第56話

 セロは、複雑な気持ちになった。

 別にヒーローになりたかったわけじゃない。

 でも、足場になるのはなんか嫌だ。

 そんな気持ちだった。


「さて、君たちも投げてね!」


 担任は、そういってクラスメイトに指示を出す。

 クラスメイトたちは、次々と砲丸を投げた。

 結局セロは、下から3番めだった。

 一番低かったのは、詩空 丹歌。

 彼が投げた砲丸は真下に落ち地面に穴を開けた。

 にも関わらず、数値は4万。


「丹歌くんは、サポートタイプのようね。

 でも、諦めないで貴方も立派なヒーローになれるから」


 担任は優しく微笑んだ。


「……」


 十三が静かに丹歌の方を見る。


「どうかしたのか?」


 百道が十三に尋ねる。


「なんでもない」


 十三は、そういって空を見上げる。

 それはどこまでも青く……

 どこまでも広かった。


 十三は一番数値が高かった生徒の方に視線を移す。

 その生徒の名前は、初風 夏樹。

 数値は、1000万を超えていた。


「今日の調子は悪いようだ」


 夏樹は、そういってつぶやいた。


「……夏樹は凄いね」


「ホントに凄いよ」


 愛媛というなの女の子がそういって栃木が小さく頷いた。


「んー調子が良ければ2000万は超えれる気がする」


 夏樹は苦笑いを浮かべた。

 そして、ふと十三と目が合う。


「ん?」


 十三が声を漏らす。


「君が百道くんだよね」


「うん」


 十三がうなずく。


「登兄さんを助けてくれてありがとう」


「ああん?」


 百道が夏樹の方を睨む。


「あー、コード893のことかな?」


 十三が小さく笑う。


「コード893?

 登さんって、アインに捕まっていた人だよな?」


「そうそう」


 夏樹が笑う。


「って、さっき兄さんって言ったよな?

 お前、登さんの弟か?でも苗字が……」


「うん。

 兄弟のサカヅキを交わしたよ。

 コーラーでだけど」


「じゃ、お前も893なのか?」


「そうだよ。

 僕の名前は、初風 夏樹」


 夏樹は自己紹介し栃木と愛媛も挨拶をした。

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