第67話お母さん! 魔法少女達の過去⑧

 □ □ □


 森を抜けた先は崖になっており、下を覗くと何mあるかは不明だが足を踏み外せば即死してしまう程の高さで股間が一気に縮こまった。


「さあ! 若き魔女よ! あの大きな塔のようなものが見えるかい?」


 兵士がまるでこれからショーが始まるかのように高らかに声を上げる。

 兵士が指差した方向を見ると森の中に町のようなものがあり、小さな家々が塔を取り囲んでいる。

 塔といえども人が住んでいるような見た目ではなく、三角錐のような大きな石の塊がドカッとその場に設置されており、まるでエジプトにあるオベリスクにそっくりだった。


「見えるぞ! 女は目が命!」

「で、あれが何だ?」


「ええ。実はあの塔は悪い魔女が張った結界の一部なんだ。あれを破壊しないと魔女のいる城まで行けなくてね... ...」


「そうか! じゃあ、あれをぶっ壊せばいいんだな!」

「簡単だ! 楽勝だ!」


「おお! 若き魔女! やってくれるか!」


「うん! それでリズが蘇るなら!」

「ミーレ! リズ死んでないよ!」


 他愛ないのないやり取りをした後、ミーレとレミーは便所の棒をその塔にスッと向け。


「ねえ。レミー! リズ助かるといいね!」

「いいねじゃないよ! リズを助けるんだよ!」


 二人は顔を見合わせ、言葉を合わせ、呪文を詠唱。

 棒の先端が赤く閃光し、凝縮された光の玉にまるで生き物のように炎が纏わりつき、詠唱が終わった直後に棒の先端から火の玉が放たれる。

 轟音を上げながら塔に向かって火の玉は一直線に向かい、直撃。

 塔はまるでダイナマイトで爆発したかのように綺麗に下から崩れていき、火の玉に鉄球が混入されていたのかと思うような派手な壊れ方だった。


「ハハハ... ...。素晴らしい! 素晴らしいよお前ら!」


 若き魔女を手中に収めた兵士は赤く染まる街を見ながら、甲冑の下で恍惚の表情を浮かべる。 

 ミーレとレミーは事の重大さを理解していないのか、塔を破壊した自分達を自画自賛。


『ここからだよ。二人が破滅の道に進むのは... ...』


 そう告げるリズの声は若干震えていたように感じた。

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