逢えてよかった!(改稿版)



 いつもの場所で逢いましょう?

 今でこそそんなことが言えるけれど、私たちの最初のデートは散々だった。

 二人、別々の銅像の前でモンモンと待ち続け、

「今どこにいるの!?」

「銅像の前だよ」

「遅いわよ」

「君こそどこにいるんだ」

 お互いを責めて、後で笑った――。

 私たちも笑えてよかった。だから今もこうして一緒にいられる。


 私はあなたの腕をとって、歩きはじめる。きっとこれが私の精一杯。

 恥ずかしいけど私はキスなんてしたことない。たとえ迫られたって応じられない。だってキスの仕方なんて知らないんだから。

 私がほてる顔をうつむけていると、ふいに頬にやさしいぬくもりが触れた。

 降ってきた幸福に、私はただ驚いて。あなたの顔を見れずに駅の階段をかけのぼったっけ。


 それからあなたは私に触れてこなくなった。

「キスしていい?」「手、つないでもいい?」

 そんなふうに承諾を求めて距離をはかっている。

 どんだけなの! 中学生じゃあないんだから、私だって!

 だけど、私にとっては、あのほっぺにキスが初めてだったから。


 少し私はためらうけれど、今度はいいよって言おうかな、なんて考えたりもしてる。

 照れてちゃだめよ。そんなふうにも思う。

 頬がポーッとしちゃう。そんなんじゃダメだってば。

 キスくらいでなによ! キスくらい……そういえばあなたは慣れた風だった。


 あなたは知らないオンナノコと一緒のプリクラ、手帳にいっぱい!

 見せてくれるのはいいけど、私にどうしろっていうの?

 ヤキモチ焼かせたらいいの? 嫉妬させたらいいの? それともモテるのねって言われたいの?

 愛を試すなら、私はきっぱり別れる。潔癖だから。


 あなたを知る前なら、きっと可能だわ。

 あなたのお友達を紹介される前なら、できる。

 あなたのご両親に引き合わされる前なら、まだ平気。

 だけどあなたの部屋へ行ったときだったんだもの!

 もう引き返せない。なあなあにできない。破局よ!


「あ、これ妹の手帳だった」


 何故かしら。そんなことをいうから、しゃっくりが出たわ。



               END

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