第144話 到着
前方に陸が見えてきた。あれが華宝国か。
「…?」
目を凝らしてみると陸地の奥にある乱立した塔の様なものが気になった。なんだろう。
「あれは奏剣山(ソウケンザン)よ」
真剣に陸地を見ていたオレに気付いたカリアが説明をしてくれた。奏剣山は風が強い日に何故か音が鳴り、見た目が大地から突き出た剣先に見てることからこの名前がついたらしい。
「確かに剣に見える」
「あそこは絶好の修行場所なんよ」
「!?」
まさかあそこに修行に行かされるんじゃないだろうな。
オレの心中を察してか、カリアがニヤリと笑った。
陸が近付くにつれて船が揺れ始めた。
しかし、レベルアップしたオレにはもう効かない。
実は昨日、揺れまくる中平気で歩き回る船員を捕まえ、コツを教えてもらったのだ。
膝を軽く曲げ、重心を低く落とす。そして揺れに合わせて体重を乗せる方向を調整していくのだ。するとあら不思議、あんなに千鳥足だったのに、今では少しふらつく人にまで成長した。
もう一日早く質問していればと思ったが、こればかりは仕方がない。次の機会に生かすとしよう。
船がゆっくりと華宝の港に入っていく。
アジアンチックな港町に見入っていると、誰かが肩をトントン。振り替えるとキリコだった。
「そろそろ着くわよ、準備しないと」
「はーい」
到着すると人の渋滞が起こりやすい。
部屋に戻って荷物を纏めた。特に散らかした訳ではないが、何となく最初の状態に出来るだけ戻そうと思って軽く掃除もしておいた。
その間、ネコは普通猫サイズでオレのフードの中にスタンバイ完了。
最近、こいつは楽したい時は普通猫サイズ、動き回りたい時は大型猫サイズに変えるようにしているらしい。ずっと大きいままの方が魔力消費しないじゃんとネコに言ったら。
「形を変える練習してるの」
と言われた。
一際大きく船が揺れて、止まる。
港に着いたらしく、あちこちから人が歩き回る音が聞こえ始めた。
港に降りる人の列とは別に、動物を預けた人たちの列へと並ぶ。
聞くところによると、動物達は船旅の間、酔い防止の為にずっと眠りを誘う香を嗅がせて、冬眠中の熊のようにしている。前にオレが嗅がされたものとは違い弱いやつなので、強制的に眠らすと言うよりもウトウトさせる感じらしい。
それを光を入れて夢から覚めさせている最中なんだとか。
「どうぞ、お入りください」
階段を降り、灰馬達の元へ向かう。
そこにはまだ眠たそうな馬達がいた。
「久しぶりだな。いい夢見たか?」
灰馬が寝惚けているのを良いことに少しからかってやろうと思ったら、危うく腕を咬まれかけた。
こいつ、寝惚けていても怖い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます