>>ギブ&ピル

外道禅太郎

序章(さわり)

第1話序章(さわり)の序章、性癖ってなんだ

「ねぇ、今度ピル飲もうよ。」


言ったわたしは、もちろん冗談のつもりだったが、平生より冗談を言っても相手はそう取ってはくれぬ、

ご多分に洩れず、那美子も本気に取ったらしい。

後ろから抱きしめるかたちで腹のあたりに伸びた手が、那美子の動揺を隠し切れない心の叫びのようなものを、指先から敏感に感じ取る。


それにしても・・・鏡餅のように見事な三段腹のこの触り心地、おっぱいや尻のそれとも違うぷにぷにしたそれが

わたしは堪らなく好きなのだ。

フェチというやつ。


だがなぜそれほどまでに、腹肉に固執するのか、何をきっかけにそうなったのか、

いくら考えてもわからず終い、最近は前世からの因果か何かという、非科学な結論に終始してしまうのだ。


きっと、豊満女性こそ至高とされるトンガ王国あたりで、小さな村の酋長か何かをしていたのかもしれない。

否、酋長か何か、というのは希望であり、どうせろくに働きもせず、真昼間から酒浸りのどうしようもない外道、

そうに違いない。

となると、今生とさして変わるところが無い。

前世のカルマを解消することが今生の意味だとすれば、来世もまた代わり映えなく外道として産まれることだろう。

今生は来世までの暇つぶし、とはその名の由来でもある一休さんの言、

そういう考えも悪くない気がする。


8畳一間の板張り、その45%程度を占有する、壁に収納するかたちのベッド、右側に立てかけて収納するので

左側の床に脚を投げ出し、おもしろくもない朝のワイドショーを眺めている那美子の背中に頬ずりする格好で、

両腕で抱きしめながら、腹肉を揉んでいた。

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