カバレロドラド ―黄金の騎士―
やあ、久しぶりだね。今は例のウイルス対策で一般見学を受け付けていないのだけど、あなたは特別に許可を得ている。恩人である厩務員さんも忙しいし、そう簡単には来られない。ようこそ、我らが楽園へ。
凱旋門賞に出たあの
この牧場のスタッフたちも、たまにスマホやタブレットでニュースなどを見せてくれるけども、俺の主な情報源は、昼間に牧場内で流されるラジオだ。それで、今の現役の奴らについての情報を知っている。俺の娘のこれからの成績も気になるけど、今のところは三国志の
そもそも、俺の存在自体が世間ではギャグ扱いされている。
俺の親父は悪戦苦闘の暴れ馬だった。最後のG1レースで優勝し、種牡馬になった。産まれた息子たちは奇馬変馬揃いの「いわく付きの血統」と呼ばれている。俺もその
3歳くらいまでは普通の「名馬の卵」だと見なされていた俺だが、競走馬としての闘争本能とは別の衝動が徐々に湧き上がってきた。競馬ファンたちのみならず、俺自身もそれに振り回されていた。
以前、あなたが読ませてくれた誰かのブログの記事にあったな。「ある種の天才は自分の人格が自分の才能の奴隷になっている」と。80年代に人気だったあのミュージシャンだとか、漢の三傑の股くぐりの韓信だとか、ギリシャ神話のアラクネだとかね。俺自身もそうだった。神様が天罰を下す相手は人間だけではないって。あのレースでの大失敗なんて、騎手ではなく俺
あ、もうすぐ4時だね。そろそろホテルに戻るんでしょ? 気をつけてね。じゃあ、またいつかね。あと何年、あなたたちに会えるのだろう? 今はただ、余生を楽しむのみ。
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