22章 帰ってきたイレーザ

 新ソ連もついに降伏し、地球連邦は数十年ぶりに一つの国家に統一された。戦争が終わり、平和が訪れたのである。一は軍隊から退役し、政治家になっていた。一も銃の使用という罪を犯したが正当防衛と見なされ不問とされたのである。

 一はハルヒと結婚し、幸せな生活を送っていた。そんな平穏な日々が数年続いた。


「次の大統領選に出馬したいと思っている。大統領に僕はなる!」

「この若さで大統領になれたら地球連邦誕生以来の大統領最年少記録更新ね。」


 二人の生活は順調だった。しかし、その生活を脅かす影が迫っていた。イレーザである。そう、イレーザは死んでいなかったのである。身体はボロボロになり、危篤状態に陥っていたが応急処置が間に合い一命を取り留めていた。意識が無いまま数十ヶ月間生死の境をさまよったが、息子の看病のかいがあり奇跡的に生還した。意識を取り戻したイレーザはバイオテクノロジーでボロボロになった体を再生し、バイオロイドとして復活したのである。

 イレーザは自分の息子、カレクション・スターリンを引き連れ一に復讐しに来たのだ。


「これは戦争じゃない。個人的な恨みによる犯罪だ。彼の死に意味はないが、僕の心を満たすには十分だ。」

「お父様をこんな姿にしたバカに復讐するんだね!」


 イレーザの身体はバイオテクノロジーで再生したが完全には再生しきれず体中がボコボコに変形していた。

 イレーザは個人的な恨みを晴らすために一の家を襲撃した。


「なんだ!?」

「お前たちを殺しに来た。」

「イレーザ!生きていたのか!」

「お前のせいでこんな姿になった。僕がどれだけ苦しんだか!」

「君が殺した地球連邦軍や日本幕府軍、そして君が酷使した新ソ連軍たち。彼らの方がよっぽど苦しんだと思うが?」

「だまれ!!!」


 イレーザは一にエネルギー弾を放った。


「うおおおおお!!!」


 一はガードした。しかしダメージは大きかったようで一はよろめいた。


「バイオロイドとして蘇った僕のパワーはたいして落ちちゃ居ない。軍を退役してしばらく立つお前になら勝てるはずだ。」

「た…助けてくれ……!」

「なに!?」

「助けてくれ!!!」


 一は跪いて命乞いをした。

 イレーザは少々がっかりした。自分が殺したいと憎んでいた男はこんなにも小物だったのかと思うと腹立たしかった。


(しかし…これはチャンスだ!助けてやる振りをしながら殺せば確実に僕の勝ちだ…!)


「良いだろう。手をかしてやるぞ…。」


 そう言うと一の方に近づいて行った。そして次の瞬間!イレーザは手からエネルギー波を一に撃った!と、同時に一も手からエネルギー弾を放っていた!

 二人のエネルギー弾は相殺した!


「!?」

「!!」


 二人は今起きた事態に驚く。


「そうか。助ける振りをしてトドメを刺すつもりだったな。姑息な真似を!」

「どっちが!お前こそ命乞いする振りをしてだまし討ちするつもりだったんだろ?」

「確実に勝つためなら汚い手も正攻法なんじゃなかったか?」

「今度こそ仕留めてやる!はあああああああああ!!!!」

「させるか!があああああああああ!!!!!」


 二人はエネルギー弾を打ち合った。一が押し負けぶっ飛ばされた!


「やったね!お父様!所詮僕たちの敵ではなかったんだ!」

「ああ、これで長年の恨みも少しは晴れたよ……。」


 カーッ!!!


 イレーザの背後から光線が胸を貫いた。


「くそ…!やられた振りだったのか…。」

「やられた振りをしておけば、油断して確実にトドメを刺せると思ってね。」

「しみったれが…。」


 そう言い残しイレーザは絶命した。


「今度こそ本当に死んだか…。」

「ひいいいいいいいいい!!!」


 カレクションは悲鳴を上げた。


「許してくれええ!!!僕はひ弱で格闘は一切できないんだよ!エネルギー波も気弾もうてないんだよおおお!!!」

「知っている。実は君たちが来ることは直前に感知していた。イレーザに似た小さいパワーは君だったのだな。」

「そうなんだ……!見逃してくれ!」

「殺しはしないさ。だが、見逃すわけにはいかない。」


 一は警察に通報し、カレクションは警察に連行されていった。


「政治家にとって最も怖いのはテロと暗殺だ。」

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