第578話 第二の門番.6

木の間から覗き見る。



「……やっぱり無傷か」



アレックスの攻撃でなんとか倒されていれほしいと願ったが、あれも虫の形ではあるが、やはり悪魔の類い。

そう易々と倒されてはくれないようだ。






ヤンの働きで、目的の巣は容易く見つけることができた。


後ろでグスグスと泣いてる双子を慰めようと振り替えると、何時の間にか猫程はある蜥蜴が慰めていたのだ。新手かと一斉に武器を構えた時に、ラビが慌てて割って入り色々説明してくれた。


ウコヨとサコネの残された使い魔で、仲間である。と。


景色に溶け込める魔物。仲間だとこの能力はなかなかに便利であった。


ヤンが偵察を申し出たのは驚いた。

隠れてはいたものの、身近であの蜘蛛達の驚異は目の当たりにしたはずだ。だが。


出ていったヤンを見ながらウコヨ。「ヤン、昆虫を食べる、きっと蜘蛛の巣を見付けるのも早いよ」と。


ウコヨの言う通り、あっさり発見できた。

時計回りで木が螺旋状に生えてる、その中心部に広大な巣が張られていたらしい。


蜘蛛はこちらを完全に見失っていた。


というのも、魔力を消すって広範囲に渡りミントを作り出したお陰で嗅覚が潰されたらしい。

おまけにミントはじわじわと生息地を広げていっているとか。


確かにミントやハーブは繁殖力が強く、ミントテロなんかに使われるくらい爆発的に広がっていくが、だがこんなにも短時間で広がるものかなと思いつつニックを見れば、ニヤニヤとしていた。


どうやら種も仕掛けもあり、上手く作用した様子。

道理で魔力が枯渇寸前になるはずだ。


『話し、続けても?』


「どうぞ」


その中心部に建物がある。


まるで鳥居を4つくっ付けて、長方形の建物のようだ。

そのうちのひとつには入ってきたときと同じ扉があるらしい。


だが。



その目の前にはかなり大きな障害が待ち受けていた。








あれだけの炎を受けたのにも関わらず、アラクネ・トスは焦げた様子も傷を負った様子もない。


「………、わりとショックなんだぞ…」


蜘蛛の頑丈さに意気消沈のアレックス。


「わかるわー…」


『うんうん』


それに同意するオレとネコ。


割りとアレックスはあの銃一発で敵を半壊させていたからな。


「…てか、大丈夫なのか? 顔色悪いけど、さっきほどじゃないみたいだけど」


何気にラビが気遣ってくれてる。

嬉しいわ。


「ここまで離れてるからまだ平静さを保てるけど、もうちょい距離積めたらアウトゾーン」


「そういうもんか?」


「そういうもんだよ…」


だけど、現に足が鉛のように重く、視認した瞬間に体が少し硬直し掛けている。

さっき蜘蛛を死ぬほど見たじゃないかとニックに言われたが、たくさん見れば慣れるのならお前さっきのゴキブリもう平気なんだよな?と問い掛けたい。


ノルベルトを見る。


腕は既に二の腕が動かなくなっており、表面には無数の蜘蛛の巣の模様が浮き上がってきていた。


(本当は、こんな作戦大反対だ…)


ノルベルトは、きっとこの先戦闘で役に立たなくなる。だから囮として置いていけというものだった。


本気で口喧嘩になったが。


冷静に冷静に、こいつほんとにノルベルトか?って思わず疑ってしまったほど冷静沈着に諭され理論詰めで説得させられた。


が。


無言でレーニォとガルネットにぶん殴られていた。


だが、決意は固く、絶対に折れなかった。


「こいつ、ガンガン頑固だからなぁ」


と、呆れ顔でガルネットが言う程だ。


オレも勿論納得してない。だけど、最悪なパターンとして残してあるだけだ。


キリコがじっと蜘蛛を観察している。


「…二、三本はなんとかいきたい…」


「?」


なんの話だ?


「行くぞ」


ノルベルトが立ち上がる。

作戦決行だ。

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