第142話 ルキオ人の血

前言撤回します。


正直ナメてました、はい。


次の日の早朝。ゴウゴウと鳴り響く雷雨と暴風に、あちらこちらで船がミシミシ軋む音を立てている。そして、シェイク再び。


先程船員が、この嵐で船が沈むことはありませんが、念の為に扉を大きく開けて壁の突起に引っ掛け固定して、自身は寝台のどこかしらに掴まっているようにと言い回っていた。


扉を大きく開けておくのは閉じ込められるのを防いだり、揺れや衝撃などで勢い良く閉まる扉に挟まれて怪我をしないようにする為。掴まっているのは揺れで体が吹っ飛ばされないようにする為だ。


「話では二~三刻で抜けるって言っていたけど、本当にこれ抜けるのか?」


『抜けてくれないと困る』


「そうだよな」


ネコが服の胸元から顔だけを出している。

色々な音と酷い揺れでネコが本気で怖がって服の中に潜り込んできたのだ。最初は出そうとしたのだが、あまりにもブルブル震えているので止めた。


考えてみればこの方がネコも安全だし、今部屋にいるのはオレとネコだけだし。

喋る相手がネコだけど、嵐が抜けるまではここであの肉が旨かっただ、あの獲物は仕留めやすかったなどとくだらない話をするのも良い。


しかし、まさかここでアウソの奇行を目にすることになろうとは。まだ復活しきれていないキリコとカリアは寝てれば過ぎるのスタンスで部屋で体を固定しながら横になっているのに対し、アウソは「嵐だ嵐だ!」と祭の時の若者テンションで甲板に上がっていってしまった。


一体何をしに行ったのか、こんな天気はルキオ人の血が騒ぐとか言っていたけど。


船から落ちなきゃ別にいいか。


そんなこんなで二刻後、見事に晴れ上がった。

ピーカン過ぎて日差しが暑いくらいだ。


「落差すげーなオイ」


甲板に上がって進んできた方向を見れば、空から海にかけて白いカーテン状のものが。あそこが嵐の地域らしく、一年中あんな感じに荒れているらしい。


甲板を見回していると船員(ほぼルキオ人)がやきりった感満載の清々しい顔をしていた。皆嵐でテンションが上がったのか。そういえば船員ではない人もいるけど、あれもルキオ人なんだろうな。


「あー楽しかった!」


そんな人混みの中からずぶ濡れアウソが、こちらも清々しい顔をしてやって来た。


「何してたん?」


「遊んでた。小さい時やらんかった?嵐ん時にあえて外に出て走り回るの。今回は船の手伝いしてたけど」


「そんな危険なことしないわ」

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