前のエピソード――文化祭！

11月も半ばになった。先月始まったツバキガールズの冠番組は、初回放送で深夜帯にも関わらず視聴率が15%を超え、以降も10%前後の視聴率をキープ。放送開始からわずか1ヶ月半で放送するたびにTwitterのトレンドに浮上する人気番組となった。そして、年末には生放送の特番が放送されることも決定した。

各メンバーは先月頃から次第に仕事が増え、麻衣さんと沙織さんは1月から深夜のラジオ番組のパーソナリティーとなることが決定したという。そして、安達・松永・尾崎は中心メンバーとしてグラビアに引っ張りだこ、来月からは3人揃ってのCMが放送されるという。

そして、ツバキガールズはデビューシングルの発売まであと2週間あまり。公式ファンクラブの登録会員数は日を追うごとに増加し、設立からの2ヶ月半で無料登録のWebバリュー会員を含めると、300万人以上が会員登録したという。

そんな11月中旬のある日曜日の午後、メンバー全員が仕事やレッスンで不在、優衣姉と優里も外出中、早川さんと尾関さんも所用があり不在という時、ある5人組が突然寮に来た。

「相川さんの息子はお前か？」

と金髪の男性が俺に言う。俺は、

「そうですが何か・・・」

と言う。すると、

「なら話が早い。少し時間貰うぞ」

と言った。俺は5人を食堂に案内した。そして食堂に座ると、

「優くんだっけ？君のお父さんには昔、お世話になったわ」

と金髪ショートカットの女性が言う。そして、

「まさか優一さんが今、SNの社長でアイドルグループをプロデュースしてるとはね・・・」

と今度は眼鏡をかけた男性が言った。俺は、

「失礼ですが、貴方たちはどちら様ですか・・・？」

と言う。すると、

「ん？お前俺たちのこと知らねぇのかよ」

とやや髪の長い男性が言い、

「もう解散から5年が経つと、もう世間から忘れられたミュージシャンなのね・・・」

と茶髪ロングヘアの女性が言った。そうだ、みんな帽子被ってて最初は気がつかなかったけど思い出したぞ・・・そして、

「もしかして皆さん、ランナウェイズの5人ですか？」

と俺は言った。

「ん？まさしくそうだが。俺達がランナウェイズだよ」

と髪の長い男性が言う。そして5人は揃って帽子を脱いだ。

その姿を見て俺は完全に思い出した。ランナウェイズ。10年前にデビューし、デビュー曲がいきなりドラマの主題歌となり大ヒット。その後も着実にキャリアを重ねて、紅白歌合戦の出場やレコード大賞の受賞など、華々しい実績を積んだ。そして5年前、5大ドームツアーを終えた直後に突如解散。・・・という伝説のロックバンドだ。

金髪ショートカットの女性はボーカルのレナ、眼鏡をかけた男性はギターのマサシ、金髪の男性はベースのケン、髪の長い男性はドラムのノボル、そして茶髪ロングヘアの女性はキーボードのヒカリ。今でも名前と顔が一致しているのはすごい！

「・・・で、皆さんは僕に何の用ですか？」

と俺は言う。するとレナさんは、

「私達、再結成することになったの。お父さんにはもう伝えてるわ」

と言った。・・・マジ！？

「ちょっと、それ本当ですか！？」

と俺は言う。そして他の4人もうなづいていた。

「・・・で、活動再開はいつですか？」

と俺は言う。すると、

「1ヶ月後のSNミュージック年末フェスティバル。ツバキガールズも出るぞ」

とケンさんが言った。そして、

「はいチケット、優一さんから渡されたよ。優衣ちゃんと優里ちゃんの分もあるから」

とマサシさんから関係者用のチケットが3枚渡された。・・・親父何やってんだ、しかも2人の名前も知ってるし。そして、

「じゃあ、また当日ね」

とヒカリさんが言い、5人は寮を後にした。

翌日、ランナウェイズはTwitterのアカウントを開設し、活動再開が正式に発表された。このニュースは大々的に報道され、その翌日のスポーツ紙の一面にもなった。来年の春には新曲も出すという。

そして時間は流れ、12月になった。ツバキガールズはデビューシングルが発売され、シングルCDは初日で100万枚以上が出荷されたという。それと前後してテレビの出演が増加し、デビューシングルのCMも連日のように流されている状況であった。また、発売後は毎週のように握手会などのイベントが行われ、メンバーはデビューシングルの発売を機にもっと忙しくなったようだ。最近はメンバーと会話する回数もかなり減った。

それからというものの、12月も半ばとなり、今年も残りわずかとなった。そして日曜日、SNミュージック年末フェスティバル当日を迎えた。