第349話 魔力操作.6
「くそー…」
黒い球体を眺めながらベッドに寝転がる。
皆はそれぞれ出掛けてしまった。
ガルネットはギルドと共同経営の虎梟の郵便局へ。
ノルベルトは鍛冶屋へ。
アレックスはギルドと知人の元へ。
ニックは道具屋。
ネコはピートンと屋根の上で遊んでいる。
こいつは10回で中の構造が変わる仕組みになっている。同じパターンは無く、せっかく覚えても、10回終えたら道がリセットされるのだ。そのせいで攻略速度が遅れているのもあるけど。
「集中しろって言われてもね、してるんだよ」
頑張ってる。
でも、コツがつかめない。
今のところ頑張れているのは、魔力の靄を糸として濃くさせ、その外側にあるボヤッとしたところで嫌なところを回避している。つまり、ネコのを参考にした。
そのおかげで、魔力を纏っていると、そのボヤッとしたところが空気の動きや魔力の動きを敏感に感じ取れるようになったが、何の役に立つのか分からない。
強いていれば、近くにいる人がどんな動きをしているのか目をつぶってもわかる程度。
特に、使い道はない。
ぶっちゃけ暗闇でも見えるから、洞窟内ならホヅキあるし。
「あ"あーーー~~~~」
野球ボールみたいに全力で投げたい。
投げ出したい。
けどできないのは負けず嫌いのせいだよコンチクショウ。
「…………もういっそのこと目をつぶってやってみるか」
どうせ目を開いてても視覚は当てにならないのなら、魔力の感覚に費やしてみるか。音楽を聞くとき目をつぶると耳に集中するから、より良く聞けるとかなんとか、聞いたことあるしな。
「うし…」
球を両手で包んで胸元において目を瞑る。
掌から魔力が滲み出て、綿から糸を紡ぐように魔力を捻りながら纏めていく。それを穴の中に入れる。
ここまではいつも通り。ただ、そこからが問題だ。今はちょうど10回目で、道がリセットされている。
糸に集中し、辺りの様子を感じ取りながら奥へ奥へと進んでいく。目を瞑っているからだろうか、不思議な感覚になっていった。脳内に筒状の通路があり、そこをホヅキで照らして洞窟を進む。見えるのはホヅキで照らされた範囲と、通ってきた道のみ。そこを右へ左へとグネグネ進んでいく。もはやどこが上で下なのかも分からないほど。
何処へ向かっているのか。
分からないけど続く限り進んでいく。そして、とうとう目的地の光がーー
『ライハー、起きなよ。ご飯だよ!』
「……あれ」
部屋が真っ暗だった。
窓を見ると夜になっていて、目を瞑りながら練習している最中で本当に寝てしまったらしい。
「あぁぁ…、時間を無駄にしてしまった…」
『凄い寝てたよ。アレックスも見せたいものがあったらしいけど、あまりにも寝てたから起こすの可哀想って遠慮してたよ』
「それは悪いことをした」
後で謝らねば。
『先に食堂行ってるよー』
「分かった、すぐいく」
ネコが半分ドアを開けて去っていく。
手に持った球を見る。なんとなく魔力を紡いでもう一度挑戦してみた。
スルリ。
「……え?」
数秒もしないうちに反対側の穴から魔力の糸が出てきた。
「!!!?」
あれ出来た!?
反対側の方からやってみても結果は同じ。
球を机において、指先に集中して糸状の魔力を操ってみると、今までの苦労が嘘みたいに自由に動かせるようになっていた。
「レベル上がったわ」
なんで出来るようになったのか分からないけど、オレは暗い部屋のなかで全力でガッツポーズをしたのだった。
夜。
夕飯を食べ終え、オレはニックと一緒に光印矢で街の外に出た。見張りに見付からずに行けたのは、意識逸らしの魔法(強力)を矢に施したから。
「ここらでいいか」
しばらく行ったところでニックが辺りを見回しながら杖に魔力を籠める。
「結界張るから動くなよ」
ニックが杖を地面にトンと突くと、そこから波紋が広がり、次いで広がった波紋には時計の指針。最後に見たことの無い魔方陣が広がると、静かに消えていった。
「これで日が変わるまでは此処で何してようが気にされない。さて、魔力操作が出来るようになった時、何が出来るようになるのかを見せる前に少しだけ、ギリスの魔法と普通の魔法の違いについて話そう」
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