第36話お母さん! 城下町が消滅しました!
____「ホワイトシーフ王国城下町」____
□ □ □
俺に巣を塞がれてしまったアリたちは帰る場所がなく、巣の周りをウロウロとしている。顔を上げ、周囲を見渡すと今まであったレンガ敷きの道やヨーロッパの家のようなものはなくなり、地平線に沈んでいく夕陽がハッキリと見えた。
町の住人たちは泣きだすこともせず、ただただ、地平線に沈む夕日を見ていた。「俺達の戦いは、まだまだ終わらない!」という打ち切り漫画のようなナレーションがピッタリとハマりそうな光景だ。
この光景を作りだした巨大な女は、シルフを自身の肩に乗せて、デイダラボッチのようにズシーンと音を響かせ、こちらに向かって歩いてくる。心ここにあらずという言葉がしっくりくるような浮かない表情をしている。対照的にシルフは足をプラプラとさせ、満足気な表情。
「ありがとう! あなたのおかげでこの街をぶっっっっ壊せたわ!」
「はあ... ...」
巨大な女の苦笑いを見て、「こいつ、愛想笑い下手だな」と思って少し顔がニヤケた。
「そういえば、あなた、名前はなんて言うの!?」
「ほ・ホワイトです... ...」
「この国と同じ名前なのね! 素敵ね!」
自分の名前と同じ名を持つ町を破壊して、素敵なはずがないと俺は心の中でお姫様にツッコミを入れる。
「あの... ...。私はこれからどうすれば良いですか? シルフ様」
「シルフ様なんて堅苦しい事言わないで! 私とあなたは友達じゃない!」
ホワイトは顔を引きつらせながら、再び、苦笑い。
それを見て、俺は失笑してしまう。失笑した顔を町の住人達に見られて少し気まずい、子供も俺に冷たい視線を送る。
「そうね! とりあえず、私の王宮に住めば? 使ってない蔵があるから、そこに住みなさい!」
「いいんですか?」
「もちろんよ! それと、あなた達も宮殿の庭に住居を作るからそこに来なさい!」
「え?! 私たちが宮殿に?」
突然の事でその場にいた住人達も開いた口が塞がらず。
それもそのはず、平民階級の住民は気軽に王宮の中に入る事は出来ず、住民の中には王宮の門すら見た事がない者もいるくらい。
『王宮に訪れる』という行為を数段飛び越え、『王宮に住め』と言われれば当然の反応だろう。
「そうよ! だって、あなた達、住むところないでしょ?」
シルフは住人達に文句を言われて、怒って街を破壊させたんじゃないのか? と疑問に思う者も中にはいたので、「まさか、王女様は俺達を拘束して奴隷のように使うんじゃないのか?」と不安の声を上げる者もチラホラ。
しかし、帰る場所もなく、このままでは凍え死んでしまうし... ...。
住人達は神妙な面持ちでホワイトに乗ったシルフに付いて行き、その光景はまるで、大名行列のように思えた。
俺はアリを踏まないように注意して、自分の足元を見ると、塞がれた巣の周りをウロウロしていたアリたちも、新しい巣を見つけたのか、いつの間にかいなくなっていた。
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