第五日目 人称を変える
人称を変えることで独りよがりな表現をなくす
第二ボタン(改稿版)
数えきれない出会いはあったけど、どれも一つピンとこない。
君を想ってしまうからかな……「まだ」
曖昧な言葉探して、目の前に見えない壁作ってさ。
オレ、やっぱり彼女を見ていたいんだと思う。ぜったいそうだ。
友人とおしゃべりをして、はしゃいでる君を、自分のものにしたいんだと思う。そういう目つき、してる。自分でわかる。
君は幸せそのもので、笑う、怒る、戯れる。いいよなあ。
だけど授業は真剣。
ああ、まいったなとオレはこっそり君の方を見る。先生の上背で板書きが見えない。気づけば君を見つめてる。
そうだ、オレは社会科のノート返してないのだ。年号を憶えるの苦手で君に借りたけど。苦手なものはやっぱり苦手なまんま。
はじのとこにあるパラパラ漫画に爆笑して、なんだか返したくなくなってしまい――人のせいにすんなよ。わかってる。
今日も一人、選択授業に向かう。孤独だぜ。
性に合わない物理のテストが返された。
平均点が低いのは多分オレのせいだろう。レポート書かなきゃ。オレはそう思う。
また頼むな、相棒。なんて同じグループの男子をがっちりホールド。かわいそうな「相棒」。
しかたないだろう? なんて、いい加減な姿勢を反省するでもなく、内心オレは思ってる。
――世の中には、オレが持ってないものをたくさん持ってる奴がいるんだ、と。いや、でも努力はしたほうがいいんじゃないかな。そう思うけど。
それぞれ補い合って、連帯責任をどうにか免れよう。そんな姑息な姿勢がみえみえ。
オレだってゴールくらい決められる。だけどそれとこれとは別。呆れかえってるぜ、「相棒」。しかたないよな。
志望校は無理めだけど、それはオレ自身のせいだし。
君は女子大志望。
きっとモテるだろうな。
オレのこと忘れてしまうかな。そうだろう。
つきあってくれと言うべきだったかな? なにはともあれ、言うだけならただなんだからさ。
そんなとき、君とすれ違った。運がいいね。
いいにおいがした。いつもだけど。
振り返ると、君はオレの方を見ていて、ふいにオレの、「第二ボタン予約ね」って言った。
わかってたけど、オレって単純! 笑っちゃいそうだ。
舞い上がっていいのか考える。やっぱりそういうことなのか? って、そうだよバカ!
「全部! ボタン全部やるよ!」
君はくすっと笑って、ありがとうって、言ったんだ……。
END
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