睨み付ける。俺も高月さんのそばに駆け寄る・・・。
男 「チッ! 男付きかよ!」
心桜「なにぃ~!!」
男 「ちょっと、道を聞いただけだろ?」
時崎「そうは、見えなかったが・・・」
男 「フンッ! この怪力女!!」
笹夜「っ!!!」
時崎「おいっ!」
ナンパ男はそう言い捨てて、その場を後にした。
時崎「大丈夫!? 高月さん!」
笹夜「・・・・・」
高月さんは、無言のまま目元が涙ぐんでいた。
心桜「あいつ~!!」
俺はナンパ男の捨て台詞である「怪力女」という言葉から、高月さんは結構手の力が強いという事を理解した。見たところ、言い方は悪いかも知れないが、華奢な印象だったので意外に思う。高月さんは手の力が強い事を悩んでいるのかも知れない。
そう言えば、ファーストフード店を出る前、先に支払いを済ませてくれていた七夏ちゃんへお金を渡す時、同じメニューを頼んでいた高月さんの分も一緒にまとめる事になり、高月さんからお金を受け取ろうとして、手が少し触れてしまった。高月さんは驚いて素早く手を引っ込め、その勢いでお金を落としてしまい、俺に謝ってきた。手が触れて驚かれた事は、ほぼ初対面だからそんなものかと思って気にも止めなかったけど、もしかすると・・・手の力が強いという事が関係しているのかも知れない。高月さんは、雑貨店で七夏ちゃんや天美さんに手を繋がれたりしても、特に拒む様子ではなかったので、あの反射的な行動は俺に対してだけという事になる。俺は、高月さんの手の力が強くても気にならないが、高月さん本人が気にしているのなら、今後、気を付けなければならない。
笹夜「と、時崎さん・・・」
時崎「え!?」
笹夜「すみません・・・駅までの道を聞かれたから、駅の方角を教えるつもりだったのですけど・・・」
時崎「駅の方角なんて、訊かなくても分ると思うけど・・・よくあるナンパの手口だよ・・・。とにかく気をつけないと!」
笹夜「ありがとうございます・・・」
心桜「笹夜先輩! 大丈夫ですか!?」
笹夜「え、ええ・・・ありがとう。心桜さん」
七夏「どしたの? ここちゃ・・・笹夜先輩!?」
七夏ちゃんも書店から出て来た。
笹夜「な、なんでもないわ。七夏ちゃん」
時崎「七夏ちゃん、お買い物は済んだの?」
俺は、笹夜先輩の意思を読み取って、七夏ちゃんを巻き込まないように話題を変える。
七夏「はい☆ あと、これ☆」
心桜「おっ! ブックカバー!!」
七夏「四人分あります!」
時崎「四人分って!?」
七夏「えっと、みんなの分・・・です☆ もし、誰も要らなかったら、私が・・・」
心桜「いるいる! ありがとー! つっちゃー!」
笹夜「私も! ありがとう! 七夏ちゃん♪」
七夏ちゃんの瞳の色が綺麗な翠碧色になっている・・・。
時崎「俺も、喜んで頂くよ! ありがとう! 七夏ちゃん!」
七夏「・・・はい☆」
心桜「お兄さん、ブックカバーに入れる本・・・持ってるの?」
時崎「あ、天美さんこそ!」
心桜「あたしは、持ってるよ!」
時崎「漫画とか?」
心桜「あははー! あったりぃ~☆」
七夏「くすっ☆」
笹夜「~♪」
なんとか、高月さんも俺の知っている限りでの普段の様子に落ち着いてくれたみたいだ。高月さんは、人目を惹く容姿だから、特に気をつけなければならないと思った。
心桜「後は、何かあったっけ?」
七夏「えっと、特には・・・」
心桜「笹夜先輩!?」
笹夜「夕陽・・・綺麗です!」
心桜「ほんとだ! 何か大きくみえるねー」
七夏「はい☆ 柚樹さん!」
時崎「え!?」
七夏「他に寄るとこ、ありますか?」
時崎「いや、無いから、風水に帰ろう。余り遅くなると凪咲さんも心配すると思うから」
心桜「お兄さん!」
時崎「え!?」
天美さんは、夕陽を眺めている高月さんを指差し、写真を撮るようなポーズをする。俺は、写真機を構え、初めて高月さんを撮影した。そして、天美さんも入るように手を動かす。天美さんと七夏ちゃんがファインダーに入って来た所を記録した。
虹を映す少女、高月笹夜さん・・・七夏ちゃんには、高月さんの虹は、どのように見えているのだろうか?
高月さんが映す人の心・・・七夏ちゃんや天美さんの心は、自然に映っているのだと思うけど、俺はどのように映っているのだろうか・・・。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏「ただいまぁ☆」
凪咲「お帰りなさい」
七夏「ちょっと遅くなっちゃったけど、今からお手伝いします」
凪咲「ありがとう、七夏。でも、今日はいいわ!」
七夏「え!?」
凪咲「七夏のお友達がいらしてるから、今日は七夏もお客様!」
七夏「いいの?」
凪咲「ええ! 先に流してらっしゃい!」
七夏「はい☆ ありがとう、お母さん!」
心桜「つっちゃー今からお風呂?」
七夏「はい☆」
心桜「んじゃ、あたしも! 笹夜先輩は?」
笹夜「私は後で♪」
心桜「えーーー! 一緒がいい!」
笹夜「でも、三人だと狭くならないかしら?」
心桜「つっちゃー家のお風呂、広いよー! 三人なんて余裕余裕!」
笹夜「まあ、そうなの?」
心桜「なんだったら、もっと広い混浴露天風呂もあるんだから!」
笹夜「こ、混浴!?」
心桜「まあ、露天の方は広いけど、お兄さんが入ってきても『キャー!!!』って言えないよねっ!」
時崎「な、入らないって!」
心桜「えー!!! もったいない!!!」
笹夜「こ、心桜さんっ!!」
心桜「あはは! すみませーん!」
七夏「・・・・・」
時崎「凪咲さん!」
凪咲「何かしら?」
時崎「何か手伝える事ってないですか?」
凪咲「ありがとう、柚樹くん。では、お願いいいかしら?」
時崎「はい! 天美さんたちは早くお風呂に入る事!」
心桜「は~い!」
笹夜「時崎さん、失礼いたします」
時崎「七夏ちゃん!? どうしたの?」
七夏「え!? えっと・・・ゆ、柚樹さん! また後で!」
時崎「あ、ああ」
凪咲「柚樹くん、今日はありがとう」
時崎「え!?」
凪咲「明日も、七夏たちの事、よろしくお願いいたします」
時崎「あ、はい!」
凪咲「では、これを、こちらに運んでくれるかしら?」
時崎「はい!」
お米の袋を運ぶようだ。一袋10kgが三つ、大したことはない。
凪咲「後は、これを吹きこぼれないように、見ていてくれるかしら?」
時崎「はい」
鍋で何かの出汁を取っているのだろうか。最初はなんて事無かったが、次第に暑くなってきた。俺が鍋をかき混ぜている間、凪咲さんは野菜を切っている。七夏ちゃんも、普段はこんな感じなのだろうか。
凪咲「ありがとう、柚樹くん。次はこれ、いいかしら?」
時崎「はい、それをおろせばいいのですね」
凪咲「はい」
凪咲さんから、大根と、おろし用の陶器を受け取る。大根はおろされると意外と少なくなるな・・・なんて思っていたら、凪咲さんが、更に大根を持ってきた。
天美さんが、今日は蟹料理って話してたけど、この大根は関係あるのかな。
時崎「凪咲さん、これでいいですか?」
凪咲「はい。ありがとうございます」
時崎「後は・・・」
凪咲「では、このお皿を・・・」
時崎「分かりました」
和室のテーブルにお皿を運ぶ。いつも七夏ちゃんがしてくれている事・・・改めて感謝する。
心桜「ん~! サッパリ~!」
時崎「あ、天美さん! どうぞ!」
俺は冷茶を、渡す。
心桜「おっ! ありがとー! お兄さん! 気が利くね~!」
時崎「いつも、七夏ちゃんが・・・」
七夏「私!?」
時崎「おっ! 七夏ちゃん!」
七夏ちゃんに次いで、高月さんも姿を見せた。三人共、風水の浴衣姿だ。七夏ちゃんの浴衣姿は見慣れていたけど、三人揃うと絵になるなーと思ってしまう。
時崎「はい! 七夏ちゃん! 高月さんも!」
七夏ちゃんと高月さんに冷茶を渡す。
七夏「ありがとうです☆ 柚樹さん!」
笹夜「ありがとうございます♪ 時崎さん♪」
心桜「んー、お兄さん! もう一杯!!」
時崎「はい!」
七夏「くすっ☆ 柚樹さん、ありがとうです☆ 後は私が手伝いますから、柚樹さんも流してきてください☆」
時崎「ありがとう、七夏ちゃん」
凪咲さんに断って、お風呂場へ向かった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
七夏ちゃんたちと同じ香りがするお風呂・・・まだ慣れないのか、すぐにのぼせてしまいそうだ・・・俺は、ささっと軽く流すだけにしておいた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
心桜「お兄さん! 早かったね!」
時崎「まあ、さっと流しただけだから」
七夏「柚樹さん、どうぞ!」
七夏ちゃんが冷茶を用意してくれた。
時崎「ありがとう、七夏ちゃん!」
七夏「はい☆」
心桜「お兄さん! 早く座りなよ!」
時崎「あ、ああ」
いつも座っている場所に座る。
心桜「お兄さんも、あたしたちとおんなじ香りで、お揃いだね~」
時崎「え!?」
<<七夏「お揃い・・・です・・・」>>
先日、七夏ちゃんに「お揃い」と言われた時の事を思い出してしまう。
心桜「ん!? どしたの? お兄さん!?」
七夏「柚樹さん、お顔・・・少し赤いです・・・」
時崎「な、なんでもないっ!」
心桜「なんでもあるっ! ・・・って感じだけど?」
笹夜「心桜さん!!!」
心桜「あははっ!!!」
俺の正面には高月さんが座って居る。ファーストフード店の時と同じ状態だ。
笹夜「時崎さん」
時崎「え!?」
笹夜「今日は、色々とありがとうございました」
時崎「こちらこそ、楽しかったよ!」
笹夜「はい♪」
高月さんの方から話しかけてくれて、少しホッとしてしまう。高月さんを前にすると、何を話したらいいのか分からないから・・・。
心桜「まだまだ、お楽しみはこれからだよ!」
笹夜「え!?」
心桜「かにカニ蟹!!!」
時崎「今日は蟹料理だったね!」
七夏「お待たせです!」
七夏ちゃんが蟹のお料理を持ってきてくれた。
心桜「おー!! きたきた~♪ 待ってたよ~」
笹夜「色鮮やかですね♪」
時崎「これは豪華だ!」
蟹のお料理を食べだすと、何故か会話が無くなりがちになるけど、この三人はどうなのかなと様子を見てみる事に・・・。
天美さんは関節から脚を引っ張って筋だけ出てきている。
心桜「あらー・・・。蟹の身って、なんで筋だけ出てくんだろ?」
七夏「え?」
心桜「どうせなら、身だけ出てきて、筋が残ればいいのに」
七夏「ここちゃー、こうすると、いいです☆」
七夏ちゃんはニッパーのような道具を使って蟹の足から身を取り出す。
心桜「おぉ! 流石! つっちゃー! 若女将!」
七夏「え!?」
心桜「やっぱ、かに座は伊達じゃないねー!」
七夏「それって、関係あるのかな?」
心桜「あるよ。つっちゃー、共食い!」
七夏「え!? どおして?」
心桜「だって、つっちゃー蟹座だから!」
七夏「そ、そんな・・・」
心桜「んじゃ、語尾にカニって付けてみるとか!?」
七夏「つ、付けません!!」
心桜「漬物は?」
七夏「漬けま・・・す」
心桜「語尾は?」
七夏「付けません!!」
心桜「お・・・」
七夏「付けません!!」
心桜「き・・・」
七夏「付けません!!」
心桜「今日は手ごわ・・・」
七夏「付けま・・・って、ここちゃー!」
心桜「あははー・・・ごめん」
笹夜「心桜さん!」
心桜「あははー。ま、 あたしは、ふたご座だから、蟹とは無縁かな・・・」
七夏「ふたごの蟹さんなら、相性いいかも?」
心桜「たしカニ!!」
七夏「え!?」
心桜「な、なんでもないっ! 笹夜先輩は、おとめ座だから---」
笹夜「~♪」
心桜「さ、笹夜先輩!!!」
高月さんは、素手で蟹の関節の少し手前を折って、蟹の足から身を引きずり出していた。
笹夜「はい!? 心桜さん、どうかしましたか?」
心桜「おとめ座なのに力技・・・あ、いや・・・なんでもないです」
七夏「笹夜先輩、この道具、使わないの?」
笹夜「え? この道具は、どのように使うのかしら?」
心桜「ま、笹夜先輩には不要な道具・・・みたいだね~」
笹夜「???」
心桜「そう言えば、蟹もそうだけど、海老も大概だよねー」
七夏「え!?」
笹夜「び!?」
心桜「何!? その妙な連携!?」
七夏「えっと・・・」
笹夜「・・・すみません」
心桜「だから、なんでセパレートークしてんの?」
七夏「せぱれえとおく?」
心桜「あー、もういいっ! 海老ですよ、エ・ビ・ッ!!!」
笹夜「その・・・海老が大概っていうお話だったかしら!?」
心桜「そうそう、海老が丸ごと出てくると、なんか億劫になるんだよねー」
七夏「ここちゃーは、海老さん嫌いだったの?」
心桜「つっちゃーさ、その妙な『さん付け』って・・・色々と誤解を招きかねないよ!」
笹夜「丁寧にお話して誤解を頂く・・・日本語って難しい所がありますね」
心桜「そだね・・・呼び捨ての方がいい場合もあるって事で! ・・・って事で、つっちゃー!!」
七夏「はい!?」
心桜「もう一度、言い直してみよう!!」
七夏「ここちゃーは、海老って嫌いだったの?」
心桜「・・・・・」
七夏「どしたの!? ここちゃー!?」
心桜「んー、なんかさー『さん付け』の後味が残ってるんだよねー」
笹夜「最初に受ける印象って大切・・・という事かしら!?」
心桜「そうですね! んで、あたしは別に海老は嫌いじゃないよ」
七夏「良かった☆」
心桜「たださ、海老がそのまま出てくると、頂くまでが面倒で、結局最後まで残るんだよねー」
笹夜「なるほど・・・確かにその傾向はありますよね」
七夏「お料理の時に、すぐ頂けるようにすればいいのかな?」
心桜「あたし的にはそうなんだけど、現実はそうじゃないみたいで・・・このズレは無くならない気がする・・・なんで、すぐ食べれる状態で出てこないのかなーって」
七夏「えっと、お料理を頂く前に、見て楽しめるように・・・って」
心桜「!!!!!」
七夏「ひゃっ☆ どしたの!? ここちゃー!?」
心桜「いや、今のつっちゃーコメント・・・まじ、やられた感がした!!」
七夏「え!? えっと、お母さんも、そう話してました☆」
心桜「流石! 凪咲さん!」
七夏「くすっ☆」
笹夜「お食事は食べるだけが楽しみじゃない・・・という事ですね♪」
七夏「はいっ☆」
心桜「うぅ・・・あたし、ちょっとハズカシイ・・・」
笹夜「まあ、心桜さんの言う事も一理ありますけど・・・」
心桜「さ、笹夜センパイ~(うるうる・・・)」
笹夜「一理、ありますけど、海老が、わざわざ心桜さんに食べられやすくなるように進化する事は、退化とも言えますから、考えにくいかしら!?」
心桜「がっくし・・・OTL 持ち上げといて、落としますか!?」
笹夜「え!?」
心桜「まあ、いいや! あたしはこれからも『葉っぱえびせん』食べまくるからっ!!」
七夏「葉っぱえびせん・・・サラダにも合います!!」
心桜「アイマス・・・商法・・・」
七夏「え!?」
心桜「いや、なんでもないっ!」
三人は盛り上がっているみたいだ・・・割と面白い。
心桜「ちょっと、お兄さん!」
時崎「え!?」
心桜「さっきから黙ってるみたいだけど、もしかして、蟹の身相手にすると黙り込むタイプ?」
時崎「そうじゃなくて、三人の会話が面白かったので・・・」
心桜「どうせなら楽しいって言ってよねっ!」
時崎「それ、前にも聞いた」
心桜「あははー。前にも話したね~」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
心桜「いや~、沢山食べたよ~食べ過ぎだよ~」
時崎「いつもご馳走だけど、今日はより豪華だった!」
笹夜「ご馳走さまでした。とっても美味しかったわ! 七夏ちゃん♪」
七夏「良かったです☆」
心桜「ごちうさー!」
時崎「ご馳走さま。七夏ちゃん!」
七夏「はい☆ 私もご馳走さまでした☆」
笹夜「この後、どうされます?」
時崎「そう言えば、天美さん花火、買ってたよね」
心桜「買ったけど、今は動きたくないかも~」
七夏「もう、ここちゃーったら・・・」
凪咲「あら、みんな沢山食べたわね!」
時崎「凪咲さん、ご馳走さまでした!」
心桜「ごちそうさまでした!」
笹夜「ごちそうさまでした♪」
凪咲「ありがとう。お粗末さまでした」
凪咲さんはテーブルの上を片付け始めた。
七夏「あ、私も!」
七夏ちゃんも凪咲さんに続く。
笹夜「七夏ちゃん、しっかりしてるわね」
心桜「そりゃ『若女将』だからね~」
寝っ転がりながら、天美さんが話す。
笹夜「心桜さん! あなたはくつろぎ過ぎです!」
心桜「だって笹夜先輩! ここ『民宿』だよ! くつろぐところですって!」
笹夜「そ、そうですけど・・・」
七夏「笹夜先輩も、ごゆっくりどうぞです☆」
笹夜「ありがとう。七夏ちゃん♪」
夕食の片付けがある程度済んだみたいで、七夏ちゃんもテーブルの前に座ってきた。
時崎「七夏ちゃん! お疲れ様!」
七夏「はい☆ 柚樹さん☆ 私、お部屋にもどりますね☆」
時崎「もうお休み?」
七夏「いえ、ここちゃーと、笹夜先輩のお布団の準備がありますので♪」
時崎「俺も手伝うよ!」
七夏「ありがとうです☆」
心桜「あたしも、二階で休む~! 笹夜先輩も!」
笹夜「ええ♪」
三人と一緒に二階へ上がる。
七夏「柚樹さん、お部屋、入ってもいいですか?」
時崎「ああ。もちろん!」
七夏「失礼します!」
心桜「あたしも、失礼しますー!」
笹夜「こ、心桜さん!」
心桜「いいよねっ! お兄さん! ・・・って、もう入っちゃってるけど」
七夏「くすっ☆」
笹夜「もう・・・すみません、時崎さん」
時崎「全然構わないよ! ありがとう。高月さん」
廊下に居る高月さんを見ていると、なんとなく、この三人の関係が見えてきた気がする。
心桜「んー冷たくて気持ちいぃー!」
天美さんは、押し入れの中の布団に、両腕を突っ込んでいた。天美さんらしいな。
七夏「もう☆ ここちゃー!」
七夏ちゃんが少し困ったような笑みを浮かべる。
七夏「柚樹さん、すみません。今、お布団を用意しますね♪」
時崎「ありがとう。天美さんの部屋から準備しないの?」
七夏「ここちゃーの泊まるお部屋は、押し入れがありませんので、お布団はここに一緒なのです☆」
時崎「なるほど」
七夏ちゃんは、俺の部屋のお布団を準備してくれている。俺も押し入れからお布団を取り、そのまま天美さんの泊まる部屋に運ぶ。
心桜「お兄さん! ありがとう!」
天美さんは手に枕を持ったまま、扉を開けてくれた。
時崎「お邪魔します」
心桜「その辺に適当でいいから!」
時崎「ああ」
お布団を置いて、自室に戻る。
七夏ちゃんは、高月さんの泊まる部屋に居るようだ。部屋を見ると、お布団が敷かれている・・・もう見慣れた風景に思える。
まだ寝るには早いので、「七夏ちゃんのアルバム作り」を再開する。今日からは、高月さんもアルバムに参加する事になり、より賑やかになりそうだ。高月さんの虹は、現実と写真が一致しているみたいだ。写真に写っている高月さんの虹・・・七夏ちゃんには、どんな色に見えているのだろうか?
アルバムに写真を配置しながらも、その事が気になってしまう。今日一日、高月さんと一緒に居たけど、七夏ちゃんや天美さんは、高月さんの虹の事については一切話していなかった。既に知っている事だからかも知れないけど、七夏ちゃんと初対面の時のように、虹の事を何でも話すのは考えものだと思う。考え込むと、手が止まってしまう。再び、アルバム作りに集中する。
MyPadで、今日撮影した写真を、デジタルフォトアルバムに追加する。写真のレイアウト自体は簡単だが、普通に並べただけではセンスがない。どうすれば楽しそうに見えるだろうか。
四角い写真を並べるのではなく、色々な形にトリミングをしてみると、少し楽しそうに見えてきた。これに「ふきだし」を追加して・・・この時、七夏ちゃんが話していた言葉を・・・と、思ったけど、これは、七夏ちゃん達にお願いする方が良いかも知れない。俺の思っている事と、七夏ちゃんが思っていた事が同じとは限らないからだ。このフォトアルバムは、七夏ちゃんの思い出を主にしたい。
トリミングで、写真を円や星の形にするのは簡単だが、輪郭を綺麗に縁取るのは、中々骨が折れる作業になるので、とっておきの一枚で行おうと思っている。今の所、その一枚の候補は、七夏ちゃんお気に入りの場所、海と街が見渡せる丘で撮影した七夏ちゃん・・・。
・・・白いワンピースと大きな帽子がよく似合ってて、可愛いかった。七夏ちゃんの見ている虹が翠碧色の虹だという事を知ったのも、この時だった。この七夏ちゃんの写真を凪咲さんが見て、今のフォトアルバム作りに繋がっている訳か・・・。
さっきまで、天美さんの声(だと思う)が聞こえていたが、静かになっている・・・三人ともお休みしたのだろうか・・・。
しばらくの間、集中して「とっておきの七夏ちゃんの写真」をトリミングしていると、目が疲れてきたのか、なんだか眠たくなってきた。俺はそのまま机にうつぶせになり、目を閉じた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
時崎「ん・・・今、何時・・・かな?」
どのくらいの時間が経過したのだろうか・・・。MyPadの時計を見ようとするが、眩しくて時間がすぐに分からない・・・しばらくすると時刻の数字が認識できるようになってきた。
時崎「0時半過ぎ・・・か・・・ん?」
意識がはっきりしてくると、肩にお布団が掛けられている事に気付く・・・これは、きっと七夏ちゃんだろう。ちょっとうたた寝するつもりだったのだが、結構な時間寝ていた事になる・・・。今日は、このままお休みする事にしよう・・・俺は七夏ちゃんの心遣いに小さな声で「ありがとう」と、お礼を言い、楽しかった今日という日を閉じる事にした。
第十七幕 完
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次回予告
ふたつの虹が出逢った不思議な虹・・・それは、大切な存在となってゆくにつれて、少しずつ見え方も変わってゆくのだろうか?
次回、翠碧色の虹、第十八幕
「ふたつの虹へ重なる虹」
ふたつの虹が大切な存在へと色付くにつれ、ふたつの虹が認識する虹から目を逸らしている・・・このままでいいはずがないのだが・・・
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