第14話お母さん! 塔の中で金髪の美女に会ったよ!

「なんだこれ!? でっけえ! 確か、昨日の夜にはなかったよな!?」


 上を見上げると塔の先が雲を突き抜けており、ジャックと豆の木ばりの見上げ方をしてしまった。


「いや、昨日は入口通ってないから! あんたの好きなワープで来たから!」


「... ...ああ。そうか。ってか、俺、ワープ嫌いだけど!? ワープで人の事イジるのやめてくれる!?」


「それよりもどうするこれ!? ぶっこわす!?」


 俺のツッコミを華麗にスルーし、便所の棒を強く握る魔法少女。


「野蛮だな! 何で壊す事を一番最初に思いつくんだよ!」


「じゃあ、ここに住もうよ! 一度でいいから高い建物に住みたかったんだよね!」


「急だな!」


 魔法少女はそのまま、両手を挙げて、天真爛漫な振舞いで塔の中に入って行く

 俺はビビりなので極力入りたくはなかったが、魔法婆に背中を押され、嫌々中に押し込まれた。




______謎の塔内部______




「わー!! 真っ暗だー!!」


 いつになく魔法少女のテンションが高い。

 本当に住みたかったんだな... ...。

 としみじみ。

 塔の中は確かに全ての景色に黒い絵の具を塗りつけたかのようで、何となく物のシルエットは分かるのだが、暗すぎてビビりの俺は少しずつしか進むことが出来ない。


 まあ、こんだけテンションが高ければ暗闇だし、おっぱいくらい触ってもいいだろうと男子が誰でも持つバレなきゃ合法思考が働き、目の前のおっぱいらしき物体を揉む。


 へー。

 こいつ意外に良い物持ってやがんな。

 完全なプレイボーイ目線であった。


「andrei hgred!!」


 呪文を魔法少女が唱えると辺りが明るくなり、俺が揉んでいたものの正体がバカデカイクマの太ももという事に気付いた。

 下手したら象よりもデカイんじゃないか?

 象見た事ないけど... ...。


「うおー!」


 俺は慌てて魔法少女の後ろに隠れた。


「デカイな! こりゃ、3日間は食料に困らないね!」


「ミーレ! ちょっと待ちな! この子、様子が変だよ」


 確かにクマは一向に襲ってくる気配がない。

 足元を見るとトラばさみのような物がついており、どうやらケガをしているようで本来のクマの特有の獰猛さは影を潜めている。

 今にも「く・くう~ん」とか細い声を上げそうだ。

 

 近くに子熊がいたら母熊のケガした足を舐めている状況だったに違いない。

 まあ、子熊いないけど。


「罠にかかってたって関係ないよ! あたしには食料にしか見えないよ!」


 魔法少女、口元じゅるり。


「あんたは本当に食い意地が張ってるね! 魔女の掟にもあるだろ!? 命を奪う時はお互い対等の状況じゃなくてはいけないって!」


「初めて聞いたよ! なによその掟!」


「いいから! まずは足を治してあげるのよ!」


 頬をぷくっと膨らませながら、魔法少女と婆はお馴染みの便所棒を天に掲げる。


「erins pens!」


 呪文を唱えるとクマの足の罠が外れ、光の玉がクマの傷口を舐めるように辺りを飛び回り、みるみるうちに傷が治っていく。

 苦痛に顔を歪ませていたクマの顔も雨上がりのように晴れていき、ピョンピョンと跳ね喜んでいる。

 人間の言葉を話せるのであれば確実に「はちみつ食べる?」と言ってくるに違いない。

 そして、俺はそのクマに対して「そんなベタベタしてるもん食うとかどうかしてるぜ」と言ってやるんだ。


「______チャッキー!!!」


 突如、上の階から女の人の声が聞こえ。


「ん? チャッキー?」


 聞きなれたフレーズに声がした方向を見るとそこには階段が。

 ______カツカツカツ。

 階段を降りてくるのは白いドレスを完璧に着こなす、金色の髪をした美女の姿。

 年齢にして20代くらいか。

 腕や足や腰には無駄な肉がついておらず、余った贅肉は全て胸部に集中。

 正に贅沢な肉の使い方をしている女性の容姿に俺は見惚れてしまい、何も言えず。


「は・花島!?」


 ん?

 何故、俺の名を?

 金髪の美女は俺を見つけると容姿には似つかない豪快な走り方でこちらに近づいてくる。


 そんなに勢いよく走ると転ぶぞ!

 と、忠告しようと思った矢先、ヒールがもつれ一回転してしまうほどの転び方を見せる。

 

 やれやれ... ...。

 勢い良く走るから... ...。


 俺はそのこけた女性に手を差し伸べた。


「だ・大丈夫??」


「はなじいまああ!!!」


 その女性は泣きながら俺の名前を呼び、急に抱きついてきた。

 条件反射からその女性の腰に手を回すと良い匂いがどことなくする。

 この匂い... ...。

 どこかで嗅いだ気が... ...。

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