悪しき秘め事が欲しいのか!?
さし
プロローグ
人は誰しも願い事を持っていて、皆が皆至極当然にそれを叶えたいのだろう。
小さな物ではあの服が欲しいなんかから大きな物だと世界平和まで、それは様々で人それぞれだ。まぁ、その大小を決める物差しを俺が持っているわけではないし、きっとそんなものは存在しないだろうからとやかく言うつもりはない。言っても仕方ないし。
そして、そんな願望の実現の為、人は行動する。
稼ぎのいい職に就きたい! と若い頃から勉学に励んだり、スポーツの世界で頂点に立ちたい! と日夜練習に励んだり、目標に向かって邁進する人間がいて、そして願いが叶った暁には、それまでの努力を賞賛される。
望みを現実のものとして、尚且つその過程すら称えられるのだから一粒で二度美味しい。
とは言いつつ、往々にして願いは叶えられることが無いのも事実。だからこそ、それは『願い』なんて不確定的な呼ばれ方をするのだろう。
達成困難な願いはやはり、成し遂げた時の喜びひとしおで鳴り響く拍手も大きな物になる。
願望の大小を図るとすれば、その困難さ……つまり賞賛の声こそが最もしっくりくる、目に見える指標と言えなくも無い。目標が人々に喜ばれるものと仮定した場合にはの話だが。
例外として、難しいとか言う以前に叶える事が出来ない願いもある。現実的に、物理的に、論理的に不可能な願いもまた、そうじゃない願いと同じくらいこの世に浮遊しているのだ。
……じゃあもしも、『どんな願いでも』叶えてあげると言われたらどうする?
『あ、自分その努力の過程を大切にしたいんで結構っす!』
なんて殊勝な人間は人間ももしかしたら百人に一人くらいはいるかもしれない。
でも、願いは一人に一つじゃあない。努力を楽しみたい目標の他にも願いは必ずある。
殊勝な人物でもきっと、そんな別の願いを叶えてくれと言うだろう。
つまりは大体の人間は喜んで欲望を吐露するだろうってこと。その願いの大きさや、そいつの中での順位は置いておいて、どうせならひとつくらい願いを叶えて欲しいだろうからな。
そうじゃないならそいつはとんだ変わり者だ。
願いを叶えなくて良いなんて、そんな奴を俺は今まで見た事がない。
俺に叶えられない願いはない。大袈裟ではなくて、『どんな願い』でも叶えることが出来る。
だって俺は人間ではないのだから。悪魔なのだから。叶える事ができないなんて、人間のちっぽけな世界観での制約に過ぎないのだから。
これまで何度か人間の欲望を叶えてはきたけれど、皆よだれを垂らし恥ずかしげも無く俺の力で欲求を満たしてきた。
巨万の富、名声、才能、不安から逃れる術まで、全てを与えてきた。
たった一人の少女を除いては。
その偏屈な少女のせいで俺は今、とてもとても煩わしい状況にいるのだ。
俺の願い?
そんなの今の所ひとつだけだよ。
その少女の願いを叶える事、ただそれだけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます