第267話 素材を集めよ!.20

一通り森のなかを身を隠しながら巡ってみると、壁が消えたことで隠れていたハンター達が木の上や繁み、木の虚の中から姿を現し、辺りを警戒しつつも森から外へと歩いている姿が見られるようになった。

良かった、みんながみんな食われたわけではないらしい。それでも怪我をしているのはちらほらいて、自分で処置をしていたり、我慢をしている人も。ただ、あまりな大ケガな人はいなくて、その代わり骨や半分腐った遺体が転がっていた。


恐らく、大ケガした人は逃げ切れずそのまま餌になったのだろう。


奥の方に行くと、何やら地面が抉れてて、更に行くと大穴が空いている所があった。まさか穴を掘って脱出した奴がいるのか。


「ハンターっていっても本当にいろんな奴がいるな」


更に時間が経ち、ハンターと同じく隠れていた獣や小さい魔物なんかも出てきて、ようやく驚異は去ったという空気が森全体に流れ始める。


それ以外は特に異常もなく、オレも帰ることにした。


村に帰ると、既にカリアが村長に報告を終えていて、服に血がべったりなアウソとキリコ、そしてネコがつまらなさそうな顔をして待っていた。


マニラ達は無事サンソンと再会したらしく、現在サンソンは先程のドットルと同じ表情をしているところだろう。


「アタシも戦いたかった」


頬を膨らますキリコ。

ここのところちゃんと戦えず不満が溜まっているご様子。そういえば、防護服といい、最近のキリコはついていない。それを察してか、カリアが。


「山之都ではキリコに譲るから」


と慰めていた。

魔物をストレス発散に使うのはどうかとも思うが、バトルジャンキーは常に戦いを求める傾向があるらしいので仕方ないと言えよう。


「あーあ、お前の服ベトベト」


「な、洗って落ちるかな、これ……」


血糊は落ちにくい。その為ハンターは出来るだけ血が洗い落とせる用の服を着るのだが、それでも落ちるか怪しい位の血の量だった。よく出血多量で死ななかったものだ。


「てか、戦った方が血がついてなくて、戦ってない方がベタベタって面白いな。普通逆だよな」


「だよね。てか最近あんまり怪我しないからなぁ」


悪魔戦以外は。

あれはどうしても無理。攻撃を受け止めてもきっと怪我する。


「とりあえずコレをもって帰らないといけないから、着替えて。さすがにそのままだと色々引かれるから」


二人が着替え終え、灰馬を迎えに行くと、鼻をフンフン鳴らしてテンションを上げていた。凄いなお前。何か察知したのか。


カリアが魔物を落ちないように駿馬へ縛り付けてから、出発した。


「なんか散歩いって、救出して、帰ってる気分ね」


「あながち間違ってはないさ」


「そして明日はキリコさんの素材集めですよ。わんさか採りましょうよ」


「少しやる気戻った」


「現金な奴よ」


カリアが笑う。


「コレを鑑定して売れたら、依頼達成金も合わせて少しは贅沢出来るね。酒でも飲む?」


「お酒は素材集め終わってからにしましょう。そっちの方が一仕事終えた感じで楽しく飲めますよ!」


「そうね、そっちにしよう!」


景色がオレンジに染まるのを眺めながら、サンゲン街まで灰馬を飛ばすのだった。














ギルドに着き、中に入ると一斉に悲鳴が上がり、それと同時に椅子から転がり落ちたり、壁際に逃げたり、顔を全力で背けて骨からヤバイ音が鳴った者が続出した。

一言で言うなら、阿鼻叫喚。


一瞬なんだ?と思ったが、襲ってきたコイツらを全力で脅したのを思い出した。


忘れてた。


「……あんたどんな脅し方したの?」


キリコが呆れたように言う。


「…ちょっと気配の押さえ込みを解除してみました」


「ああ、そりゃ可哀想に」


「そんな怖いか?」


アウソがそう言うと、カリアが冷静に。


「あいつらにすれば、、初めて悪魔と遭遇したようなもんだからね」


「それは怖いさ」


レエーを思い出す。あの威圧は怖かったな。

そう思うと、目の前の人達に悪いことしたな、と思うが、そもそもそうさせたのが悪いと思い直したのでオレは謝らない。


それよりもこれで今後の新人の扱いが改善すれば良いなと思う。


カリアが背負っていた袋を受付に置く。


「これが、今回のタキオトシの森の原因です。ただ、見たことのない魔物なので、全部持ってきました」


「はい、分かりました。あの、ちょっと拝見しますね」


袋を受付嬢が少し捲り、むわっと血の臭いがギルド内に広がる。やっぱり首を落とすと臭いが凄いな。受付嬢はそっと袋を閉じた。


「私も見たことのないものなので、ギルド長呼んできますね」


受付嬢は奥にいるらしいギルド長、スコットを呼ぶ。すると、すぐさまスコットはやって来て、ギルド内に充満する血の臭いに、うっとなったが、気を取り直して袋を開き中の魔物を見る。しかし、見たことのないものだったのか、一旦奥に戻り、今度は分厚い書物付きで戻ってきた。


とても古い本だ。


「…………第二次人魔大戦時に良く見られたニコンという魔物に似ていますね。模様や、飾りは違いますが。姿を消したりとかはしましたか?」


「消しましたね」


「じゃあそれに間違いないですね。しかし、まさかそんな昔のがまた出てくるなんて……」


亀裂か。

と、オレ達四人の頭の中の言葉が一致した。


「とりあえず、鑑定いたしますので、椅子に腰掛けてお待ちください」

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