不死鳥
「趙の武霊王の庶子、平原君趙勝の異母兄」
周りの者たちがどよめいた。
「楽毅の娘婿、李牧の師」
そんな馬鹿な? 秦軍の者たちは動揺した。
秦王の前に連れてこられた趙軍捕虜の男は、どう見てもそのような年には見えなかった。まだ二十代、せいぜい三十前後にしか見えなかった。胡服が似合う長身の美丈夫である。
なるほど、あの「英雄」武霊王の血を引くだけの事はある。
「『狂公子』
趙翔と呼ばれた男は秦王の目をしっかりと見据え、言い放つ。
「ならば、この俺を殺して、五体バラバラにしてさらしものにするがいい。それでお前が欲しいものが分かる」
趙の王族の生き残りである男は、その言葉通り処刑され、
その夜、秦王の枕元に彼が立った。
「古き秩序は新しき秩序に取って代わられる。それは、我が母方の曾祖父である商君(
翌朝、彼の死体は消えていた。
✰
「あれはいずれにせよ、天下統一を果たすだろう。そうなれば、あの男が次に欲しがるものが何なのか?」
趙翔…子鳳はある街の酒場で一人の男と出会っていた。その男は韓の宰相の息子で、名を
「あの男はいずれにせよ、『迷う』。今は亡き
文淵…子鳳の友人であった韓の公子・
あなたの「
「楽将軍の主君だった燕の昭王のような名君でさえも、不老不死への誘惑に取り憑かれたのだ」
それぞれのやり方で、秦への報復を果たす。どれだけの月日が経とうとも、きっとやり遂げてみせる。
子鳳は自嘲気味に言う。
「今、こうして生きて飲み食いしているけども、我が曾祖父と同じように『死体』を車裂きにされたのは皮肉だな」
子鳳は苦笑いした。
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