いのちのほん

私たちは生まれた時に一冊の本を貰う。

厚さも重さも十人十色。

文字も色も一つとして同じものはない。


本を貰った私たちはまずページを一つめくる。

全てはここから始まるけれど誰にでも出来ることじゃない。


周囲の期待に応えられず

どれだけ頑張っても開けない人

理不尽に無責任に一方的に

本を無理やり奪われた人


彼らを差し置き私たちは本を開いた。

あとはひたすらこの本を読み進めていくだけ。

読み飛ばさないように一ページずつ。

読み間違えないように一文字ずつ。


読みたくても読めない人を

シミで所々飛ばして読む人を

本が壊れて破けてしまった人を

けなすのでもなく憐れむのでもなく

自分の本をただ読み進める。


そして最後に本を閉じる。

それがあとがきなのか序章なのかはさておくとして

その物語の読み手を降りる。


私たちは本を開き、読み進め、そして本を閉じる。

出来ることはたったのこれだけ。


あなたは今、どこを開いていますか?

あなたはいつ、本を閉じますか?

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