四 ベトナム式除霊

 以前働いていた日本の職場にはベトナム人社員がいた。彼らは古いアパートを寮として与えられており、狭い部屋に四、五人ずつで暮らしていた。特に大きなトラブルもなく生活していたのだが、ある日近隣住人に警察を呼ばれてしまうという事があった。

 日本人社員が駆け付けた時には事態はすでに収束していたのだが、後日話を聞く事ができた。


 騒動の詳細はこうだ。

 霊に取り憑かれたらしいベトナム人女性が寮で暴れだした。大声で何かを叫び、部屋中をのたうち回る。同室のベトナム人達はあまりにも異様な同僚の姿に恐怖し、泣きながら近隣に助けを求めた。そこで警察に通報。到着した警官二人がかりでやっと彼女を押さえた、という事だった。


 取り憑かれた経緯もなかなか興味深いものであったが、その後の寮での「お祓い」の方が気になった。

 一般的に、このような状況で使用するものと言えば日本では塩や日本酒が考えられるが、ベトナムでは大蒜にんにくを用いるのだそうだ。

 騒動があった部屋でも大蒜による除霊が行われることとなった。除霊とは言っても、部屋の至る所に大蒜を置くだけである。日本人社員は全員、大蒜除霊に懐疑的であったが彼らの信仰心を否定することも出来ないので見守ることにした。


 結果、寮では不可解な出来事が頻発し、騒動から数年経った今でも毎月のように妙な報告があるそうだ。

 やはり日本の霊に対してベトナムの除霊方法は効かなかったようだ。

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