第四章 何を見るか

第247話 オレにとっては通り魔

遥か上空を大きな鳥のような物が飛んでいる。天気は何とも不気味な空で、今すぐにでも嵐が来そうな空模様だった。


「あり?」


突然視界が赤く染まって、何だろうと目を擦るとぬるりとした感触。手を見れば見慣れた赤で汚れていた。

自分の血なのか、返り血なのか。


辺りを見渡せばただただ地獄の光景で、赤黒いものが地面を埋めつくし異臭を放っている。


そんな大地に、一人、立っていた。


何でこうなったのか分からないが、手に握る剣は赤く濡れていた。知らない剣だ。


剣を捨て、ふと、後ろを振り返り、オレは驚きに目を見開いた。





「ーーーーー。どうして…」





そこには、オレのよく知る人が、オレを庇うようにして血塗れで立っていた。


















というよくわからない夢を見て目が覚めた。

おはようございます。


凄く胸くそ悪い。


なんだ、あの夢は、気持ち悪い。


とっても良い朝日なのに、朝っぱらから気分は駄々下がりだ。


「……散歩でもしてこようかな」


幸いにも皆まだ寝ているし。


「ネコ、ネコ、ちょっと起きて」


『んー……?』


「ちょっと散歩いってくる」


尻尾で目を擦りアクビを一つ。


『ネコもいく』


「え、いいよ寝てて」


『行く!どうせまた変なことに巻き込まれるかもしれないし』


「お前の中のオレの評価はそんななのか…」


まぁいいか。最近ネコ置いてばっかだったしな。


「わかった。じゃあ行こうか」


机に置き書きを残して、いざ出発。












音楽の国、ウォーロー。その中でも東にある街サンゲンは様々な職人で溢れている。といっても大概が楽器類だが。


「おーい!そこのお兄さん!音撃器オンゲッキ買っていかんか!?安くしておくよ!」

「それよりも弦癒ゲンユにしときなよ!下手な回復魔具よりも効くよ!」


といっても、売ってるのは魔法効果のある楽器類だけど。


何でも昔、楽器を杖がわりにして戦う吟遊詩人が居て、その見事な音楽と戦いっぷりに惚れた職人が何年も追い掛けて弟子入りを志願し、その技術を学んで広めたのが始まりだとか。


といっても一般的効果はそこそこ。それでも魔力がなくても魔法が使え、なおかつ美しい音色を放つからと大人気だそうだ。

ちなみにルキオにも太鼓型の音撃器が輸出されていて、海龍用の武器の一つにまでなってる。

空気の大砲みたいなので一瞬怯ませられるから便利なんだと。

勝つためなら何でもするな。


次の裂目がある国、山之都へ向かう途中で立ち寄った国だが、ここの野菜が物凄く美味い。


生でも普通に美味い。


「スナック菓子でも十分な美味さ」


と、朝割りで安売りしていたキュウリのスティクをかじりながら歩く。味付けは塩だけど、全然おーけー。


『ネコは肉食べたい』


「一口じゃがいもじゃ駄目?」


『だめー』


ただ、惜しむらくは。


「さぁさぁ!聴いてごらんなさい!この音色を!一つ鳴らせば苦痛が消え、二つ鳴らせば疲労が消え、三つ鳴らせば元気湧く!!」


ボロロンと耳心地の良い音が聞こえ、オレの体力が少し削れた。

耳塞ぐの遅かった……。


『何回目?』


「五回目」


神聖属性付加の音を聞くと、否応なしに体力が削られる事かな。すべての楽器に付いている訳じゃないので、完全に不意討ち。防げない。


きっと、今朝の夢見が悪かったのもこれのせいだ。


カリア達はこれのお陰でスヤスヤと安眠だろうけど。

お昼にはここを発つから文句は言わない。


「そろそろ帰ろうか」


『うん。朝御飯が待ってる!』

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