第10話『vsゴリ沢 その2』




ふぬん!!!!






叫びとインパクトの爆音と共に

レーザーの様なフラットショットがコートに刺さる。


「らぁーーー!!!!」

エースを決めたゴリ沢が吠える。

周囲から拍手が起こる。



現在ゲームは6ゲーム先取の4-3ゴリ沢リード


「ああ、逆転されちゃった・・・」

「黒峰・・・」



サッカー部員は周りのゴリ沢歓迎の雰囲気に飲まれていた。



「まぁ・・・付き合いたてホヤホヤのカップルに水差すのも悪いし」

「だよなー・・・もしここで黒峰が勝ったりしたらさ・・・『空気読めない』って言われかねないしさ」




「お前ら・・・何を言っているんだ?」




「部長?」

「むしろ・・・俺はゴリ沢を見損なったがな・・・勝負の最中に女子とイチャイチャ・・・けしからん!!けしからん!!」


(さっきと言ってることが真逆)

(部長・・・最低のクズ野郎だな・・・)




「ちくしょう・・・俺たちはリア充に成すすべなく負けるしかないって言うのかよ・・・」




「黒峰ーー!!奴に勝つんだ黒峰ーー!!」

部長の声援はゴリ沢の応援団の声に紛れて消えていく・・・






$$$






なんつー速いボールだよ・・・これが全国レベル・・・

いい経験したな・・・

これは負けても悔いが残らない気がする・・・




黒峰は粘る・・・




足を動かし、粘って粘って耐えしのぐ・・・

が、ゴリ沢の圧倒的な『攻め』の前になすすべがなくなりかけていた・・・





コートチェンジの際、ゴリ沢がこっそり黒峰に話しかける。





「おう、守ってばっかりのテニスじゃの・・・時には『捨て身』で攻めんと・・・本当に欲しい物は手に入らんぞ」





守ってばかり・・・




舞浜・・・




『捨て身』で攻める・・・




舞浜と白馬の関係・・・




『捨て身』で攻めれば・・・どうにかなるのか?





・・・






黒峰のスピンボールをゴリ沢が捉える。


良く跳ねるから・・・上から打ち込みやすい・・・完璧に捕らえた・・・



ガキッ・・・




ボールはフレームに当たり力弱くネットに当たる。




「?」



今のボールずいぶん跳ねたな・・・

ゴリ沢は言い様のない違和感を感じた。






$$$






5-5同点

黒峰も譲らす、押し返す。




ボールの回転がとにかく不規則に変化して捉えきれない。


背筋がぞっとするようなスピンの後に弱弱しい腑抜けたボール・・・

あれだけラリーを重ねて尚、つかめない。

ゴリ沢は黒峰という目の前の存在を測りかねていた。





わからん・・・全くわからん・・・





こいつ・・・一体何なんだ?





浮いたロブ

黒峰は前に出る。





ガシャン!!





スマッシュボールがフェンスに刺さる。

ゴリ沢の応援団はしんと沈黙する。



黒峰は喜ばない、ガッツポーズの素振りも見せない・・・

ただ・・・その目は・・・



真っ黒で絶望に満ちていた・・・





試合結果7-5、

黒峰の勝ち





$$$






黒峰の試合結果を聞いた白馬の応援に来ていたテニス部の面々は驚く。


「黒峰、ゴリ沢に勝ったのかよ」

「予想の斜め上過ぎるだろ」


「じゃあ何か・・・『全国行のかかった次の試合』は・・・」



3回戦、白馬vs黒峰



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る