第49話 サヴォークでの再会

 これは後で聞いた話だけど、帝国本土の周辺に作られた属州という地域を監督する総督という職業は、元老院という集団から選出され、五年を上限とした任期制らしい。


「もう五年か。時が流れるのは本当に早い」


 朗らかに笑う先生を馬車に乗せて、私は徒歩で馬を曳く。たくさんいるだろう領主の一人のはずの先生が、総督の退任式典に呼ばれるなんてちょっとすごい。やっぱり先生は凄い人なんだ。


 普段なら、こういった外出にはインファさんが付いていくものだろうと漠然と私は思っていたのだけど、先生はインファさんを留守役にして私を伴にした。


「先生の御面目を潰さないよう、頑張ります」

「まぁ、そう気負わなくてもいいよ。でも、そうだなぁ……闘技会に出るからには、然るべき恰好をしてもらおうか」


 先生は、私にすべての防具を身に着けたまま行動するように指示した。鉄靴から胸当て、兜に至るまで身に着け、腰には短剣と手斧、背中に短槍を括り付けた私を見て満足げに先生は頷き、


「面当ては下げておきなさい。私が外して、というまで下げておかないといけませんよ。それと、これを」


 先生が持ってきたのは盾だった。隊列を組む兵士が使う大楯より、一回りほど小さいが、方形で、やや湾曲していて、板に革を張って縁を銅板で締めている。


「これを背中に背負っていなさい。貴女は貴女の責任をもって私を守るのです。この盾はその証です。……本当なら、何かそれらしい紋章を入れた方がしっくりくるんですけど。まぁ、いいでしょう」


 なるほど、確かに色合いこそ私の鎧に合わせた藍染だけど、全くの無地で素っ気ない感じだ。

 ともかく、そう言った格好で、先生を乗せた馬車を曳いて私は村を出た。一年ぶりの領地外への外出になった。


 早朝に出発した私たちは、正午ごろ別の領主の村にたどり着き、そこの牧人から馬を借りた。ウェイダ村から連れてきた馬は休ませ、代わりに元気な馬と交換する。


 この馬はお屋敷で世話している馬とは性格がまるで違っていて、落ち着きがなくてわがままだった。すぐよそ見をして道を外れたがるので、私は懸命に綱を曳き、時折干し葡萄を口の中にねじ込んでやり、何とか言うことを聞かせることができた。


 そのうち、私たちが歩いていた道が繋がっている大きくて立派な石敷きの街道に突き当たった。ここを進めばこの辺りで最も大きな都市、サヴォークに着く。


 街道は私たちの馬車がすれ違えるくらい広いし、石敷きで硬く、歩きやすかった。歩みが早くなり、時折同じように馬車を曳く行商人らしき人とすれ違う。そうすると、相手は私を見て目を丸くし、次に馬車に乗っている先生を見るのだ。


 道行く人は先生を見ると顔を綻ばせ、恭しく頭を下げたりした。先生は薄く織った麻で出来た綺麗な服に、刺繍の入ったマントを着ていた。綺麗な漆黒の髪は紐で束ねられていて、額に宝石の粒が入った環を被っておられた。


「みんな先生のことを見てますね……」

「どうにも私は、昔から人の目を引いてしまってね。落ち着かなくて困る」

「先生、美人ですから」


 今日は領主としての外出だから、先生は顔を隠すわけには行かないという。目立つ立場だから、周りから何か危険が迫ると真っ先に狙われるかもしれない。何せ今日の先生は腰に軽い短剣を一本挿しているだけで、殆ど丸腰だった。いつもは肌身離さず持っている宝石のような鞭も、今は箱に入れて荷物の中に入っている。


「しっかり守っておくれ、ヨン・レイ」

「はい!」



 サヴォークの城壁が薄っすらと見えてくるにつれて往来が増え、様々な格好の人たちが視界に入った。私たちのように馬車を連れている者や、馬の背に荷を積んでいる人、あるいは背負子で荷を負っている人もいた。


 その階層も様々で、ウェイダ村の皆と同じような、農夫や牧人らしき人に混じり、上質の衣服を着て、すらりと背の高い馬に乗った、見るからに気品のある人。それとは反対に、素足に、ボロボロの貫頭衣に縄を締め、手足に石で出来た輪を嵌めたみすぼらしい人。そんな人たちが、サヴォークという大きな町の出入り口に向けて集まっている。


「入城を希望する者は列に並べ! 車、馬、象の者はこちらに並ばれよ!」


 門の前で槍を突き立てた兵士が数人、集まっている人たちを整理して門の中へ送り出していた。私たちもそちらへと近づいていくと、うち一人がこちらを見て駆け寄ってきた。


「そこの者。馬車を連れて徒歩の者に入ってはいかん。あっちの兵士が身元を検める。それまで待て」

「普段はもう少し検閲が緩やかでしょう? どうして今日に限って」

「今日ばかりじゃないよ。ここ数日はずっとこんな感じさ。総督閣下の退任に合わせていろいろと催し物をやっていてね。周辺の村々、本土、それにアメンブルク王国からも物見遊山の連中がサヴォークに流れ込んでいるのさ」


 先生は諦めて、私たちは荷引きの人たちの列に並んだ。車や動物の背に積んでいる物や、荷を運んでいる者の名や在所を検めているのだ。


「次の者」私たちの番が来ると、兵士たちが無遠慮な視線で先生を、次いで物々しい恰好の私を見た。

「私たちはサヴォーク総督閣下から招待を受けた者です。こちらがその証拠たる招待状です。ご確認を……」


 先生が凛とした、それでいてなんだか色っぽい声音で兵士たちを呼び、手ずから例の招待状を渡すと、見るからに兵士は動揺していた。恰好だけは、招待状を確認していたけれど、あれじゃ中身まではっきり見ていたとは思えない。


「ど、どうぞ、お通り下さい……ええと、お名前は……」

「ハジャール。スピネイル・ハジャールです。ご苦労様、兵士の皆様方。またお会いしましょう」


 うっすらと先生が周りの兵士たちに微笑むと、兵士たちは明らかに態度を軟化させて私たちを通してくれた。


「……先生。外ではいつもあんななんですか?」こっそり、周りに聞こえないように問いただした。

「ほんの、たまにはね。今日は特におめかししてるから」


 先生は結構お茶目で、気ままな人だなぁ、と私は思う。



 先生はサヴォークにご自身の部屋をお持ちだそうで、私をそこへ案内してくれた。その近辺は見るからに高級そうな、石造りの壁が立ち並び、どれも複数階に渡る居住空間だった。村とはまるで違う風情で、似ている物といったら、それこそ先生のお屋敷くらいなものだ。


 私が荷物を部屋に運び込もうとした時、先生は私を呼び止めた。


「待って。誰か中にいる」


 え? と尋ねる間もなく、先生は静かに階段を昇って行った。私も慌てて後を追うと、三階の戸口の前で先生が立ち止まっていた。


「私の部屋に誰かいるな……ヨン、剣を貸して」


 私の腰から剣を抜くと、先生は両手に二本短剣を構えた。私も手斧を抜いて構える。

 戸口は閉まっていたけど、鍵は開いていた。先生は隙間に剣を差し込み、そっと体一つ分の隙間を作って静かに入った。私はまだ背中に盾と槍を背負っていたから、その隙間じゃ入れない。仕方なく音を立てないようにそっと戸口を開いて中に入った。


 先生の後姿が見なくなる。素早く廊下を曲がって奥の部屋へ飛び込んで行ったのだ。


「せ!……先生!」声を掛けようとして、慌てて声を押し殺した。侵入者がまだいるのなら、気付かせないようにしなくちゃ。


 私は廊下を、なるべく音を立てないように走って、先生がいなくなった廊下の先を目指した。左に曲がった廊下の先に三つの扉があり、その一個が半開きになっていた。


 恐ろしいのは、何の物音もしなかったことだ。もしかして、でもそんなことはあり得ない気がして……先生に何かあったら。


 私は居てもたってもいられなくなり、全速力で廊下を走り、扉の先へ転がるように飛び込んだ。


「先生! 一体、どうし……」


 見えた光景は私の言葉を尻すぼみさせるのに十分なものだった。


「いやぁ、申し訳ない、スピネイル殿。この礼は必ず致す。いまはこの某の、でかい顔に免じて許して下され。ほれ、土産の酒も肴もあります故、この通り」


「全く……ハイゼ殿、さすれば手紙の一報でもして頂ければ良いものを」

「わはは。それがですなぁ。ちょいとこちらも、色々と込み入っておりまして、宿を取るのをすっかり忘れておりましてなぁ!……ぬ。何奴」


 大柄で、筋骨隆々とした、見るからに強そうな男性オークが私を見た。さっきまで零れ落ちそうな愛嬌漂う笑みで先生と話し込んでいたこの人を一目見て思った。この人は従士だ。それも、とんでもなく強い従士様だ。


 先生は私と従士様を見比べて言った。


「ハイゼ殿、これは私が目を掛けている者で、うちの村に流れ着いたレイ・オークの子、ヨンという。ヨン、こちらはアメンブルク王国の筆頭従士である、ハイゼ・フェオン殿だ。兜を外して挨拶しなさい」


 先生の命令を受けて、私は面当てを上げ、兜を脱ぎ、手に持っていた手斧を納めた。


「ヨン・レイです。先生……いえ、ハジャール卿には戦士の手解きを授けて頂いています。此度はインファさんに代わって付き人を仰せつかっています」


「うむ。……レイ・オークの娘か。お主の一族は災難だったな」

「何かご存じなのですか?」


 私の問いに筆頭従士ハイゼ様は頷く。


「お主の一族のうち、凡そ数百の子女老婆を王国内の領地にて保護しておる。皆、新しい土地で新たな生活を身に着けようとしておるそうだ」


「ヨン。ハイゼ殿が尽力しなければ貴女も、あのハオ・レイも今を生きてはいられなかったかもしれないよ。感謝しましょう」


「はい! お力添えいただき、ありがとうございます!」

「わはは! 他愛なきこと、是非に及ばず」


 ハイゼ様は如何にもオーク戦士らしい、豪快な身振り手振りで鷹揚に笑った。


「……しかしハイゼ殿。どうやってここに入ったのですか? 鍵はしっかりと閉めてあったはず」

「ううむ。それについてだがのう……」


 何か言おうとしてたハイゼ様の声を遮るように、隣部屋に繋がる扉が勢いよく開け放たれて誰かが入ってきた。


「お待たせーハイゼ、愛しい愛しいヨアレシュさんが頑張って作った麦粥だよー。食糧庫に残ってた瓜の種にマドリの種も入れてるから滋養が付くよん。あ、でもでもぉ、今は人の家なんだから、おイタしちゃだーめーよー。っとと……なんだ、スピネイル来てたの」


「……あ、ああ。久しぶり、ヨアレシュ……」


 部屋に入るなり持っていた大きな鍋を机に置いた女の人は、まくしたてたと思ったら気安い態度で先生に挨拶した。先生も、流石にこれには面食らったらしく、言葉もなかった。


「ごめんねぇ、勝手に部屋使ってて。でもさ、ハイゼが悪いんだよ。折角サヴォークまでお出かけだっていうのに、宿を取っておくの忘れたって言うんだもの。じゃあ、仕方がないからってスピネイルのアパルトマンまで案内してさ。あ、鍵はね、私が開けたんた。ちょちょっと壁を昇って窓から入ってさ」


 ヨアレシュと呼ばれた彼女は、なんて口の回る人なんだろう、というのが私の第一印象だった。先生よりちょっと背が低くて、胸が大きくて、まるで鼠のように落ち着かなくて飛び跳ねているようだった。


「いやぁ、それにしてもスピネイル、綺麗におめかしして。別嬪さんだね! このこの」

「何言ってるのさ。ヨアレシュもどうしたの、その恰好。見違えたよ」

「えへへ……ハイゼが奮発してくれたんだ。綺麗?」

「ああ、素敵だ」


 ヨアレシュさんは濃い栗色の肌に鮮やかな顔料で化粧をしていて、こげ茶色の髪も丁寧に梳られて簪で纏められていた。来ている服は象の一番いい毛と狼の毛皮で出来ていて、艶々とした白銀と褐色、二つの色が織り交ざっていた。使われている釦も象牙で出来ていて、如何にも贅をこらした晴れ着って感じだった。


 それを見ていてなんとなく思い出すのは、遠くから見た族長様の奥さんの姿だった。ヨアレシュさんの恰好はまさにそんな、偉いオークの奥方の恰好そのものだ。


 先生もそれに気づいたらしく意地悪な眼差しで、身の置き所を失って鍋の中身を物色していたハイゼ様を見上げていた。


「ハイゼ・フェオン殿。どうも私が領地に去ってから、色々とあったようですね」

「む。それは、色々とあり申したとも」

「……ハイゼ殿。貴方と私は、共に何度も死線を潜った莫逆の友であると思っています。何ぞ、物言うところがあるのではないですか」


 先生がにやっと笑う一方で、ハイゼ様は深いため息を吐き、手まねでヨアレシュさんを懐に招き入れた。


「某、ハイゼ・フェオンはヤオジンのヨアレシュを嫁に貰うことと致しました。このことは先にキュレニックス閣下を通じて帝国にも伝えており申す事。気安い仲とは言え、お伝えするのが遅れて申し訳ない」


「……うん。そう言うことなんだ。ごめんね、黙ってて」


 ヨアレシュさんは大事そうにハイゼ様を抱きしめていた。


「……そうか。二人は仲がいいな、とは思っていたよ」

「そう?」「そうですかのう?」二人は声を揃えて言った。

「ははは……お幸せに」


 先生は心からの気持ちがこもった微笑みを浮かべていた。



 翌日、私たちは総督府の前にある広場に作られた式典会場を訪れた。


「昨晩は実に静かでしたね、ハイゼ殿」

「ハジャール卿! 堪忍して下されい」


 困り切ったオーク戦士さまの顔、なんていうのはそう滅多に見られないものだってことくらい、私にも分かる。


「……さて。ヨン・レイ」先生は招待された席次に着く前に私を呼んだ。

「はい」

「今回、貴女を呼んだ理由を覚えていますね?」

「はい。闘技会に出場することです」

「あちらにその闘技会に参加する者を受付している方がいる」


 先生の指し示す所に、確かに帳面を広げて物々しい風体の男たちと面談している人物が座っていた。


「あすこで参加を伝え、後は適当な位置で待っていなさい。残念だけど招待状の席に貴女の場所はないですから」


「分かりました。行ってきます」

「行ってらっしゃい。胸を張りなさい。貴女は私が手解きした戦士。戦う意思さえあれば決して負けませんよ」


 私は先生と別れた。知る者の誰もいない雑踏の中に放り込まれたみたいで、荒野を流離った時とは別の怖さを感じた。けど、それを振り切り、受付の所へ行った。


 受付では、帝国人、オーク、それにほんの少しだけどモグイ族らしき人が列を作っていた。私は最後尾に加わり、自分の番を待つ。


「なぁ、あんた」後ろに並んだ帝国人が声を掛けてきた。

「聞こえてんだろ、なあって」

「聞こえている」

「ならこっちを見ろよ」


 鬱陶しくしゃべるその帝国人は、見るからに胡散臭い男だった。晴れの場に似つかわしくない汚れた武具、無精ひげを生やしていて臭い。


「……盗賊か」

「そうさ。普段なら俺は町には入れねぇ。こんなでかい祭じゃなきゃあな」

「財布でも抜こうっていうのか」

「へ。俺はスリじゃねぇ。こっちで言うことを聞かせるのが得意でね」


 盗賊らしき男は腰にある汚れた鞘の剣を得意げに見せた。


「この辺りのならず者には『切り込みヨハン』って言われて、ちっとは名前が知られているのよ」

「悪いけどならず者に知り合いは居ないんだ」

「まぁ、そう邪険にするんじゃねぇよ。あんた、この町の奴じゃないだろ? お上りさんさ。動きでわかる」


 確かに、サヴォークに来たのは初めてだし、歩きながら物珍しく見回していたから、はたから見たらすぐ分かるものなのかもしれない。


「今日は闘技会があるってお触れがいろんなところで回っていたからな。あんたみたいな腕自慢のお上りさんが沢山集まってるのさ。ほら、あれを見な」


 『切り込みヨハン』は、今ちょうど受付をしていたオークの男を指さした。


「あのオークもこの辺りまで仕事に来たことのない、お上りさんよ。腕っぷりは結構だが、切った張ったにゃ不慣れだろうよ」


 その言い回しに、私は気付いた。


「……お前、闘技会で何かイカサマでもやろうとしているのか?」

「とんでもない。俺は単に、あいつは出場しても直ぐに負けちまいそうだな、って言ってるだけさ。逆にあいつは強そうだ」


 次に示したのは、磨かれた鎧を身に着けた帝国人だった。穂先の大きな槍を担いでいて、体つきもがっしりしている。


「ありゃあ貴族様の私兵だな。総督閣下ご自慢の『重槍重歩兵』って奴かもしれねぇ。あいつぁ駄目だ。勝てっこねぇ」


「戦う前から弱気だな」

「俺は臆病だからよ。勝てないと思ったら、さっさと逃げるのさ」

「じゃあ逃げたらどう? なんなら巡回してる兵士を呼んでやろうか?」だんだんこいつの卑しい物言いに腹が立ってきたが、『切り込みヨハン』は笑いかける。


「まぁそう言うなよ兄弟。俺一人じゃ勝てなくても、二人なら勝てるかもしれねぇ」


 なるほど。そういうことか。

 私は振り返り、列に並んでいる参加者、登録を済ませ、声がかかるのを待っているらしき者らを見た。

 その中から、一度二度、此方に目を向ける者たちがいた。正確には、私の後ろに立っている男を見ているのだ。


「お前、そうやって参加者に声を掛けて回ってるのか」

「へへ。お目が高いねぇ、兄さん。この闘技会は優勝者に金貨百枚、それに黄金の剣が贈られるっていう触れ込みさ。全部頂くのは危険がでかい。でも、徒党を組んで山分けにするなら、うまい稼ぎさ」


 私は面当ての下で、自分が不愉快に顔を歪めているのを認識していた。こいつにはそれが伝わらなかった。


「なぁ兄さん。いきり込んでるところ悪いけど、この大会であんたが優勝するのは無理だぜ。悪いことは言わねぇ。俺の言うことを聞いて、ちょいと小遣いを稼ぐ程度にしておかねぇと、命がいくつあっても足りないぜ」


 したり顔で話す『切り込みヨハン』を、私は視界から遠ざけた。


「考えておくよ」

「よし! 言ったな! じゃあな青い鎧の兄さん。始まったらまた声かけるからな!」


 盗賊は意気揚々と列から抜けて行った。ああやって時間いっぱいまで仲間を集めているのだろう。

 まあいい。好きにすればいい。私は体が静かな興奮に包まれていることに意識を向けた。戦う。はじめて、先生以外の人と戦う。そのことで頭がいっぱいになった。興奮と不安がないまぜになる。


 先生は言った。戦う意思がある限り戦える。

 だから私は、先生に教えられた通り、戦って見せる。それが今の私の『戦う意思』だった。

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