第353話 剣を奮え.2

見えてきた街から黒煙が上がってた。

風が血生臭い匂いを運んできており、微かに悲鳴を聞き取った。街の門は開いており、そこからたくさんの人が逃げ出している。


「きゃあ!!」


門から赤子を抱いた女性が飛び出してきたが、その女性の髪を掴む腕があった。しかし、その腕の持ち主は人間ではない。その証拠に額からは真っ黒な角が伸びていた。


「ライハ!!ガルネット!!」


「了解!!腕を頼む!!」


「任せろ!!」


矢を番え、射つ。矢はまっすぐに飛び、悪魔の額を貫いた。それと同時にガルネットの矢が悪魔の腕を貫いて、握っていた女性の髪を離した。


『ガアアアア!!!』


「!」


カラスに似た鳴き声に上を向けば、街の方から変に発光する鳥がこちらに向かって突進してきていた。


鳥の上には悪魔がいて、こちらに向かって槍のようなものを構えている。アレックスが素早く銃を構え、撃つ。


すんでで気付いた鳥が回避して当たらなかったが、それはあちらも同じで、投げた槍のようなものが明後日の方向へすっ飛んでいった。鳥と悪魔の連携はとれていない。アレックスはチャンスだと更に鳥目掛けて撃ち続ける。


街から同じ鳥が二羽上がって来るのを見てアレックスとニックが駿馬を止める。


「先に行け!すぐ追い付く!」


「わかった!」


二人を置いて街へと駆け込む。

街の中は正に地獄絵図で、逃げ惑う人々を追い掛け惨殺に殺し貪り喰う悪魔で満ちていた。


『新しい餌がのこのこやって来たぜえええ!!!!』


悪魔が襲いかかってくる。

手にはナタ。しかし、その鉈が振られるよりも前にノルベルトが駿馬から飛び上がり、切り捨てた。

悪魔は再生しない。


「?」


「おい!散るぞ!!何人いるか知らねーが、さっさとやっつけていかねーと、みんな死ぬ!!」


「わかった!ラビ行こう!!」


「お、おう!」


振り替えると声が上がった箇所には誰もいない。光彩魔法早すぎやしませんかねぇ。


『暴れていいの?』


「いいよ。出来るだけ多く無効化してくれ」


『いよっしゃああああ!!!』


フードから飛び出し巨大化する。今はもう乗れるんじゃないかと思うほどのネコが目を爛々とさせて走り出す。ネコに続き、街の奥の方に進んでいきながら通りすがりに悪魔を斬っていく。


襲われている一般人を救出し、怪我をしていればラビがニックとオレが教えた盾の魔方陣に引きこもり手当てをして、出口を教える。


魔力操作を覚えたからか、ネコの体の動きが前にも増して俊敏になった。オレの方も最近になってようやく魔法を注意しながら使うことを許可されたが、今のところ鏃に雷を乗せる事くらいしかやっていない。


それでも制御が外れてしまったので、それだけでも大型の魔物を十分即死させる程の量ではあるのだが。


『なんか今までの悪魔とちがくない?随分弱いって言うか』


ネコが殆ど一撃で葬っているのを見ながら、オレも同じことを考えていた。


今までの悪魔はとても強くて、何度も何度も殺され掛けた。


それなのに今いるこいつらは角があるが、悪魔とは別の種族のようにも思えてくるほど、弱い。油断をしてはならないが、なんと言うか危ない刃物を振り回すチンピラに見えて来ている。


魔法らしい魔法も放っている様子も見られず、攻撃は基本怪力で振り回す武器によるものが多い。


「これは誰か捕まえて尋問でもーー」


『ライハ後ろ!!!』


「!」


振り返り、後ろから斧が回転しながら飛んできていた。


盾の魔方陣を纏った腕で斧を払い除けると、ぶつかった衝撃も合わさってぶっ飛び近くの壁に根元近くまでめり込んだ。


『おお?なんだ人間、やるじゃねーか。ヘーシとかじゃねーな。なんだか知らんが面白い、殺らせろ』


ズズンと棍棒が地面にヒビを入れる。

他の悪魔とは違う雰囲気、角は三本。体格も良い。


灰馬を降りて、黒剣を抜いた。


こいつなら情報を持っているかもな。

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