【2日目】「晩御飯何食べたい?」

「え、決めるの早くない?そんなに簡単に決めなくても...」


「大丈夫、これでもちゃんと考えたから」


そう、フィリアの言う通り別に今じゃなくてもいいかもしれない。だけど多分どれだけ考えてもこれしか思い浮かばないんじゃないかって僕は思う。


「まあ...僕くんが決めた事だから大丈夫だと思うけど...それで結局どんな制約にするの?


フィリアに2つの制限を付けることを伝える。

「一つ目、能力は4つしか保持出来ない。これは緩めないでこのままで行こうと思う。

そしてもう1つは1日経つと能力のスタックがリセットされる。」


これが僕の制約。とりあえずは厳しすぎない制約にしようと思う。


「いいんじゃない?じゃあ次の日になるとまた能力の集めなおしって事ね。」


「そうだね。でもフィリアがそばに居てくれるから『操作』だけは確保出来る」


会話の途中だったのに、フィリアが急にうつむいてモゴモゴしてる。米粒でも歯に挟まったのかな。

なんか歯に挟まってるなら水飲んだら?と声をかけたらグーで殴られた。パーじゃなくてグーで。



「修行の続きね。なにか練習したい事とかある?」


「マナについて練習したいな。透明なマナって何が出来るかわからないしどこまで予想出来るんだろう。」


「そうね、私も知りたかったし」


赤色ほどではないが身体強化は青色くらい出来るのか。第六感の強化はされるが五感はどうなのか。

色々試したいことがある。さっきフィリアに投げ飛ばした懐中時計をズボンのポケットから取り出し、ちらっと見るとまだ13時を過ぎた所だ。7日間という制限があるから1分も無駄に出来ない。がんばるぞ。


---


結果から言うと、

身体強化は『青色』以下の最低ランク

五感の強化も、通常モードに毛が生えたくらい。例えるなら視力が0.5から0.8になったくらい。

...さらに言うと



「あんた真面目にしてるの?」


「してるよ!悲しいけど真面目なんだよ...」


第六感がどこまで強化されるか、どっちの手にコインが入っているか当てるゲームを20回試した。

たった8回だけ。当たった回数だ。外した回数じゃない。当たった回数。

しかも0とか1回じゃなくて微妙な8回。ちょっと運悪かったなって感じの8回。


「透明なマナって第六感の強化じゃないの?それともただ弱すぎて色がないとか?」


「それ以上何も言わないで。立ち直れなくなる。」



結局透明なオーラについては何もわからず、わかりたくなかった自分の弱さだけを知って修行は終わった。

普段、下校している道を通って駅に向かう。駅員さんは昨日と同じ人だった。

ちょっとだけ笑っていた気がして顔が熱くなる。目を合わせないようにして改札を通り電車に乗る。


特にフィリアと会話することも無く、ぼーっとしながら電車の外の風景を見る。

まだ外は明るいが、いつもより人通りは少ない。

でもこうやって僕たちみたいに積極的に修行している人も少なからず居た。



「晩御飯何食べたい?」



唐突なフィリアからの質問に驚き、体が軽く浮き上がる。

フィリアがニコッと微笑むのを僕は見逃さない。気にせず何を食べようか考える。


「今日は暑かったし、うどんが食べたいな。」


「うどんあったかな、スーパー寄って帰ろうか。」


「うん、アイスも買っていい?」


「安かったらね。」

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