第38話

南太平洋に隕石が落ち大津波を打ち消してから少したった日に新作映画”メテオ”の製作発表会がアメリカで行われた。後日、日本での製作発表会も予定されている。


この日、映画と同名の主題歌”メテオ”を歌う為に製作発表会のステージに立った私にある悲劇が舞い降りた。


動画配信でブライアンが最初に私を見たのと同じ姿、白い撫子柄の浴衣に黒下駄、竹で編んだ何時もの買い物籠を持った私がステージに立ちマイクで主題歌を歌おうと前奏が鳴るのを待っていると空から天界からの御使”天使”が各国のテレビカメラが待ち構える中、私の前に舞い降りたのだった。


「黒き使い魔の蜜よ。なんじは、月より石を降らせ大津波による被害を退けたこの功績により”黒き天使”の称号を天より与える事となった。爾の移動する能力を使い天界へ参られよ。それと天界へ参る折りに供物として持参する物を伝える」

天使が買い物籠にそっと触れメッセージを買い物籠に送った。

実体の無い天使は地上で姿を保つのが限界だったらしくメッセージを買い物籠に伝えた後に光の粒となって宙に消える。


この後、会場はパニックと言うか膝を折り手を組み祈りを捧げる人々が集まり大変な事に。

私は片手で1人づつ手を繋ぎ横浜の人狼一族のお屋敷に皆を連れて行くのを何度か繰り返し事無きを得たが、世界中に放送され繰り返し流れる天使と私の映像を見て黒蜜おばば達と顔を見合わせて溜息を吐いた。


「黒蜜おばば、買い物籠に何とメッセージが?」

私が買い物籠に耳を当てている黒蜜おばばに聞くと嫌そうな顔で。

「湘南の江ノ島近くにある蒲鉾屋さんのはんぺんをお土産に買って来て下さいだって。地獄や月にだけ月に一度、世界中の美味しい物を届けるのはズルいので天界にもお願いしますとメッセージが・・・」


そこにいた全員で顔を見合わせ深い溜息を吐いた。

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