君は僕の夢の中
シンイチ
第1話 プロローグ
青い空と青い海。
空にはカモメが舞い、海には錆の浮いた漁船がゆらゆらと浮かんでいる。
そして僕の目の前には、マンホールの蓋を両手で持ち上げひょっこりと顔を出している女の子がいる。
夢にしても違和感ある光景だ。
「……なにしてるの?」
「どう?」
「どうって、なにが?」
「この登場」
彼女はマンホールから飛び出すように抜け出ると、蓋をフリスビーのように放り投げた。
ヒュンヒュンと危ない音を立てながら、鉄の円盤は二台並んだ自動販売機の一台に命中した。
破壊的なサウンドが響き、火花が弾けるように散った。
「ストライクっ!」
「ストライク、じゃないだろう。なにするんだよ、いきなり」
「ん? 狙い通りよ」
「はあ?」
「私が狙ったのは赤い方よ」
「そうじゃなくて……」
「それじゃ、今度は」
彼女は鉄のゴミ箱に両手を回し、体全体を捻るようにして投げた。
見事と言うべきか、呆れるべきなのか、それはもう一台の自販機に突っ込んだ。
「ほらね。私の腕よ、腕」
白いシャツと同じくらい白い腕をパンパンと叩き満足そうに微笑む彼女に、僕は首を振って応えてあげた。
「それじゃ、今夜もお邪魔します」
「お邪魔してますだろ」
彼女は片目をつむって悪戯っぽく微笑むと、僕の隣に腰を下ろした。
「ねえ、真樹君。初めて会った時のこと覚えてる?」
「ん? なに、突然」
「そのときさ、どう思った? 私のこと」
どう思った、か……。
僕は腕を組み、首を傾かせ、思いだそうとしているフリをした。
忘れようと思って忘れられるようなことじゃない。
今でもはっきりと覚えている。
彼女は今と同じで、突然過ぎて、破壊的すぎて、可愛すぎたから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます