第13話 活用方法発見
「訓練所が騒がしいとは思っていたんですが…。まさか原因がライハ様だったとは、予想すらしてませんでしたよ」
「いやー……オレだけが原因じゃないんですけどね…」
オレはあの中二野郎に巻き込まれただけだし。
あの後、無事に地下の礼拝所へと辿り着き、ウロと合流した。オレの姿をみて慌てふためくウロに事情を説明したら呆れたような顔をされたが、さっきのは決してオレは悪くないと思っている。
(しかし、危なかった…)
あの風の塊が暴走する直前、咄嗟にアイツの足の間に木剣を突っ込んで蹴っ飛ばしざまに反対方向に逃げたおかげで飛ばされずに済んだが、巻き込まれて飛ばされてきた少年兵士数名と衝突し、転がりながら地下へと逃げてきたので全身擦り傷切り傷砂まみれである。見た目は喧嘩に負けた人。
(うん、大丈夫。一発蹴り入れてやったし、条件で一発入れたら勝ちってアイツが言ってたからオレの勝ちで良いだろう。てか、そうしよう。オレの勝ち)
「…まぁ、骨が折れてないだけマシだったと思います。ライハ様には回復魔法が効かないのですから」
「…………、その事なんですけど」
「!!?」
服をめくって腹を見せると、ウロの顔が固まった。シンゴからの攻撃をまともに受けた腹があり得ないくらい痛い。腹筋に力いれてたから内臓にダメージは無さそうだけど、その代わりにお腹表面にどす黒い色した気持ち悪い痣が。
「鼓動に合わせて激痛が走るんですけど、どうしましょう」
「………」
「ウロさん?」
「内出血してるじゃないですか!!
あなたバカじゃないんですかーーっ!!!?」
「いやその、ごめんなさい!!」
その時、城の者達が今まで聞いたことないウロさんの大声が、地下通路全体に響き渡ったという。
◇◇◇
ほんと、薬草が効いて良かった。
オレ、心からの言葉。
ただし効果が出るまでが地獄である。
「いたたたたたたたたっ!!!いたっ!もっと優しめでお願いします!!」
「いいえ、ある意味自業自得なのでこの痛みと共に反省してくださいませライハ様。これより解呪が完了するまで私の許可なしでの模擬戦は禁止です。連行されそうになっても自力で逃げ延びてください」
「ウロさん結構無茶なこと言いますね!?って、痛ァーっ!!」
「勇者様、暴れないでください」
「ウコヨ、サコネ。ライハ様を押さえていて下さい。お医者様が塗りにくそうです」
「はい!」
「了解!」
「ちょっ!やめてその押さえ方はまずい!!折れるぅぎゃああああ!!!」
その日、とある救護室で勇者様の絶叫が聞こえたとか無かったとか。
その後。
腹に塗りたくられた緑色の軟膏が皮膚にピリピリと染みるが、先程までのボデイーブローされてる激痛と比べればましだ。それよりも。
「……ウロさんが、怖かったなぁ」
精神的ダメージが酷い。
ウロさんの背後に般若が出てたよ。
「これからは、ウロさんを怒らせないようにしよう」
じゃないともっと痛い目を見そうだ。オレが。
しかし、模擬戦での負傷のせいで解呪が出来ないとはな、おかげで午後丸々暇になってしまった。鍛練もできないし…漫画も読み飽きた。そろそろ不法侵入してくるあのーーーー
「ライハー!きたよー!」
「何黄昏てるの?腹痛ですかね?」
「まぁ…ある意味腹痛だわな…」
ーーオウム達にでも渡そうかね…。
やっぱり不法侵入してきた、わざわざ移転魔法で。ウコヨとサコネのコンビはあの日からちょこちょこ用もないのにやって来るようになった。
主にオレの漫画目立てで。
そしていつの間にか誰も見てない時限定で敬語が消滅した。別に良いけどね。
早速ベッドに寝転がって読書開始の双子。いや違うな、読んでいるんじゃない、眺めてる。確かあちらの文字は読めないって言ってたからな。
あれ?じゃあなんでオレはこっちの文字読めんだろ。
「…魔法かな?」
オウム達にも無視され、暇すぎて仕方がなかったので久々に魔法の鍛練をすることにした。
といっても相変わらずささやかな感じなので鍛練自体もささやかなものであるが、鍛練なのは鍛練なのである。
初めは強い電気が使えるアニメキャラクターに憧れていたのだが、さすがにこの現状では無理だろうということでささやかな電気使いを目指し、その目標となるキャラクターを必死で脳内検索している。
「つか、静電気で戦うキャラなんて知らないしなー。てか静電気って攻撃じゃなくね?」
冬一番の天敵ではあるけれども。
右手に意識を集中させて魔法を発動させてみる。透明のキラキラした薄い膜が手を覆った瞬間に、放電が始まる。といっても手の甲付近に紫の物凄く小さい雷が発生するだけ。
この世界の魔法は基本詠唱をするのだが、これくらいの規模の魔法であれば詠唱しなくても発動できるらしい。これも人によるが。
(そう言えばあの中二勇者はなんの詠唱もしないで竜巻を発生させてたな。これも個人差なのか…)
考えれば考えるほどイライラが溜まっていき、遂にシンゴがこちらを指差し高笑いする姿が脳内再生され始めたので急いで掻き消した。
(なんか凄い腹が立ってきたな。音楽でも聴いてストレス発散でもするか)
鍛練を一旦中断して近くの棚に置いていたスマホを手に取る。
「そういや電池ヤバそうだな」
充電器なんて持ってないからそろそろ電池切れするかもしれないから大事に使わないといけない。そうは思ってもつい癖でスマホを起動させてしまうのは知らず知らずの内にスマホ中毒になりかけていたのだと痛感する。
電源を入れてふと思う。
たかが音楽聴くために貴重な電池を消費するのか?と。
「………。一応残量確認するか」
初日から放置していたスマホの電源を入れると、残量が残り15%しかなかった。
その時、不思議なことが起こった。赤色だった電池が突然充電モードになり、残量を増やしていったのだ。
「はぁ!?」
何事!?と思うも、頭の中で何故か先程の静電気が横切る。
これはもしかして、もしかするのか?オレの微電気が充電器の役割をしている?
「うーわー、活用方法わかって嬉しいけどなんか複雑ー」
色々実験してみた結果、魔法鍛練後にスマホを持っている間は充電され続けるらしい。推測であるが手の中に残っている微電気に反応しているらしい。
「まぁ、いいか。ストレス発散しよーっと」
この後、音楽を聞いていると聞き慣れない音に何事と近付いてきた双子によって奪われてしまい、スマホが戻ってきたのは充電が切れた後だった。
今日の教訓。
スマホで音楽を聞くのは誰もいないときにしよう。
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