第22話 新たな仲間

外を見ながら懐かしくも、辛い、

忘れたい、でも忘れられない。

そんな顔を繰り返しながら、

窓の縁に座ってリーネは時折、空を見ながら話をしてくれた。


「今のこの世界。

能力と言う代償ばかりが大きい世界にしてしまったのは、

私たちの責任だ。

ルナ様の力を与えられながらリザーヴを止められなかった」

唇を噛み締めリーネが俯く。


「ま~しょうがないんじゃないですか?」

ヒジリが明るく、ボクの方を見て同意を求める。

「そうだね。相手の力量もわからないのに戦いを挑む、リーネ様。

そしてボクとヒジリのご先祖様は凄いと思います」

うんうん!とヒジリも頷いた。

でも?とヒジリがリーネに質問をする。


「それでリーネ様はその後どうしてたのですか?」


「私か?私はしばらく匣の中で出る方法を探った。

サンは私なら出れると言っていたからな。

10日位経って、少し諦め掛けて居た時だな。

私のローブの中にコインが入っていた。

いつもサンが占いもどきで使っていたコインだ。

私は寂しさと懐かしさでサンの真似をして指で弾いてみたんだ。

その後、魔法が発動して出れた。

多分、神の鎮座する地に入る前に私のローブに入っていたので魔法が消えなかった。

元々、才能があった私の所有物として魔法の効果は切れなかったのだろう。

サンはこのコインに全てのロックを外せる魔法を掛けておいてくれたんだ」


「それでリーネ様はこの部屋に来れたのですね」

この部屋への移動もそのコインの効果で来れたのか。

もしかしてボクよりトレジャーハンターとして才能があるんじゃないか?

少し嫉妬をしそうになった。

そんな顔をしてしまっていたのかリーネがこっちを見て笑う。


「ハツキよ嫉妬するな。お前はまだまだ成長途中だ」


「そしてヒジリお前もな」


2人とも顔を見合わせ、驚きと喜びを隠せずリーネに同時に質問した。


「「 もっと強くなれるんですか? 」」


「もちろんだ!お前たちは今までのサンブライト一族、エール一族の中で、

一番、サンとエールの面影、力の流れが強い。

私はルナ様の想いを叶えるため、そしてリザーヴとの決着を付けるためこの体にした!」


ボク達の何十倍も生きてるはずなのに確かに幼い。

小さい。

幼女...


「我が名は・・・・・顕現せよ・・・・」

リーネが何か呟いている。

次の瞬間、ボクはなぜか天井を向いていた。

父の拳くらいある石が飛んで来て、ボクの額に当たって足元に転がっていた。

痛みを感じない体なのになぜか痛みを感じた。


「ハツキ!!!何を考えてた?」

首を大きくプルプルと大袈裟に振り、何も考えていません!すみません!と言っておいた。

ヒジリに助けを求めて顔を向けたが冷たく、冷酷な顔で見られていた。


「つ、続きをお願いします!!!」

「い~や~だ~!」とリーネは顔を背けた。

やっぱ子供じゃんて言おうと思ったがヒジリが

「すみません。リーネ様。あたしが後でしっかり言い聞かせますので続きをお願いします」

ヒジリがそこまで言うならとリーネが話を続けた。


「私は寿命を延ばすため、必要最低限まで体を縮めた。

そして次に今のままではリザーヴに打つ手が無いので、

新たな魔法を編むため研究をしなくてはならなかった。

しかしこの世界にきっと安全な場所など無いと思い...」

「私に新たな使命を与えてくださったんです♪」

キューブが匣から人型に嬉しそうに変わった。

「今度はリーネ様を護る匣になれと。そして人型として生きろと。

この姿を与えてくれたのもリーネ様なのです。

リーネ様の元のお姿に近い姿でございます」


キューブはやはり嬉しそうにクルリと回ってみせた。

リーネはキューブを見てウンウンと頷きながら、

「話を進めるぞ。ドコまで話を...そうだ体の話だったな。

この体にし、キューブの中で魔法を編み上げた。

その結果、魔法は完成した。

しかし私1人でリザーヴを倒すことは叶わない。

決定打に至らないのだ。

そこで私と同じ力を与えられたサンとエールに近い子孫が産まれてくるのを待った。

何代かに1人はサンかエールに近い子孫は産まれた。

しかしその世代に揃う事は無かった。

私は待ったのだ...

そしてお前たちが産まれた。産まれてくれた...」


リーネは再び窓際に行き、背伸びをして空を見上げた。

頬には涙が流れている。背を向けたまま独り言のように呟く。


「これで叶う。サン、エール見ていてくれ」


リーネは振り返り、笑顔とも泣き顔とも取れる顔で声を絞り出す。


「今日から私もお前たちの仲間にしてくれ。

年寄りの最後の我侭だと思って仲間にしてくれ。

力を貸してくれ。

リザーヴを倒す力を!!!」


深々と頭を下げ、懇願する。

「リーネ様!頭を上げてください」

ヒジリが慌てながらリーネに近寄り、声を掛ける。

ハツキも黙ってないで何か言ってよ!って顔をしている。

もちろん。そのつもりだった。

「リーネ様。ボクもアイツに恨みがあるんです。

リザーヴ!アイツだけは倒さなくちゃならないんです。

ボクの方からお願いします!

どうかボク達の仲間になってください。リーネ様」

今度はリーネに深々と頭を下げる。

ヒジリも同じく頭を下げた。


「私達の責任をお前達にも押し付ける形になってしまったが、

了承してくれて嬉しいぞ!

それともう、様は付けるな。仲間だろう?敬語もヤメてな!」


「わかりまし...わかったわリーネ!ヨロシクね♪」

ヒジリが笑顔で答える。ボクも同じく

「ヨロシク!リーネ。ボクたちは仲間だ!!」


ボクが手を出すと、ヒジリがその上に手を乗せ、リーネも同じく手を乗せた。


仲間が増えた。

約800年リザーヴを討つ為、ずっと機会を待っていたリーネ。

ボクを護るため人間を捨てたヒジリ。

そしてヒジリを護りたいと思うボク。


「あの~いいかな?」

ヒジリもリーネも顔を向ける?

「この後どうすればいいの?」

ヒジリがクスっと笑って、リーネがそうだな...と頷いた。


「今日はもう遅い。明日また話をしよう。

すぐにリザーヴを倒せる状況では無い。

800年以上待ったのだ、急ぐ必要もない。


そして私はもう仲間だ...



ココに泊まっても良い??」


「リーネ!もう仲間なんでしょ?今日じゃなくてずっと一緒に泊まるの!」

ヒジリがリーネの頬を突きながら嬉しそうにしていた。

「そうだよ!リーネこれからはずっと一緒だ!」

ボクがそう言うとリーネはまたそうだな...と俯いた。

部屋に行くまでずっと肩を震わせ俯いていた。

キューブが「リーネ様はもう寝る時間です!」と連れて行くまで。

リーネの居た場所にはたくさんの零れた涙の痕。

サンとエールを思い出しての涙なのか、不甲斐ない自分への涙なのか、嬉しさの涙なのか、

ボク達にはわからない。




わかっていたのは日付が変わるまでまだまだ時間が有ると言う事だけ。


「「 寝るの早くねっ!!?? 」」


ボクとヒジリはお腹を抱えて笑った。

そして声を揃えて


「「 久しぶりだな 」」

なんてね。

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