第161話 迷宮へようこそ~蟻地獄~
ネコマフラー再びかと思ったら、ネコは普通に小さくなってフードの中に収まった。形を変える修行飽きたのかな?
「結構深いんですね、オレ迷宮って全部横穴から入るのかと思ってました」
「一般的のはね、でもこういう縦穴のもそれなりにあるわ」
キリコがとても楽しそうに見える。
それに対してアウソは。
「俺迷って出てこられないんじゃないか?大丈夫か?」
と、自身の軽い方向音痴を心配していた。
大丈夫だ。
多分オレとお前大差無いから。
迷ったら最後だと思う。
環の大きい鎖に爪先を引っ掛け、縄を確り握りながら降りていく。下は見ない。
絶対見ない。
見たらきっと動けなくなる。
「そろそろ着くよー」
下からカリアの声。
ようやく地面へ辿り着くらしい。
順に地面に降り立ち、見渡すと、更なる縦穴が隠れたところに。
また降りるのか。
今度は縄が無いので、少しずつ飛び降りていく。そうして30分位掛けて降りるとようやくちゃんとした地面に辿り着いた。
「何て言うか。迷宮って明るいんですね」
「そうね、迷宮って何故か光草がよく生えているから明るいって表現は当たっているわね」
「惑いの洞窟とはまた違うな」
「あそこは特別。精霊の住処になってるんよ」
「へー」
洞窟の岩壁から、アスファルト突き破って生えてきた様な雑草が淡いオレンジ色の光を放っている。
『あれさ、食べれるよ』
「何が?」
『草』
「え、食べれるのアレ」
思わず凝視。
食べれるんだとしても正直食欲沸かない。
「それは知らんかったよ」
カリアでさえ知らない。
ていうか、光ってる草を食べようとか普通は思わない。
でも一応知識として特徴を覚えておくことにした。
しばらく歩いていると、不思議な生物に出会った。
「ナメクジ……にしてはやけに長い」
蛇ほどの長さを持つナメクジの体の中に宝石がたくさん埋まってる。
「いきなり稀少生物よ。塩ちょうだい」
「はいどうぞ」
カリアがナメクジ蛇に塩を振り掛けるとみるみる縮んでいく。
やっぱりナメクジか。
そして縮んでいく最中、体の中にあった宝石が転がり落ちていく。それをカリアとキリコが拾い集めた。
「何してるの早く拾いなさい」
「あ、はい」
キラキラと輝く宝石を四人がかりで集め終えると、普通のナメクジになったナメクジ蛇に水を掛けてやった。
「これで元に戻るよ」
「……なんかごめん」
何となくこっちの都合で縮めたり戻したりしたナメクジ蛇に謝った。
その後、順調に迷宮内を進んでいき、現れた
「!?」
事件が起こった。
目の前の地面がボコンと盛り上がり、まるで砂で出来たかのような変な生き物が現れた。サメの顔に鳥の牙付きの嘴。胸ビレは翼の変な奴だ。
しかし、それを見て、カリアとキリコの顔色が変わった。
「ヴィーゥだ!!!走れ!!!」
カリアとキリコが元来た道へと走り出した。
何がどうなっているのか分からないが、急いでそれに続こうとしたとき、ヴィーゥと呼ばれたそいつは大きく嘴を開けた。
『ガァアアアアァァアアァアァアーーッッ!!!!』
「!!」
鼓膜が破れそうな程の音量でヴィーゥが鳴き声をあげる。酷い声だ。砂嵐を音量最大で流されているかの様だ。
岩壁に音が反響して頭が揺さぶられる感覚に陥る。平衡感覚がイカれたのか、足元がグニャリとへこんだ。
「いっ!?」
しかし、そうではなかった。
実際、足元はへこんでいた。
今まで岩だった地面が砂へと変わり、その中へ引きずり込まれている。
抜け出そうともがくが、体が酷く重くて思い通りに動かない。
「手を繋げっ!!」
カリアが必死に手を伸ばしていたが、オレがその手を取る前に体は砂の中へと沈んだ。
気が付くと、全く知らない所に横たわっていた。体の周りにある砂が先程あった出来事を現実として証明していた。
「いてて、うわー、ないわー」
蟻地獄とか、卑怯だろ。
あんなの誰でも逃げられないわ。
「ネコ、大丈夫か?…………、ネコ?」
返事が無いのでフードをまさぐると、そこには砂しか入ってなかった。
ザァッと血の気が引いた。
急いで起きて服の中や荷物の中を探すが見付からない。ついでに言えば誰も居なかった。
「うそだろ……」
オレ、迷宮内で迷子になりました。
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