第507話 決戦前.5

「ユイさん!!」


お久しぶりです!!と、握手を交わす。

雪焼けか、肌が大分焼け、あちこちに傷が治った痕が残っていた。


「君も元気そうだ。そこのが、話に聞いていた君の使い魔のネコ君かな?はじめまして」


『え!ネコの事知ってるの?初めまして!!』


すぐさまネコも握手をしようと前足を伸ばす。

それを見て、ユイは微笑ましい物を見たという風な笑顔で、ネコの前肢を優しく掴んで握手をした。


「喋る獣は知ってるが、ネコはことさら可愛いな。後で撫でても?」


「勿論!」

『もちろん!』


あらかじめユイにネコの話をしていた。良かった、ユイともネコは仲良くなれそうだ。


そして。




「お久しぶりです、ライハ様」


「スイさん」




ユイ同様、あの時に別れてからしばらく消息を経っていたらしいスイ。

最近まで何処かに拘束されていたと聞いていたが。



「様付けはやめてください。そんな柄じゃないです」



苦笑しながら言えば、申し訳なさげに眉を下げた。

最後見たときよりも痩せてしまっていた。


「じゃあ、どうしようか…。……ライハ…くん?とか」


「あ、じゃあそれで」


『こっちもよろしくー』


「ああ、よろしく」


ナチュラルにネコ握手。



「ちょっとちょっと、地味にスルーは悲しいんだけど」



と、間に割って入って、スイの代わりに見知らぬ男がネコ握手。

戸惑うネコ。


忘れてた。



「えーと、じゃあ各々自己紹介は後にするとして、まずは!俺を紹介させて!!初めまして!! 俺はアンノーン。アンノーン・パーソンと申します。言いにくかったら別にナナシとかでも良いんだけど、ナナハチ君と被ってる気がするので気軽にアンノーン、もしくはパーソンと呼んでくれると嬉しいな!」


テンション高いな。


「こんなんでも、フリーダンとは同業者でね。観測者オブザーバーって仕事をやってます」


ざわめく。

特にニックが驚きすぎてこっちにやって来た。


「……証拠は?前に教えられた話だと、管理人と同様、一世界に一人だと聞いた。二人目がいるなんて話は知らない」


「ん?ああ、そーか、連絡がまだ行ってなかったか。ふむ、じゃあ」



アンノーンがオレ達を見回す。



「元観測者、ユエから出された作戦と、この世界の状況を教えてあげよう。そうだ、多分、そこの勇者も知らない事もあるからな」



オレが知らないこと?

少し考えて、神のメール全部見てない事を思い出した。


いや、見ようとしていたんだけど、最近スマホ見てなさすぎて件数がヤバいのと、長時間見てると目が痛くて。


……はい、言い訳です。



「では、宿にご案内します。こちらへ」


「お!よろしく頼む!」



呆気に取られていたシラギクが我に返り、アンノーンを案内する。こういうときに、シラギクは心強い。


「ごめんなぁ、今の俺の上司なんだが、目茶苦茶で。でも強いから安心してくれ」


「そうなんですか」


目茶苦茶と良いながらも、何処かユイは楽しそうな顔だった。


「ほら、行くよ」


ポンとカリアが肩を軽く叩いていく。


「行きましょう」

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