第59話 お色直しはトラクターだった

夫の親友の結婚式があり、(火山的な意味で)タイムリーな十勝岳山麓に行ってきた。新郎となる親友さんは笑顔が印象的な暴れ牛と戦ったりするパティシエだ。

そうだなぁ、名前を松さん(仮名)とでもしておこうか。

松さんは実家を継ぎたくなさ過ぎて留学した中国で(同じく留学していた)夫と知り合ったそうだ。


一時期(夫と)同居していたといえば、どのくらい剛の者かは予想がつくだろう。


実家を継ぎたくなさ過ぎて(以下略)のため、松さんは現在、某国立公園の中にある集落で暮らしている。ゴールデンカ〇イみたいな感じの場所といえばきっとイメージしやすい気がする。3日に1回はヒグマの目撃情報がある大変ホットなエリアだ。

ちなみに最寄りのコンビニまでは50㎞程度だ。

今回は(夫の)同僚の助けもあって、行き帰り含みで4日も休みを貰えたので行くことができた。ピュアブラック企業に起きた奇跡だ。奇跡も魔法もあるんだよ!


さて、肝心の結婚式だが…まさか新郎が牛に乗って登場するとは思わなかった。

お色直しはトラクターだった。

全て手作りの結婚式で、本人の人柄もあり集落の人が総出で祝ってくれていた。

思わず自分ももう一度結婚式をやりたくなるくらい、いい結婚式だった。

夫も旧友と久しぶりに会えて、存分に羽を伸ばせたようでよかった。


ちなみに自分の結婚式はというと(勤務先の社長の嫁に阻まれ)結婚式当日しか新郎の休みがなかった上に、披露宴後に酔っぱらった夫が「なんか薬指に邪魔なものがついてるお☆彡」と指輪をぶん投げたため、初夜から指輪を失くしかけた。

(幸い、排水溝の横に落ちていたので指輪自体は無事だった。)

過ぎたことなのでもう仕方は無い。奇跡も魔法も特になかった。


…書いていてなんだか悲しくなってきた。


色々と思うところはあるが、この悲しみを癒すのにそのうち2人きりでベストシーズンに台湾旅行とか行きたい。沖縄でもいい。但し夫の思うベストシーズンではなく、世間一般が言うところのベストシーズンに。



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