第6話 再会






正春と別れたあと、誠一郎はある場所を訪れていた。学園内で唯一の図書館、覇王学園図書館だ。ここには、約15万冊の本が置いてある。図書館といっても中だと迷惑がかかるので外で待ち合わせしている。ある人物とここで会う約束をしているが約束の時間になっても現れない。もう帰ろうかと思ったとき

「ごめんなさい。遅れましたわ」

向こうから一人の女の子がやって来た。それはこの間模擬戦を行い勝った結果、ルームメイトとなったエリス・ラティアークだった。

「別にいいよ。俺も今来たとこだし」

実質誠一郎がここに着いたのは10分前くらいだった。

「私との決闘のあとに学園長につれられてどこ行っていたんですの」

エリスは誠一郎にそう聞いた。すると、

「学園内に一つだけあった固有武装を使えるかどうかの検査をしていたんだよ」

さっきも正春に同じことを聞かれたから、今回も同じことを言った。

身を乗り出し、

「それでどうでしたの」

と聞いた。よく食い付くなと感心したがあえて言わないでおこう。

「しっかりと適性は確認できたよ。しかもとてもいい数値だとさ」

「そう、良かったですわね」

今日はこんな会話をするために誠一郎を呼んだわけではない。だからエリスは話を本題に移す。

「改めてこれから3年間よろしくお願いします。早速ですけど一つだけお願いがあります。よろしいですか?」

と、前置きしてエリスは話を続ける。

「この学園には、覇王剣祭というのがあるのは知っていますわね?」

とエリス。覇王剣祭とは、一年に一回ある、覇王学園の中でナンバーワンを決める武闘大会のことだ。この大会には個人戦と団体戦があり生徒はどちらか片方に必ず参加しなければならない。

「知ってるけどそれがどうかしたのか」

「覇王剣祭は、二人一組と個人戦の内1つ、もしくは2つに出ることができるんですけど二人一組のほうであなたにパートナーになってもらいたいんですの」

といい、エリスは目を逸らした。顔を見ると少しだけ赤い。

「それに私の裸をみたのだからこれくらいはいいですわね?」

「まぁ別にそれくらいならいいけど」

別にいやという訳ではなかったから断る理由はない。だから了承すると、

「本当ですの」

と再び顔をこちらに向けて確認をした。

「本当だよ」

「やったぁ」

エリスは喜びの声を上げた。言葉を続ける。

「それじゃあいい?今から私服を買いに行きたいのだけれど付き合ってくれるかしら?」

「もちろん構わないよ」

私服を買いに行きたいと言ったエリスにそれじゃあ早速行こうといい出発しようとしたとき、

「誠一郎」

名前を呼ばれた。誠一郎は声のした方に振り向くと正面から抱きつかれた。びっくりした誠一郎は

「ちょっと待って。一旦離れようか」

抱きついたのはエリスよりも5センチくらい身長の低い、ピンクのショートカットで前髪のサイドを三つ編みにしていて、アホ毛のある女の子だった。

「そうですわ!いきなり抱きつくなんて」

顔を真っ赤にしていうと

「別に。あたしと誠一郎はこれが普通」

「そんなことはどうでもいいのよ!何故初対面の男の人に抱きついたりできるんですの?ほらあなたからも何かいってよ」

「そんなこと言われてもねぇ」

言葉に詰まる誠一郎。これは事実なのだから仕方がない。

「なんで楓がこんなところにいるんだ?」

ふとそんな疑問が口からでた。前に俺が彼女とあったのは昨年の10月のはずでそのときはまだ孤児院にいたはずだ。すると、

「誠一郎って誰があたしを孤児院にいれたのか知ってる?」

「いや、知らないけど」

そんなことは聞かなかった。そもそも親かその施設の人のどちらなのはわかっている。

「それはこの学園の学園長、神崎舞姫。だからあたしに固有武装の適性があるってわかったとき、すぐにこの学園に入れてくれた」

と楓。だから、

「神崎さんのおかげでこうして誠一郎と会えた」

と楓。とても嬉しそうだった。

「それでそっちの彼女は?」

「ああ、彼女はエリス。俺のルームメイトだ」

「私はエリス・ラティアークです。よろしくお願いします」

エリスが自己紹介すると、

「・・・」

無視した。

「なんで無視するんですの!」

「ごめん、エリス。楓は人見知りが激しくてさ。心を開いた人としか話さないんだ」

楓は不信症で誠一郎と学園長にしか心を開いていない。「まあ、ここでこうしていても仕方がないしな。

それじゃあ三人で服見に行くか」

二人よりも三人の方がいいだろうと提案する誠一郎に

「別に構いませんわ」

「あたしは誠一郎と二人がいい」

と主張する楓。おいおい、最初はエリスが行きたいといいだしたんだぞ。

「しかも彼女が誠一郎のルームメイトなんて認められない。

あたしは誠一郎とルームメイトじゃないと嫌」

「そんなこと言われてもねぇ。もう学園長にも申請したしな」

「言うこと聞いてくれないなら誠一郎殺しちゃおうかな」

おいおい、エリスがいるときにそんなこと言うか普通。しかもエリス以外にも人がいる場所で。

「誠くんはとても強いのよ。Fランクだけど私に勝ったんだから。あなたじゃ殺せないわよ」

それに、

「あなたBランクでしょう。そんなんじゃ彼には勝てないわよ」

楓はむぅと唸ったがそれきり口を閉じる。

「とにかく三人で服見に行こう、な?」

「・・・わかった」

そういって三人は近くのデパートに向かった。




近くのデパートにて。




エリスは服を選び終わったのか更衣室から出てきた。

「この服はどうですの」

そう聞いてきた。誠一郎は、

「似合ってると思うよ」

と本心を口にすると、

「そう?よかったですわ。じゃあ買ってきますわ」

そういってエリスは服を買いにレジに並んだ。二人きりになった誠一郎と楓は少しのあいだ沈黙があったが意を決したのか誠一郎が遂に口を開いた。

「どうした楓。こっちに来てから一回もしゃべっていないぞ。何か買いたい服があるのか」

楓は首を振る。

「もしかしてさっきのルームメイトの話のこと、まだ怒ってる?」

「あの王女、あたしを弱いって言った。許せない。」

とても怒っているようだ。可愛い顔に怒りの表情がうっすら浮かんでいる。だから、

「別に気にしなくていいよ。エリスは楓が嫌いでそんな言い方をした訳じゃないんだよ」

そういい楓を宥める。そうしているとエリスが戻ってきた。

「ありがとう、誠くん。おかげで可愛い服が買えたわ」

「私も服買う」

対抗心を燃やしたのだろう。自分も買いたいと言い出したから、

「別にいいぞ、俺らもついていくから。いいだろセリス」

「構いませんわ」

そうして俺ら三人は移動し始めたのだった。





続く








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