第94話 唐突の死亡フラグ

何故かオレ達はしばらくここに滞在することになった。カリアいわく王都へ手紙を出して、その連絡が来るまでの間らしいが、マテラでは役立たずだった虎梟は飛べるようになったのだろうか?


「ビャアーーーーッ!!!」


「わあああ!!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」


「あんた何したの?」


「虎梟が人を襲うなんて珍しいさ」


「何もしてないし!見てないで助けてよ!!」


昨日の雨で小屋の周りに散らばった葉っぱを片付けたり、薪を割ったりしている二人から特に心配していない視線を感じる。

助けてはくれないらしい。


梟の鍵爪が襲い掛かるのを必死に避ける。しかし森の狩人と名高い梟だ、早いし何より怖い。


というかオレが一体何をしたというのか!?

何もしてないし動物に嫌われやすいの本当に嫌だ!!


『役立たずとかかんえただろ?』


ネコが屋根で寛ぎながらそんなことを言った。

どういうことかと逃げながらネコを見るとめんどくさそうに座り直した。


『おまえ、なんか知らんけど周りの動物とか色んなモノに心の声だだもれしてんぞ』


はい?心の声が駄々漏れ?


「お前そういうことは早く言えええええ!!!」


頭をガツガツつつかれているからもう遅いけどさ!!


「何してんだ」


丁度家の扉の前を逃げてる時にタイミングよくザラキが出てきて、オレに突撃をかます虎梟を捕まえてくれた。良かった、助かった。


「で?うちの虎梟に何したんだ?」


「何もしてませんよ!」


勝手に心の声読むとか卑怯すぎるしそれで襲われるとか悲しい。


「んー?」


とか思ってたらザラキが何故かオレの事をマジマジ見始めた。しかもオレの周りまでジロジロ。正直居心地が悪い。何なんすか。


「あー、昨日から違和感あったのこれか。カリアー!おい!カリアー!!」


そしてザラキはカリアを呼びながら家に戻っていった。一体何だったんだ。でも助かった。


虎梟の脅威が去ったことに安心してオレは薪拾いの仕事に戻った。







お昼頃、突然カリアに呼び出された。

しかもネコ付きで。


「なんですか?」


居間の扉を開けるとザラキも一緒に待っていた。


「ちょっとそこ座るよ」


「はい」


指定された椅子に腰かける。そして背筋を伸ばしながらオレは考えた。何か怒られるような事したかなと。思い付くのは朝の虎梟騒動だが、アレは別にオレのせいじゃないと思う。

思いたい。


「俺がいくつか質問するからそれに答えていってくれ」


「え?はい」


なんだろう。


「まず一つ目。呪いの正体は反転の呪いか?」


なんで知っているのか。

あ、もしかしてカリアが教えたのか。


「はい」


「二つ目、外に出す魔法が出来ない、もしくは苦手」


「!?」


ザラキの質問に驚く。これは誰にも言っていない事なのに何故知っているのだ。


「…はい」


「三つ目、それが何なのか知っているのか?」


ザラキが指差すのは横に座っているネコだった。何なのかって言われても。


「………猫?」


話したりでかかったり消えたりするけど、今のところは猫だと思う。


「…………なるほど」


何がなるほど?


「お前、今のままだったらそのまま消えるぞ」


「…………」


ちょっとザラキの言葉の意味が分からなかった。


「えーと、それはつまり?」


「形が無くなって吸収される。つまりはお前だけ死んで猫(ソイツ)だけ残る」


「なんで!?」


唐突の死亡フラグに驚く。

何がどうしてそんなフラグがたったのか全くもって分からないし身に覚えもない。


「お前何回か死んでもおかしくない時あったんじゃないか?しかもその度にそいつが肩代わりしている」


「なんでそれを」


チラリとカリアを見る。

しかしカリアは首を横に振った。


「残念ながらカリアには何も聞いてない。聞いたことは、お前が召還勇者って事と、ネコが本来この大きさではないって事くらいだ」


「……」


では何故知っているのか?まさかキリコとアウソがわざわざ言うまい。


「これは俺がみたお前の魔力の状態なんだけどな、お前の魔力、今体から滲み出して辺りに放出されてしまっている。魔力は命そのものであると同時にこの世に形を作っているもので、本来なら形に合わせて魔力が収まっているものだがそれが離れかけている。しかもその魔力の先に続いているのは猫(ネコ)だ」


「ネコですか」


「そう、つまりはお前の命の主導権が猫に移りつつあるということだ」


オレ思考停止。

つまりはなんだ?オレの命はオレのモノじゃなくなっているってことか?

ほら、カリアも意味が分からないという顔でザラキを見ている。


「なんでそんなことに」


「まずは召還勇者の仕組みから話さなければならん」

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