第五話『二回目のトレード』

「よし!もう一回いくわよ!」

とニコは言った。


「もう一回?」

と僕は聞く。


今手を繋いで、『炎弾 - ファイヤーバレット』と『炎拳 - ファイヤーパンチ』を交換したところだ。

そして、まだ僕達は手を繋いだままだ。

彼女の温度がまだ伝わっている。


「そう、約束通り、もう一つ『炎拳 - ファイヤーパンチ』をあげるわ」

「なるほど、一個ずつしか交換できないんだ!」

と僕は、理解した。

1つと2つを交換するみたいなことは出来ないらしい。

1つと1つを交換するのが基本のようだ。


「でも、僕は、もうあげられるスキルないよ?」

と僕は聞いた。

1つと1つを交換するのにあげられるものがもう僕にはなにもなかった。

となると、もう、もらうことが出来ないのだろうか。


「実は、空でも交換出来るのよ!」

と、ニコが言う。

1つと2つは交換出来ないけれども、1つと0は交換できるらしい。ちょっと不思議だが、そういうプログラムだと思えば、ない話ではなさそうだ。


「なるほど、『何もなし』と交換できるんだね」

「そうよ!」

とニコは言う。

僕はそう理解した。何もなしも一つだと考えれば辻褄はあう。常に一つづつ交換しているのだ。


やはり僕の想像通り、交換とは、譲渡を二回やっているのだ。

一方的に上げ続けることも出来るのだろう。

それをやらないのは、商習慣ということだろう。


「さ、いつまでも手をつなぎっぱなしってわけにもいかないから、さっさとやるわよ!!」

とニコが言う。


「僕はずっと繋いでても嬉しいけど」

とすこし微笑みながら言った。


「な!!」

とニコは言った。


「あんた何言ってんのよ!!これは、スキル交換のために仕方なくなんだからね!!」

と繋いだ両手をブンブン手を振りながら言う。

気持ちが良いくらいのツンデレだった。


「ふふ、冗談だよ!」

と僕が言う。


「冗談なの!!」

と驚くニコ。


「それはそれはでなんか悔しいわね!」

と言う。

僕は笑ってしまった。

ニコはなかなか可愛らしい少女なのだった。


「まっ、それはいいわ!!いくわよ!」

「よろしくお願いします」


「『炎拳 - ファイヤーパンチ』を差し出します」

「僕は何もないけどいいんだよね?」

と僕が聞いたら、コクリと頷くニコ。


『技能交換 - スキルトレード』


と、体がまた光りだした。

そして、光は消えた。


「スキル確認」

と僕が天の声に言う。


<<『スキル合成 - シンセサイズ』>>

<<炎拳 - ファイヤーパンチ>>

<<炎拳 - ファイヤーパンチ>>

ヒュッヒュッ、と表示される。


「おお!ちゃんと二つある!」

と僕は喜ぶ。


ほんとに同じスキルを2つ持てる。

なるほど、これはいけそうだな。

と僕は思う。


「で、2つも『炎拳 - ファイヤーパンチ』を手に入れてどうするの?」

とニコが聞く。


「こうするんだよ!」

と僕は言った。

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